Monthly Web Magazine Apr. 2014

Top page Back number Subscribe/Unsubscribe

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

トピックス

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


■■■■■ 『東京の「坂」と文学』 (共著、編集担当)を出版しました。 瀧山幸伸

Japan Geographicの活動の関連で「坂学会」なるものを設立し、8年ほど活動してきましたが、ようやく形になりました。

東京の坂歩きがお好きな方におすすめします。

http://www.sairyusha.co.jp/bd/isbn978-4-7791-1973-6.html

内容紹介

“坂学会”会長、副会長らによる「坂学」の入門書。

漱石、一葉、荷風、三島由紀夫、宮部みゆき……

かつての東京市の坂は多くの文士に愛され、その作品に登場してきた。それらの坂の中から代表的なものを取り上げ、坂と文芸と地誌をひも解く、東京人必修の教養“坂本”! 

地図・写真多数 <資料>東京の坂一覧付

※坂学会

2005 年発足。「坂学」の確立を目指し、研究、寄稿、フィールドワーク、講演など活発に活動中。「全国 坂のプロフィール」は日々更新され、坂愛好家必見の内容。詳しくは坂学会ホームページで。

【収録内容】

・森田草平、平塚らいてうの二人が眺めた中坂上と周辺の坂道

・宮部みゆき『平成お徒歩日記』の見附探し

・番町の坂道を歩く

・東京を代表する坂道・三宅坂とその周辺

・伯母の背中で見た神田祭、中勘助の『銀の匙』

・学生の街、駿河台を歩く

・愛宕山から三田の台地へ

・高輪台の坂道

・二人の闇秀作家の舞台、鳥居坂

・麻布の坂を上り下りする

・永井荷風・偏奇館周辺の坂道

・軍隊の町赤坂と今の赤坂

・風情のある荒木町と周辺の坂道

・妖怪と霊の蜘切坂

・四ツ谷から信濃町へ

・切支丹坂の源流を探る

・『太陽のない街』の舞台・千川どぶと周辺の素敵な坂道

・本郷の坂と文豪

・東北線沿いの坂道の変化による子規の散歩道の消失

・谷中の坂道を訪ねる

・漱石『夢十夜』と坂の心理学 

◇東京の坂一覧


■■■■■今年の桜は… 大野木康夫

今年の関西の桜は、シダレザクラ、ソメイヨシノなどが4月初めに4〜5分咲きから一気に満開になり、その後の寒の戻りで長持ちしましたが、4月7日から気温も上がって散り始めました。

ヤマザクラなどはまだこれからでしょう。

満開となった4月5日、6日の週末に、いろいろな用事があったので、サクラが映える青天での撮影はあまりできませんでしたが、合間を縫って撮影したものを紹介します。

早朝の地蔵禅院(京都府井手町)

早朝の長岡天満宮八条ヶ池(長岡京市)

善峯寺の桂昌院御手植えのシダレザクラ(京都市西京区)

花の寺勝持寺(京都市西京区)

天神川の桜のトンネル(京都市右京区)

園城寺(三井寺)と疏水のライトアップ(大津市)

二条城(京都市中京区)

蹴上インクライン(京都市左京区)

南禅寺、野村碧雲荘、清流亭(京都市左京区)

早朝の哲学の道(京都市左京区)

岡崎の琵琶湖疏水(京都市左京区)

琵琶湖疏水夕景(京都市左京区冷泉通)


■■■■■ 山と湖をつなぐ水への祈り「比良八講」 中山辰夫

昔から「比良八講」が終われば春と言われてきました。

「比良八講」が営まれる3月下旬には、比良山から激しく吹きすさぶ季節風もこの頃を最後におさまり、いよいよ春本番の到来で、 関西では、「比良八荒、荒れじまい」といわれ「奈良東大寺のお水取り」と並んで春を表す季語として親しまれています。

「比良八講」は3月26日に延暦寺の僧侶や修験者らが、関西の水がめである琵琶湖への報恩と、その水源である比良山系の保全・水難者回向と湖上安全や水質浄化の祈願を捧げる法要です。

