Monthly Web Magazine Nov. 2016

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■アメリカズカップ   田中康平

このところ週末は福岡の市民ヨットクラブでヨット遊びをすることが多くなっている。時にはクルーザーでヨットレースもするのだが、歳をとってから始めたのではどうにも覚えきれなくてチームの足を引っ張っているような感じもする、が結構面白い。

この秋の楽しみはアメリカンズカップ・ワールドシリーズだ、勿論観戦だ。ヨットレースは艇の規格が違っている場合ハンディを細かく課していて、ゴールした時点ではどの艇が勝ったのか皆目分からないのだが、アメリカズカップでは艇の規格を定めていて先にゴールしたものが勝ちという分かりやすいレースになっていることもあって、観戦でも十分楽しめるのではないかと思っている。

アメリカズカップの前哨戦、アメリカズカップ・ワールドシリーズが現在世界各地で行われているが、今月18日からアジアで初めて福岡市の博多湾で繰り広げられることとなったというので少し勉強している。

そもそもアメリカズカップとは何か。

第1回は1870年に米国で開催されている。1851年のロンドン万博で開催されたヨットレースで優勝した米国艇のアメリカ号が獲得したカップ(アメリカズカップ、アメリカ号のカップの意)をめぐるレースがアメリカズカップで、カップ保持者はいかなる国の挑戦をも受けなければならない、とされたことから国対国の世界的ヨットレースとして発展し現在に至っている。今回は第35回で前回2013年は米国サンフランシスコで行われ米国チームが優勝した。

いわゆる沿岸レースで沿岸に設置されたコースを周回するレースを十数回行い獲得ポイントによって勝敗を決める。

今回の第35回では挑戦艇として5か国がエントリーしており、予選の前の前哨戦、アメリカズカップ・ワールドシリーズが2015,2016年にわたって戦われている。現在までにポーツマス(英国)、イエテボリ(スエーデン)、ハミルトン(英国領バミューダ)、マスカット(オマーン)、ニューヨーク(アメリカ)、シカゴ(アメリカ)、ポーツマス(英国)、トゥーロン(フランス)、で計8回行われており福岡が9回目の最終戦となる。

参加チームは日本(ソフトバンク)、英国(ランドローバー)、フランス(グルパマ)、ニュ−ジーランド(エミレーツ)、スエーデン(アルテミス)、および保持者・米国(オラクル)の6チームで日本チームは現在4位。前哨戦の上位3チームには予選となる来年5・6月にバミューダで行われる総当たりのマッチレース(1対1のレース)で有利なポイントが与えられることになっている。マッチレース上位4者で準決勝ー決勝を行いこれで挑戦艇が決まる。続けて6月下旬にバミューダで行われる本戦は13回のレースが予定されているようでこれで挑戦艇か保持艇かいずれかの勝利が決定するということになる。

前哨戦のアメリカズカップ・ワールドシリーズはレース艇がAC45という艇の長さが45ftの双胴ヨットとして規格が決まったワンメイクレースで、来年の予選・本戦ではAC48という若干異なる規格の艇が用いられるようだ。

以前のようにそれぞれが全く異なる独自設計の艇を用いるというレースではなくなっているが、マストが航空機の翼のようになっておりこれにソリッドなセールとフラップがつくという、まるで航空機の翼を立てたような艇になっており通常のヨットとは全く異なる。このほうが揚抗比がはるかに高く圧倒的にスピードが出るということだろう。

艇を見るだけでも興味深い。

さてどうなるだろうか。浜からの観戦切符の販売という国内でのヨットレースでは恐らく初めての観戦方法もとられる。浜の観客席はまだ工事に着手したところでこちらもどんな形になるのかよくわからない。

勿論海上観戦ができるようにもしてあって、ヨットクラブから出る観戦艇に同乗できそうなのでこちらに期待しているが、うまく見えるのか、天候もありどういうことになるか面白くもある。

さてどんな戦いが繰り広げられるだろうか。

添付図左から 福岡の一般的ヨットレース風景 アメリカズカップ アメリカズカップ競技艇 アメリカズカップ福岡大会のレース海域と規制