JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine Sep. 2020

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■  溜池の夏   田中康平

福岡という街は3方を山に囲まれ昔から雨が降りにくいところだったようで溜池がやたらに住宅地に残っている。無論今は農業用水としては使われておらずもっぱら公園になっている。それもあってか福岡市には手頃な公園があちこちにあって散歩に具合がいい。
歩いていける範囲には野間大池や市楽池、新市楽池、鹿助池、等があり、クルマで少し行けばいつも利用している図書館の裏には西の堤池更にその先には西南の杜公園の熊添池や若宮池、熊本池があり、溜池だらけだ。
近くにある公園には「陸軍」と彫り込まれた石の杭が立っていたりして戦時中は軍用地に使われていたところもあるようでもある。色々な歴史がありそうだ。
夏の溜池はハスやスイレンの花が楽しいが近くの鹿助池のハスがこのところすっかり勢いを無くしてもうこの池では絶滅ということになるかもしれない状態にある。犯人は池で繁殖する亀が疑われているようだ。この池の亀は 昭和の時代に主にミドリガメとしてもたらされたアメリカ原産のミシシッピイアカミミガメと中国から江戸時代頃に日本にもたらされゼニガメとして売られたクサガメの2種類がいて、覇権争いをしているようだ。こんな池でも米中は穏かには過ごせず、平和なハスを競って食い荒らしている様はあまりいいものではない。もとは人が銭儲けのために夜店で売ったりした子ガメが池に捨てられたものが殆どといわれカメには罪は無いのだが。
これに比べスイレンが浮かべられた池は根無し草故こんな争いは無く、浮かんだの葉の上でバンが子育てをしていたりして楽しいが、野猫が池の周りにたむろしていて時々土手に上がるバンが狙われているようでもある。若鳥がおいしいというのは人間だけでは勿論ない、地球という限られた世界で暮らす生き物はこんなことは避けて通れないのだろう。
コロナの夏が過ぎていく。秋には気楽に出かけられるようになるだろうか。


添付図は順に 1.福岡市溜池マップ(福岡市農林水産局のページより転載)、2.溜池の風景(西の堤池) 3.陸軍杭(市楽池) 4.鹿助池-7年前のハス 5.鹿助池-今年の夏(ハスが殆どない)6.僅かに池の隅に咲く今年のハス 7.ミシシッピイアカミミガメ 8.クサガメ 9.スイレン池(新市楽池)10.スイレン池のバン親子 11.池で獲物を探す野猫 
           

 

 

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