1955(昭和30)年、比叡山千日回峰行者である故箱崎文応大阿闍梨により再興されました。

この日は菅原道真の命日で、その法楽として白髭神社比良明神で比叡山の宗徒が法華経8巻を4日間で読誦して供養したのが、比良八講の起こりとされています。

春先になると比良山と琵琶湖の気温差から、山麓一帯に強い北西の季節風が吹き、琵琶湖は大しけとなる。

この自然現象をいつしか「比良発荒、荒れ仕舞い」と呼び、人々は長い冬の終わりと、待ちわびた春の訪れを甘受してきました。

悲恋の伝説「比良発荒」も、この気象を背景に作られ語り継がれています。

この法要の様子を紹介します。

比良八講の行事は、安全祈願祭(日吉大社西本宮)と修三会(お水取り 比良・打見山山上延法寺)が前もって執り行われ、比叡山の守護神である山王権現に対して法会の無事成就を祈願することから始まります。

■■スタートは長等の本福寺です。

本福寺の集会場に集まった大阿闍梨(だいあじゃり)や山伏姿の修験者・稚児娘・信者、総数50人ほどが、午前9時前に本福寺を出発、長等の商店街など約1kmを「ヴォー」と法螺貝の音を響かせながら練り歩きました。

■■一行を待つ大津港の広場、一行の到着、桟橋抱擁は、降雨により広場内で行われました。小林大僧正を導師に湖上交通の安全を祈願されました。

■客船ビアンカに乗船

参拝者約250名と一緒に乗船。雨のせいか今年の参拝者は例年より少なかったようです。

■■船内法要

出港後すぐに法要が始まりました。

■二階船首では天台座主はじめ比叡山一山の僧による施餓鬼法要(光明供)が営まれ、三階船尾では山伏姿の行者による水難者慰霊や、湖上の安全・湖水浄化の祈願が行われました。(以降も含め行事は降雨のため船内で実施されました)

■■湖上法要

■修三会法水散布

船尾甲板において琵琶湖の浄水祈願ならびに湖上安全祈願(不動供)が営まれました。この時、比良山から取水した「法水」を湖上に注がれました。

■紙塔婆(かみとうば)

戒名が書かれた短冊が湖上にまかれ、水難者や参拝者の先祖の回向が行われました。

悲恋の伝説「比良八荒」

比良八荒にボンボリを持った稚児娘が参加するのには、灯明を見失い遭難した娘の念を慰める願いが込められています。

■■採燈大護摩供

■船旅は約2時間で近江舞子桟橋に到着しました。ここで下船。お練り行列が中浜(雄松崎)を目指しました。

■途中、舞子観音像前で法要が行われました。湖上祈願と湖で犠牲になられた方々の供養です。

雄松崎の砂浜では子ども達による太鼓が出迎えてくれました。地元の主婦による屋台も開かれていました。

■中浜に到着した行列一行は、最初に黒松の植樹をしました。僧侶・稚児娘も加わりました。娘さん、突然の指名でビックリ!

■護摩祭壇の前での法要が終わると山伏さん達の護摩供養が始まり、問答から弓、刀、松明の順に儀式が進み、護摩壇に点火されると次々と護摩木が投げ入れられました。

参拝者は酒井大阿闍梨から御加持を受け、無病息災を祈りました。法要の終わりです。

参拝の皆さんは、浜辺で風と雨に打たれながらも、最後まで行者たちの動きを熱心に見つめ拝んでおられました。晴天であればよかった・・・・・。

参考資料 (配布パンフレット)


■■■■■ 九州の花見をしながら 田中康平

春の荒れた天気が周期的に続く。

北極付近の上層にある寒冷な大気塊が波動的に南へ降りてくるため南の温暖な大気とぶつかり合う日本付近がどうしても周期的に不安定な天気となる。

近頃は幾分荒れ方が大きくなっているような気もする。

地球の温度の安定に大きな役割を果たしている海流の動きが少し変わって暖流の北上が少しばかり弱くなっているのかもしれない。

ともかくこの数年暑い夏と寒い冬が同時進行しているようで、その分季節の変わり目では激しい天気となってしまう。

今年は春先から土日に荒天のサイクルが合っている様な気もする。

1年半ほど前から仕事を終わったのんびりとした生活に入っているが、こんな時は天気の良いときだけ外に出かけることができてストレスが無い、いい身分でといわれても仕方がない。

引っ越して1年少しということもあり、九州の桜の名所はどこだろうとネットで幾つか当たるがどうにもネットは通り一遍の紹介というニュアンスがあって「この木」という情報が不足するところがある。

