JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine Nov. 2019

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■ 大授搦の紹介  田中康平

有明海北岸の干潟、大授搦は渡り鳥が多数見られる国内有数の野鳥観察ポイントとして知られている。2015年には「東よか干潟」の名でラムサール条約登録地となって保護されるべき場所として国際的にも認定されており、環境省の調査ではシギ・チドリの飛来数では国内最大の場所となっている。

大授搦の搦というのは杭を打って泥を絡ませて陸地を作っていくという江戸時代からの干拓の手法に由来しており、江戸時代には佐賀藩に搦方という役があって大々的に干拓を進めてきたようだ。明治になっても干拓は続きこの大授搦は大正時代に造られた干拓地という。現在の広大な佐賀平野は多くが干満の差が大きい有明海の性質を利用した干拓によっているといってもいいようだ。

渡り鳥にとっては餌が容易に得られる干潟は願ってもない中継地で秋や春の渡りのシーズンには多くの水鳥が羽を休めることになる。

渡りのルートが明らかになってきたのは鳥に取り付けられる小型の発信機の開発とこの信号をリアルタイムで追跡できる衛星利用がもたらしたといってもいい、比較的最近のことだ。多くの渡り鳥が長大なコースを飛行していることが次第に明らかになってきた。

例えばムナグロというシギは南太平洋から北極海の間を右回りに渡っていて春は日本に多く立ち寄る。オオソリハシシギはニュージーランド付近の南太平洋と北極海の間を往復しており最も長い渡りを一気に飛ぶことでも知られている。ムナグロとよく似たダイゼンも夏は北極海、冬は東南アジア付近と長いコースを渡っている。鳥を見るのは頑張れと言いたくなる気持ちもある。

秋の渡りを見に10月15日の大潮の最後の日に大授搦を訪れてみた。

大潮の満潮の1時間前くらいから1時間後位が野鳥観察に適している。潮の時間を外すと浜からはほとんど見えないということが起こる。この日は満潮が午前10時頃で無理して早起きしなくとも楽に到達できる。

数多くの野鳥が水際に来てくれる。多いのはダイゼンで群れをなして時々飛行するさまも壮観だ。大きいシギではダイシャクシギなども群れで飛び回っている。この日はオオソリハシシギもいやすいところに出てきてくれた。ムナグロも多くはないが見かける。その他、クロツラヘラサギ、オバシギ、ハマシギ、トウネン、メダイチドリ、ダイサギなども群れでエサを漁っていて十分に楽しめる。

佐賀空港が近いだけに潮のいい連休などでは関東からのバーダーの姿もよく見かける。鳥は詳しくなくともその景観は貴重で一度は訪れていい場所のように思える。

地図に続いて写真は順に1.群れの飛翔 2.水際の鳥 3.ダイゼン、手前の小さな1羽はトウネン、4.メダイチドリとハマシギ 5.ダイゼンの着水とダイシャクシギ、6.クロツラヘラサギ、7.オオソリハシシギ 

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