Monthly Web Magazine Oct. 2016

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■  台風雑感  田中康平

先週の沖縄旅行で台風に悩まされ続けたが、また台風が近づいてきた。今度は台風18号だ。台風17号を追うようにフィリピン東の太平洋で生まれ沖縄をかすめながらやってきた。気象予報士ということもありどうにもこの季節は台風が気になる。

今年は台風の発生が異様だ。7月上旬にやっと台風1号が発生したかと思えば遅れを取り戻すように立て続けに発生している。

台風の発生には上昇気流と渦巻きがキーとなっている。自転している地球の上ではで緯度が上がると周速度が減ってくるがこれが南北に流れる空気の流れに回転を与え台風の渦巻きを生む、しかし赤道付近の低緯度地方では南北に動いても周速度の変化が少なく台風までにはまとまりにくい。北緯10度位から北が発生できる場所となっているが暖かい海洋が生み出す上昇気流がエネルギーの源だからあまり北に行ってしまうと台風は発生しない。結構限られた地域でないと台風は発生しない。そこへ今年のように高気圧が張り付き続けるとその下降気流で雲の成長は抑えられて暫く台風は発生しない事態となる。ちょっとしたことで台風ができやすかったりできにくかったりする。考えてみれば半年間も発生しないというのもとんでもない事態ともいえない気がしてくる。

台風には南北の気団を混ぜて北と南の大気の違いを近づける役割があって、地球大気の安定に貢献している、年間ある程度決まった数の台風ができるのはそのためなのかもしれない。秋を呼び込むためにはここまでに17−8個位の台風は必要なのだろう、そう考えると立て続けの台風の発生も理に適うように思えてくる。当然起こるべきことが起こっているだけなのだろう。

台風が来ると気象予報は当たりにくくなる。台風の動きや盛衰に半径1000㎞くらいの大気が影響されて、台風の動きが予想外だと台風から遠い地域の予報であってもその影響を受ける。つい先日訪れた沖縄では、17号が台湾の向こうに過ぎても800km離れた沖縄に高い波が残り沖縄本島から渡嘉敷への離島フェリーが欠航して旅の予定が狂ったりもした、台風は離れていても油断がならない。

台風を眺めているとその映像が面白い。しかし映像が直接データになっているところが更に面白い。

台風の情報として発表される中心気圧や最大風速の値は勿論直接風速計や気圧計を台風の中に入れて測ったものではなく衛星写真の雲のパターンを指数化して求められている値だ。過去のデーターベースに依存した間接的な手法で求められていることになる。

1987年ころまでは米軍がグアム島から観測機を飛ばし台風の中心にセンサーを投げ入れて直接計測した値を用いていたが米軍がそれをやめた後は気象衛星画像に基づく方法となっている。台風の成長具合を衛星画像からインデックスで数値化して過去のデータから得られたカーブに乗せて気圧や最大風速を推定する。こんなやり方でいいのかと思うくらいプリミティブな方法で台風情報は作られているのに驚かされる。例えば台風18号の最盛期の写真では眼がはっきりしていて目の周りの雲がしっかりしている、こうなるとCIと呼ばれるインデックスは7になり中心気圧は915hpくらい、最大風速は55m/s位のデータが発表される。

いずれにしろこの時期の旅行は台風が難敵だ。技術が進めば台風の解析精度は上がり予測は信頼度が高まっていきそうだが、台風そのものを弱めたりすることは到底できそうにない。当分の間、台風シーズンは身を低くして過ぎ去るのを待つほかないのだろう。

添付図・写真、順に 沖縄本島の珊瑚礁に打ち寄せる台風17号の波、台湾に去った台風17号の波高分布、台風18号衛星写真、最盛期の台風18号クローズアップ衛星写真