本も幾つか探しているうちに図書館で「九州の一本桜」という写真集に行き当たった。

梅野秀和という佐賀県在住のアマチュアカメラマンの写真集だ。

かなり長い期間にわたってしつこく九州の桜を追いかけた人のようだ。

いい本で求めていたイメージに近い、早速借り出してきて日帰りで気楽にいけそうなところから回り始めてみる。

3月下旬に満開のところを先に回るとして、八女・黒木のシダレザクラと佐賀・神埼町のヒメシダレザクラが丁度よさそうだと出かけることにした。

行きがけの駄賃にレンジャクが来ているという都府楼跡にも寄ってみることにする。

天気は疑いも無く晴れで風が弱いという日を慎重に選んで出発する。

桜が満開の時期にこれができるのは贅沢というものだ。

太宰府都府楼跡のレンジャクは駐車場に車を置いたすぐ前の桜の木に居て拍子抜けするほどあっさり見れる。美しい。

関東に居たときも冬から春にかけてはレンジャクをどこかでみようとあちこち動き回って苦労した記憶がある。

キレンジャクが4羽くらい残っていてヒレンジャクは飛び去ったらしい。

世界的にはヒレンジャクのほうが珍しいのだが日本では逆のようでキレンジャクを有り難く感じる。

大きさといい堂々たる風情といい見入ってしまう鳥だ。

いい感触で、八女・黒木の桜に向かう。

八女は行ったことがないところだ。筑後川の下流にあたる平野には街が八女、久留米、鳥栖、柳川、とひしめいていてその先に佐賀市も続く地域だが、県境と街が入り組んでいてどこがどこだか印象に刻まれにくい。

ともかく筑後川の一支流を遡る形で八女市街をバイパスして西へ向かう。

黒木はあまり大きくない町だ。八女はお茶で有名だがそれにしても茶畑は見えてこない。どこでお茶の栽培をしているのだろうか、予想していた茶畑の広がる景観には出くわさない。

ナビで目指す光善寺のシダレザクラはここら付近というところまでくるがこちらもどこに桜があるかわからない。

とりたてて桜の案内板もないし何しろ道が細い。

近くの神社に車を入れて歩いて探し回ると、やっとそれらしい大きなシダレザクラが見えてくる。

駐車場も小さいながら一応用意してあるようだ。しかし解りにくいし車も入れにくい。こんなところに土日に来ると車は大渋滞になりそうだ。

シダレザクラは満開でなかなかいい。緩やかな風にそよぐ桜をぼんやり見る。春はこれに限る。

見ている人は10人くらいで地元の人が多いのだろうか、花見はそっちのけで立ち話している人も居る。

花をさかなに人が集まる、花見はそんなものかもしれない。

じっと見ていてもどうということもなく手持ち無沙汰になる。

だから写真でもと撮ることになるのだろうか。

どんな花だろうか今年はどうだろうかと人は吸い寄せられて行き着いてみると存外花はちょっと見て別のことを思っている、そんなものかもしれない。

そういう花見が花見らしい様にも思えてくる。

見終わるころには駐車場も満杯になってきて次の佐賀・神埼に向かう。

高速道を経由して辿り着くとこちらは黒木の桜より少しは名が知れているらしく離れたところに駐車場が用意してあって解りやすいし渋滞を避ける工夫がある。

徒歩で向かう田舎道にもきめ細かく案内板があって安心して春の野に咲く草花を楽しみながら行き着けるように工夫がある。

あちこちで思うのだが佐賀は車社会に対する対応が優れているようだ。

目指す宝珠寺の前に着くと道端で「九州の一本桜」の写真集を売っている、ここらでは特に有名な本でもあるようだ。

さて宝珠寺のヒメシダレザクラだ。樹齢100年位でまだまだ元気がいい。

ベンチに座って見上げるようにしながら暫く時を過ごす。

見ることもなく見ていて時間が流れていくのがすこぶるいい。

見に来た人のざわめきや住職らしい方が行ったり来たりと不思議な動きをしているのも面白い。

写真をとりとめもなく写してしまう。

風景を眺めていると由緒や名木がどうという言葉が消えていくようなのもいい。

そんな時間の流れが花見らしいとここでも感じる。

この後 近くの山桜を見、日を変えて伊万里の明星桜(エドヒガン桜)を見、久留米のヤマザクラを見、秋月や唐津や福岡のお花見風景を見る。

それぞれに印象があり異なった空気を与えてくれるが花が発する何かというより取り巻く雰囲気と花見をしそれを感じる自分の心の動きそのものが面白い。

こんな風景に浸っていることがいいようがなく心地よくて、やはり花見はやめられない。

写真は順に、都府楼跡のキレンジャク、光善寺のシダレザクラ、宝珠寺のヒメシダレザクラ、神埼の野道、花浦のヤマザクラ、伊万里の明星桜、久留米・浅井の一本桜、秋月の桜並木、唐津城の桜、福岡・西公園の桜


