JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine July 2017

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■ 2017年北部九州豪雨被害 田中康平

駆け足で台風3号が熊本を襲ったと思ったら今度は朝倉へ集中豪雨だ、梅雨末期の豪雨というには度が過ぎている。

何が起きたのだろうか、落ち着いてレーダー雨画像を動画にするところから始めた。気象庁のページからのダウンロードはエクセルマクロで指定日時範囲を指定フォルダにダウンロードさせる、勿論手動で1枚1枚ダウンロードしてもいい。これを動画gif作成のフリーソフト Giam にまとめて落としてgif動画にし、さらにAVIでも保存する。AVI版をWindows live moviemaker で読み込んでwmvファイルに圧縮して出力すれば手頃なサイズの動画が出来上がりとなる。

動画

動画を見直すと、たったこれだけの降水がと、極めて狭い範囲の持続的な強い雨が非常に大きな被害を生んでいることに驚く。人間社会のもろさが如実に表れているように感じる。

原理的には積乱雲の生成崩壊サイクルで崩壊過程で生じる風上にのびる冷気プルームと湿暖な大気の流れがぶつかって次の積乱雲が生じる。タイミングが合えばあたかも同じ場所で次々に積乱雲が次々に生まれるように見え、地理的に同じ場所で夕立の様な強いにわか雨が降り続くことになる。大気の流れの速さと積乱雲のサイクルが丁度合ってそうなるのだが現実的に大きな被害をもたらすことになる。大気の下層から中層までの不安定が強く風の方向と強さが高度方向に概ね揃うことも条件なのだろう。動画にして眺めていると色々なことが頭に浮かぶ。

このところ朝倉やうきは市のあたりには何度か出かけている。日田、東峰村、朝倉、原鶴温泉、耶馬渓 とその被災前の風景が脳裏に浮かぶ。朝倉の西のはずれは自分の出生の地でもある。所縁が深い。

朝倉の道の駅は大きく被害を受けディスプレイ用の3連水車がかなり損傷したようだ。本物の3連水車のほうも形は保っているが濁流で痛めつけられた姿が報道されている。3連水車どころではないというのが被災者の感覚だろうが、自分の記憶にある景観がどうなったのだろうかというほうに頭が回る。勝手なものだ。

しかしこんな豪雨被害は条件さえ整えば日本のどこでも起こりうる。長いタイムスパンをとればどこでも必ず起こるといってもいいのかもしれない。何気ない風景でも丹念に記録に残しておく、これが思いのほかに重要なことにまた気づかされる。

そんな視点からも映像を撮り続けるべきなのかなと思い、そしてすべての景観を映像に残し続けるという行為を継続しなければとの思いを致させる。写真のコアはやはり記録なのだろう。

写真はかって訪問し今回の豪雨で被害を受けたとされる所:1.,2.東峰村竹地区(2014.11撮影)、3.東峰村小石原地区(2014.11撮影)、4.,5.日田彦山線彦山駅周辺(2015.5撮影)、6.朝倉市山田地区道の駅3連水車(2017.4撮影)、7.日田市の筑後川(2014.11撮影)、8.,9,10.朝倉市杷木地区原鶴温泉付近の筑後川(2017.1撮影)、11.中津市山国町草本(奥耶馬渓)(2014.11撮影) 現状はどうなってしまったのだろうか。