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滋賀県愛荘町 愛知川びんてまりの館

Bintemari no yakata,Aisho town,Shiga

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 Dec.13.2015 中山辰夫

愛荘町立愛知川びんてまりの館

滋賀県愛知郡愛荘町市1673

「愛知川びんてまりの館」は愛荘町立で図書館と併設されている。

    

愛知川びんてまりの館

   

滋賀県伝統的工芸品に指定されている、美しい「びんてまり」を展示している。

びん細工手まりと様々なびん細工、手まり(実物展示)・びん細工手まりの歴史と制作工程(パネル・ビデオ)・愛荘町手しごとの文化(パネル)が展示内容。

   

てまりについては多くの県でも作られている。

     

愛荘のてまりは「びん細工てまり」、丸いガラス瓶にてまりが収まった不思議な工芸品である。

びんの口よりも大きなてまりが入った「びん細工てまり」は、丸くて中がよく見える(丸く、仲良く)ことから、現在は新婚や新築のお祝いに喜ばれている。

江戸時代末期に伝わったもので、近江商人から嫁いだ女性が嫁入り道具として持参したと伝えられる。

 

その歴史などの情報

    

保存会には現在約100名の人が所属し技術を伝えている。

びんてまり展

 

年一回の開催、16回目の展覧会は、保存会の約40人の作品計524点を展示している。同時に製作実演も行われた。

展示品

                 

知れば知るほど製作の厳しさが分かる。その努力にむくいるため全部の作品を掲載したいがスペースが許さない。

どうして瓶の中に入れるの?誰もが懐く疑問—これが秘法である。

てまりの館にはパネルで製作の工程が説明されている。

  

展示会場での製作実演と重ねる。

材料・・・・これ以外に詰める綿が必要

  

サラシを竹筒に通して球の形になるように巻く−てまりの形になったらビニール袋をかぶせて和紙で包む ≪使用するサラシは40m程 直をチェックする≫ 

     

和紙の上から縦横無尽に糸を巻きつける−さらに上からミシン糸を巻き土台を完成する。直径を多面から計り円形にする。出来上がったてまりは非常に硬い

     

金糸で地割をする−下絵を描かずに地割を基準に刺繍する−配色を考えながら丁寧にかかってゆく≪一針一針根気・集中力の要る作業である。センスも必要≫

     

てまりが出来上がったら中のサラシを抜き取る。空洞になったてまりを折り畳みビンの中に入れる ≪サラシの取り出しは正に戦いで労力が要る≫

     

ビンの中のてまりに綿を詰める。綿で円形に戻したてまりの刺繍の乱れを直す ≪多量な綿で円形に復元するのは大変な作業。一本一本の糸の修正も難作業≫

     

刺繍の意図が美しく修正されたら金欄の蓋をして完成である。

 

実演では、最後まで進めなかったが、工程は十分に理解できた。大変な作業であることにビックリさせられた。

てまり、ビンを自在に操り、あらゆる面に手先を配し、目をやって円形や図柄を維持する難作業は簡単でない。

丹精を込めて作り上げた母親から嫁ぐ娘への贈り物−その値打ちがよくわかった。見学者では女性の関心度が高く、サンプルの回覧にも目を見張っておられた。

    

愛知川町の調査によれば、ガラス瓶の中に手まりを入れる工芸品は、山形県鶴岡市、山梨県一宮町、岐阜県神戸町、滋賀県愛知川町、福岡県柳川市、熊本県本渡市、山鹿市の7ヶ所に伝わっており、技術は絶えたものの伝世品が伝わる地域が他に12ヵ所存在する。

  

この地域の女性のお細工もの(びんてまりの館に掲示のパネルより引用)

この地は渡来人依智秦氏(えちはたし)が拓き、織機の技術が伝えられた。その伝統が底流に残る。

明治時代にはお寺で裁縫教室が開かれていた。そこから手仕事の文化が生まれた。

「びん細工手まり」もこの教裁縫塾を媒介に伝えられてきた。

     

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