■■■■■ 花の山 川村由幸

花の山に出かけてきました。福島の花見山のパクリのような名前ではありますが、所在地は栃木県茂木町です。なじみのない地名だと思いますが、陶芸で有名な益子町の隣のまちです。

  

花の山のパンフレットです。一年の内4〜5月の二か月間のみ入場が可能で花見山と違い、有料です。

東西と中央の3つのブロックに分かれていて、すべて散策すると4kmを歩くことになります。

白・ピンク・黄色・赤いろんな色の花が入り乱れて、百花繚乱とはまさにと思わせます。

カメラを担いで歩いても思わずシャッターを押すことを忘れるほど花木に見惚れてしまいました。

昨年、花見山にもでかけましたが、ここは勝るとも劣らなず美しいところです。

東京では葉桜のさくらもまだ満開状態で黄色のレンギョウと色を競い合っています。

花を愛でながらのの散策はこの時期の最高の楽しみです。あまり知られていないのか、観光客もさほど多くなく

写真撮影も他の入場者に迷惑をかけることもありませんでした。

五月になるとまた花が変わります。つつじが主な花となり赤が目立つ山に変化するのでしょう。

もう一度五月に訪れたいと思ってしまいました。

気持の良い晴天の中、花に囲まれて過ごした時間は至福でした。

家内も連れてくるべきだったと後悔したのは、入場してすぐのことでした。


■■■■■ 自選ジョーク 野崎順次 

3月は大小の同窓会があって、スピーチを彩るために、ジョークの本を拾い読みしたり、昔、人から聞いたものを思い出したりしていました。辛口やブラックが好きなのですが、単純なのも楽しいです。そのいくつかを紹介します。

その1: 昔、English gentleman に教えてもらった。

あるアイルランド人がダブリンからロンドンまで四発(プロペラ4基)の航空機で飛んだ。

途中で右側のプロペラ1機が故障して止まった。ジェット機と違い、プロペラ機はそのくらいでは落ちない。機内アナウンスで「故障により、ロンドン到着が30分遅れます。」

そのうち、左側のプロペラ1機も止まり、「故障が重なりましたので、到着がさらに30分遅れます。」

何と、右側の残った1機も止まり、左側のプロペラだけが残った。

「到着がもう30分遅れます。」

そのアイルランド人が窓から左側の最後のプロペラを見ているとそれが止まってしまった。

アイルランド人は納得顔で「また30分遅れるね」といった。

その2: 小松左京のお気に入りのジョーク

ある男がノミの研究をしていた。男はまず、ノミの足を一本ちぎり、「跳べ!」と命じた。

ノミは跳んだ。次に2本ちぎって、「跳べ!」と叫んだ。やはり、ノミは跳んだ。今度は、

足を全部ちぎりとって、「跳べ!」と命令した。が、ノミは微動だにしない。男はノミの研

究報告の中に次のように書き込んだ。

「ノミは、全部足をちぎられると耳が聞こえなくなるらしい。」

その3: 総理大臣にもなった竹下登の得意なジョーク

ボケの第一段階は、人の名前を忘れる。

第二段階は、人の顔を忘れる。

そして第三段階は、ズボンのジッパーを上げるのを忘れる。

とうとう第四段階で、ジッパーを下げるのを忘れる。

その4: 開高健の持ちネタ

パリの酒場で筋骨隆々たる労働者の若者がいた。

「どれくらい力があるか見せて下さい。」と頼むと、テーブルの上のレモンを取り上げて、ギュ−ッと握り締めた。

レモンがつぶれてジャーとおつゆがこぼれた。

みんなで感心していると、痩せこけた老紳士が一人やってきて、「旦那、失礼します。」といって、今、しぼり尽くしたばかりのレモンを手に取り、指2本で挟んでほんの軽く搾ったら、ざーと最後の一滴まで出て、からからに干からびてしまった。

