JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine


■ 駕与丁池   田中康平

福岡市の東に隣接する粕屋町駕与丁(かよいちょう)に、駕与丁池という大きな池を中心とした駕与丁公園がある。最近になってこれに気が付き行ってみることにした。駕与丁という名前が直ぐには読めなくてこれは何だろうということもある。池の面積28haというから相当に大きな池だ。
駕与丁池というのは江戸時代(17世紀)に農業用水の供給のために造られその後改修を重ねて現在の形に至った人工の池ということのようだ。同様の目的で作られた福岡市近郊の池としては春日市白水大池が知られる。こちらも17世紀築堤で、直方市の感田池とあわせて筑前3大大池と称されているらしい。白水大池は池面積16haだがそれにしても大きい。こちらは普通の名前で農業用水確保用の池ということですんなり理解できるが駕与丁池の方は農業用水用というのはいいものの、名前が気になる。
調べると駕与丁という言葉の意味は天皇など皇室のメンバーの乗る駕(こし)などをかつぐ下級役人で奈良時代からある役職という。ここの地名は「かよいちょう」だがこの古くからの役人の読みは「かよちょう」で、時の流れが「い」を入れせしめたようだ。

駕与丁池のある場所は江戸時代に池となる前は旧石器時代以来長らく人の住んでいたところで、遺物が色々発掘されているようだ。江戸時代に池ができる直前にはここに駕与丁座の属する人々が住んでいたため、この名がついたとされている。
駕与丁座とは駕与丁に属する人々がつくる組合のようなものだが、長い時の経過の中で本来の役目とともに米を始め色々な物品の専売権を持つようになり、商工業組合のようになったという。都から遠く離れたこの地ではむしろ専売権を持つものという意味の方がはるかに強かったのかもしれない。それにしても駕与丁の名が地名として残っているのは全国でもここだけらしい、貴重ではある。名前そのものが文化財なのかもしれない。
どちらの池も今は多くの市民のウオーキングやランニングの場となっているし野鳥の観察にもいい環境を提供してくれている。これも福岡のいいところの一つなのかもしれない。

写真は順に1-5:駕与丁池、6-11:白水大池

          

 All rights reserved 無断転用禁止 登録ユーザ募集中