JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine May 2017

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■ おばちゃんカメラマンが行く 羊羹屋@小城市 事務局

小城の桜岡公園は「桜の名所百選」に選ばれており、今回訪れた時も桜が満開で、絶景を観ることができた。

しかし驚くべきは羊羹屋さんの多い事だ。

小城市は人口5万人ほどの小さな市だが、ここに羊羹製造販売店が20数軒集積している。小城羊羹製造同業組合なるものまであり、まさに町を挙げての産業だ。

歴史はとなると元祖とか初祖とかお店により複雑な事情があるのだろうが、そもそもは、桜岡公園の前で地元の白小豆や白いんげんに紅色をつけた「桜羊羹」が始まりらしい。

しかしその後の鎖国時、長崎の出島から佐賀を通って小倉へと続く長崎街道を海外の品物や技術が京、大坂、江戸などへと運ばれていったが、特に砂糖や菓子の技術などが小城の町に定着した。今ではシュガーロードと呼ばれ菓子作りに革命が起きたといわれている。

東京や京都と違う点は、外側が砂糖でシャリっと硬くなる昔ながらの製法の「切り羊羹」を作っており、この作り方自体が全国的に見ても珍しく、いまでも小城に残る伝統製法だ。

練る、流す、切り分ける、竹皮に入れ経木で巻く事で独特のシャリ感が出る。銀紙に包まれた密封式のものより日持ちはしないが、食感は独特だ。

最近は羊羹をチョコレートでコーティングしたチョコレート羊羹などという新商品も出ており、若者たちに人気があるようだ。

連れ合いに「おばちゃんはすぐ食い物に走る」と言われるが、この羊羹タウンの歴史とこれからの発展に大いに興味がある。早速新商品を買い求め、頂いた。想像通りの美味だった。

  

追伸

羊羹と言えば新潟月潟の「なし羊羹」を思い出す。

国の天然記念物の類産梨を使った羊羹だ。

食べられる「国の天然記念物」は宮古島のヤシガニと富山のホタルイカぐらいか?

貴重な羊羹だ。味はなんとも微妙だったが。