一同驚いて、異口同音に「仕事は何をされているのですか」と聞いた。

老紳士は恥ずかしそうに「ちょっと税務署関係に勤めています。」と答えた。

その5: ジョークの分からない生真面目な人がやっと吹き出したもの。

沖縄では春になるとハブが出没するので、このような注意書きが出回る。

「スプリング・ハブ・カム」


■■■■■ 看板考「お口の恋人 ロッテ」 ゆはらきみこ

埼玉県蕨市で見つけた。

ロッテは日本国内最大級のお菓子会社。韓国の企業であることは有名。

キャッチコピーは「お口の恋人 ロッテ」。

何とも上品なこのコピーは一般公募で選ばれたのだが、ドリフターズ仲本工事の実母というウワサもあった。

韓国はとても行きやすい国で私も数回の旅をした。

南大門の怪しげなカバン屋さんで奥の奥に連れて行かれて30分限定で有名カバンをサッと買って成田でヒヤヒヤしたこと。

ロッテワールドのアウトレットに行くために一時間もタクシーに乗ったのにわずか1000円だったこと。

中でもエステに行ったことは本当に面白かった。

……「ジェンブ(全部)裸ニナッテクダサイ」と言われて、渡された短いガウンを来て待っていると、采配係りがやってきて早口の日本語で言った。

「基本コースハ垢スリト全身マッサージ80,000 ウォン、足ツボマッサージ50,000 ウォン、蓬ヲオ尻ニ入レテ蒸スハ40,000 ウォン、顔パック30,000 ウォン、ドシマスカ?」

蓬をお尻に入れて蒸されるのは嫌なので基本コース+足ツボマッサージにした。

チップは10,000 ウォンと明るく言われて14,000円を払った。

薬草が天井からつるされた薄暗くて温かい部屋に通されて、何となくウトウトとなった頃に呼ばれた。

コッチ、と手招きされて銭湯のようなドアを開けると中を誘導してくれる人にバドンタッチされた。

サウナが3つ並んでいた。一つ目のドアを開けて私たちを押し入れながら「気分悪クナッタラ自分デ出ルネ」と言われた。

息もできぬほどの熱気。気絶しそうで1分もいられず這うようにして出た。

「コノ水デ顔ヲ洗ウネ」と指示があった。

次はハッカサウナ。

「気分悪クナッタラ自分デ出ルネ」と再度押し入れられる。

ハッカ刺激でタオルを目に当ててうずくまる。

熱い!たまらずに出る。

最後のサウナは薬草がごろごろ転がしてある中にムシロをかぶせられてお乞食さんのように座らされた。

常套句、「気分悪クナッタラ自分デ出ルネ」。

次に朝鮮人参の浮いている湯に沈むように言われた。

手招きされて湯から出た所でガウンをはがされた。

落ちそうな細いベッドに寝かされた。

ビキニ姿に無理のある年配の婦人が両手に手袋をはめて垢すりをしてくれる、ひっくり返してごしごし。

油塗りマッサージ。

その合間にシャンプー。

乱暴この上ない!終わって足ツボマッサージ。

これは気持ちが良い。仕上げはペディキュア。赤い色にラメを乗せてもらった。

体はスベスベ、顔はピカピカ、足の爪はキラキラ!美しくなった!とは身の程わきまえて言わないが、気分は良好だった。

帰国時の仁川空港に行く高速道で「お天気がよければあちらに北朝鮮の山々が見えます」とガイドさんがその方向を指差されたが、白い雲がかかっていて何も見えなかった。拉致されている人々を想った。

それにしても、このロッテチューインガムの看板は、なんとおおらかな看板だろうと見入ってしまった。

今は何でも畳み込むような言葉数で四方八方から情報が押し付けられてくる時代である。

TVのCMなど言葉がかぶって聞き取れないことも多い。

その反面では、ラインとやらで短く省略された感情が誤解されやすい言葉で、さらに早急さを求められてやり取りをしなければならない事象もある。

子どもの成長に害はないのだろうかと憂う。

「お口の恋人 ロッテ」。さわやかなミントの味がする。良い日本語である。


■■■■■■■■■■■■■■■■■

Japan Geographic Web Magazine

https://JAPAN GEOGRAPHIC/

Editor Yuki Takiyama

yuki at .jp (Replace at to @)

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 All rights reserved 無断転用禁止 登録ユーザ募集中