JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine Oct. 2020

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■  福岡の小山、鴻巣山を散策  田中康平


コロナは自粛生活が遍く染み渡ったせいか勢いは収まりつつあるようだが、依然として遠出しない生活が続いている。近所を散歩の毎日だが、それなりに面白いところもあり結構飽きない。
直ぐ近くに鴻巣山という標高100m位の小山がありここを散歩すると山歩きの雰囲気があって、それに歴史を感じたりしてちょっといい。
住宅地に寸断されつつ鴻巣山の尾根は東に延びて高宮八幡宮がその東端にあたる。西暦660年頃百済が滅びこれを救援するために斉明天皇が那の津(博多と比定される)の磐瀬行宮(いわせのかりみや)にとどまったと日本書紀にあり、社伝ではその時同行していた中大兄皇子によって近くに作られたのがこの高宮八幡宮とされている。相当に古い神社だ。
高宮八幡宮から鴻巣山の尾根を西へ辿ると高宮浄水場がある。1960年に建設された市内最大の浄水場だが建設後60年を経過し、老朽化したこともあって4年後に廃止されるらしい。
続いて尾根の南麓には穴観音(6世紀の古墳)がある。その北側の山地には百塚と呼ばれる場所があっていわば古い時代の墓地だったようだが、福岡城築城の際に多くが壊され石が城に使われたという。現在では石室に観音像が刻まれている穴観音のみが残っている。
北側斜面には現在も福岡市営の霊園である平尾霊園が設けられていて、墓場にちょうどいいという思いが伝わっているようだ。
遊歩道は浄水場のそばから始まる。ここには展望塔も建てられていて、登ると見晴らしがよく福岡空港へ発着する航空機が良く見える。時には飛行機写真撮影の人がいたりもする。
遊歩道は霊園の上端を抜けてマテバシイの林に入る。マテバシイはあくが少なく食用に適するようで食用を目的として植えられたのではないかという話も残っている。散策路には近年作られたとみられる地蔵もある。
頂上部のテレビ塔を経て西側の展望塔に至る。登るとクスノキ林の上に出てここも眺めがいい。野鳥は多いともいえないがフクロウが出没することもあり、また日暮れにはカラスが集まって塒としている。渡りの時期には思わぬ鳥がここを利用しているようで最近ではエゾビタキを目撃した。サンコウチョウが出ることもあるらしい。
このあと遊歩道は山道のような小道を下って中学校の裏の道に降りてくる。

頂上部にあるテレビ塔はアナログテレビの放送に使われていたがデジタルテレビ時代になりこれを機に殆どの局が福岡タワーへ移動して今はFM1局だけが残っているという。便利なところにある小山なので古くから現代に至るまで色々と利用されてきたが移り変わりが激しいようだ。
古代には博多湾の入江は今よりずっと深く南に延びていたとされておりここらは海にも近かったようだ。恐らく丹念に探せば縄文時代の痕跡が現れるとも思われるがこれまではそのような発見はない。また戦国時代の築城にも便利そうな位置にあるがその記録や痕跡も見出されてはいない。何故なのか、まだまだ鴻巣山には謎がありそうな気がしている。

写真は順に 

1.鴻巣山の位置・地形図 2.地図 3.高宮八幡宮 4.高宮浄水場 5.穴観音内部 6.平尾霊園 7.展望塔からの眺め 8.マテバシイの林を縫う散策路 9.散策路の地蔵 10.エゾビタキ 11.麓から見たテレビ塔

           

 

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