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滋賀県甲賀市正福寺

Shofukuji, Koka city,Shiga


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Aug.2010 撮影: 中山辰夫

甲賀市甲南町杉谷

臨済宗

本尊:十一面千手観音坐像(国重要文化財)

甲南駅の南西約2.5kmの小高い丘の上にある。

甲南駅から県道132号線と広域農道の交差点、杉谷南交差点を目指して進み、この交差点を左折して広域農道を200mほど進むと、右手奥に森と長い石段が見えてくる。

杉木立に囲まれた約90段の石段をのぼると仁王門がある。鬱蒼とした杉木立に囲まれて立つ仁王門の両脇には凛々しい金剛力士が安置されている。

寛文6年(1666)再建の本堂をはじめ、庫裏。鐘楼堂・弁天堂などが建つ。

本堂の正面に相対して八坂神社があり、ここでも神仏一体の信仰があったことがうかがえる。

本堂内には「世継観音」の名で有名な国指定文化財の、木造十一面観音立像と木造観音釈迦坐像が安置されている。寺伝では聖徳太子の自作としているが平安初期のものと推定されている。

その他、釈迦如来坐像(国重要文化財)、地蔵菩薩坐像(市指定文化財)などの文化財がある。

当寺では毎年8月10日に千日会が行なわれ、本尊で秘仏の十一面観音が開帳される。この日は、1日の参拝で千日分参拝したと同じ功徳(くどく)があるとされる。

参道の入口には「近江順礼二十一番、甲賀順礼十五番、正福寺」と記した享和3年(1803)の石標があり、観音順礼の札所として信仰があった。

当寺の由緒について

寺伝では聖徳太子の建立とされ、平安時代以降、天台宗に属し、戦国時代に兵火により堂宇を失った。天和元年(1681)に本堂再建近世に入って臨済宗に転宗下とされる。

山門

両脇には金剛力士像が安置されている。

本堂

八坂神社

十一面観音立像

国指定重要文化財

像高:130.2cm、ヒノキ一木彫、平安時代後期の作

古風な作りの蓮華座に立っている。袈裟の彫りは浅く、高めの宝髻(ほうけい)お上に、頂上仏を載せている。目もと、口元が愛らしく、童女のあどけなさが残っているとされる。

彩色が施されていたが現在は殆んどが剥離している。やさしい顔立ちで躯は細見につくられている。

江戸幕府5代将軍徳川綱吉がこの観音に経1万巻をあげて祈願し、子を授かったことから、別名“世継観音”と呼ばれている。

木造釈迦如来坐像

国指定重要文化財

本尊を囲んで、右手に立つ。像高:140cmの半丈六像で、本堂の客仏として安置されている。寄木造、彫眼の彩色像である。

二重円光を負い、法界定印を結んで蓮華座上に結跏趺坐(けっかふざ)している。

顔や体も肉付が豊かで、ゆるやかに着こなした衣文(えもん)からも平安時代の仏様であることがわかる。穏やかな表情である。

木造地蔵菩薩坐像

市指定文化財

本堂の須弥壇上に安置された像高:159cmの寄木造の彫眼増である。平安時代お作。

全体に古色を呈し、左手に錫杖を持ち、右手に宝珠を持つ堂々とした坐像である。口元にほんのりと紅の色が残る。

金剛力士像

市指定文化財

山門の両脇に安置されている。

像高:約197cm、ヒノキ一木造、内刳りを施さない構造で、眉を吊り上げた仁王独特の表情や胸や腕、脚などの盛り上がった肉付きも見事に表現されている。

県内では高月町の向源寺や善水寺に次ぐ平安時代の金剛力士像として衆目されている。

その他、本堂には多数の仏像が祀られている。

石造宝篋印塔

市指定文化財

本堂の右前に立つ。南北朝時代の作。完全な形で残る七尺塔である。基壇には反花の複弁を刻んだ基壇の上に、素面の基礎を置き塔身の月輪内部には薬研彫りで金剛界をあらわす四仏の梵字を刻んでいる。

平成7年の修理の際、本塔の地下より一字一石経が出土した。

石標

参道の入口、石段の左側に建つ。

「近江順礼三十一番、甲賀順礼十五番、正福寺」と記した享和3年(1803)の石標である。

当地域の観音順礼の中心寺院であった。

一字一石経

平成7年(1995)、石造宝篋印塔が解体修理された際、土台の石垣内から大きな水がめが現れ、その中にお経を記した小石がギッシリと詰まっていた。

一石に一文字ずつ経文を墨で書いたもので、一字一石経と呼ばれるもの。中には「南無阿弥陀仏」とかかれたものもあった。

石の数は7,995個、そのうち文字が読めるものは3,073個あった。このような経石を石塔内に納める風習が流行するには江戸時代になってからで、南北朝時代のこの宝篋印塔が江戸時代に積みなおされたといえる。

参考資料《甲賀郡志、甲賀市史、滋賀県の地名、甲南まちかど百科、甲賀をひもとく、他》

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