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滋賀県長浜市 千手院

Senjuin,Nagahama city,,Shiga

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 サクラ 睡蓮 紅葉 百日紅
Culture
 
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Nov.2011 中山辰夫

川道観音千手院

長浜市川道452

宗派:真言宗豊山派

本尊:千手観音立像 

国重要文化財:木造千手観音立像(秘伝)と木造千手観音立像(御代仏)

JR北陸本線長浜駅から北西へ約5kmの距離にあって、姉川化流域の平坦地に位置する。南は琵琶湖に面している。

千手院は康正2年(1456)永澄によって開かれたと伝え、もとは天台宗寺院の一院だった。

千手院は川道神社と同じ境内にある。その境内には、若一王子神社や稲荷神社などもある。

明治の神仏分離令まではそれらが一体であったことが分かる。

千手院の創建〜縁起〜現在

千手院は真言宗のお寺であるが檀家はない。神社と同様に、在所の人が村ぐるみでお守りするお寺である。

往古より、川道の人達にとって観音さまは守護仏。人々が願い事をし、叶える観音さまである。

四面する表門を抜けると北側に西から庫裏・本堂・観音堂が南面して並び、南側に鐘楼、東方奥に境内鎮守が立ち並ぶ。

境内全景 広くて心落着く境内である。川道神社と接し、神宮寺であったことの配置を示す。

四面する表門を抜けると北側に西から庫裏・本堂・観音堂が南面して並び、南側に鐘楼、東方奥に境内鎮守が立ち並ぶ。

境内図

表門

比較的簡素な四脚門 切妻造 本瓦葺 17世紀中期

親柱こひら角柱 女梁 冠木 男梁 控柱角柱 紅梁型頭貫 梁行腰貫 控柱上三戸組 二軒繁垂木 妻飾る紅梁蟇股

古式であり17世紀に遡る門としては県下でも数少ない一例で貴重とされる。

客殿と渡り高廊下

鐘楼堂

四方を堀が囲む 堀には睡蓮が咲く

梵鐘

寛文12年(1672)、京都の冶工・和田信濃掾藤原国次によって鋳造された。和田信濃掾藤原国次は和田吉兵衛と称し

京都三条釜座の座衆筆頭で数多く梵鐘を製造した。現存する梵鐘としては、京都知恩院勢至堂、法輪寺などわずかに

数えるほどとなった。

西国三十三所堂

阿弥陀様を中心に、西国三十三ケ所の観音様をお祀りしている。

本堂

桁裄三間 梁間三間 入母屋造 向拝一間 本瓦葺 安永元年(1772 寺蔵記録)

円柱 出組隅尾垂木 中備蟇股 妻飾紅梁大瓶束 二軒繁垂木 向拝角柱 連三斗 中備蟇股 手狭 四方切目縁 擬宝珠高欄

三間入母屋造の仏堂としてこの地域でも大型に属し、木柄も太く、安定した姿を見せる。

三間仏堂の四方を廻る縁には石製礎盤を加える形式で例が少ない。男梁が延びて控柱頭貫として納まる構造。

男梁の上には棟通りに直梁を架し、直梁上両妻と中央に蓑束を、中備に蟇股を配す。

棟木は妻の紅梁上の板蟇股と、この上下二段の蓑束で受けている。

絵様の渦は比較的細く巻いているが彫り込みが深い。

ご本尊御開扉法要

毎年11月4日には、御本尊・千手観世音菩薩様の代わりの仏様「御代仏千手観世音菩薩様」の御開扉法要が行われる。

ご本尊・千手観世音菩薩像は、秘仏として本堂内陣の大宮殿に安置され三十三年毎に日を限って扉を開き御法要を行う。

700余年前からの法度と伝統が堅く守られている。

法要は地元の人々が参拝する

ご開扉本堂内陣

御本尊・千手観音大宮殿

大宮殿上部組物

大宮殿右側袖部分彫刻

長浜の名彫刻師藤岡和泉甚兵衛による。

木造千手観音立像

千手院には、秘仏の千手観音立像とその御代仏が安置されている。秘仏は重要文化財として指定され、33年毎に開扉される。

御成物は、秘仏の身代わりとして、毎年半日だけ開扉されてきた。その御代仏も重要文化財に指定された。

指定の経緯

毎年2月、消防署と市の教育委員会が文化財を火災から守るため、施設の点検にやってくる。

昨年2月、例年通り消防署と教育委員会の職員が寺へやってきた。

重文である本尊は秘仏だから見られない。住職が代わりにと御代仏を見てもらった。

教育委員会の職員だった秀平文忠氏が「これは素晴しい仏様ですね。平安初期の作でしょう」とひと目見て驚きの声をあげた

住職は寺の縁起をもとに否定した。

その後、とんとん拍子にことが進み、1年足らずで重文指定となった。

本尊:千手観音立像(秘仏 重要文化財 明治34年(1901)指定) 

御代仏である千手観音立像 (平成23年6月重要文化財に指定される)

御代仏の裸形

御代仏の詳細

比較≪独断で行う≫

秘 仏

御代仏

国重要文化財指定

明治34年(1901)

平成23年(2011)

等身42臂(ひじ)の千手観音立像

等身42臂(ひじ)の千手観音立像

材質

ヒノキ

ヒノキ

古色

古色

像高(cm)

178.8

181.8

彫眼

彫眼

制作

平安時代

平安時代

条帛(じょうはく) タスキ

なし

なし

天衣(てんね)

共木

別材料「着脱可能→上半身裸形

衣文

彫リ込み浅く、等間隔で左右対称

の翻羽式衣文(ほんぱしきえもん)

太く厚みをもった衣文線、翻羽式衣文

松葉形衣文、渦文(かもん)

造り

頭体幹部は一材から木取り

背面から内刳、両肩以下の脇手

などはすべて別材

・木心(もくしん)乾漆像

一木造(いちきづくり)内刳あり

 

重要な特徴

 

 

  • 耳上で巻き込む鬢髪(びんばつ)
  • 四角張った顔に切れ目の目(瞳に銅版嵌(かんにゅう)と太めの眉
  • 裳裾(もすそ)が左右とも三つに分かれる

『注』秘仏開帳−長浜市・千手院千手観音立像をめぐって−秀平文忠氏 の講演資料より引用

奈良・法華寺 十一面観音立像≪国宝≫

滋賀長浜・黒田観音寺 伝千手観音寺像≪重要文化財≫

平成23年、両秘仏の開扉

33年毎に行われる秘仏・本尊の前回の開扉は平成8年(1996)だった。従い次は18年後となる。

ところが、33年毎の本開扉の間、17年目に中開扉がある。平成23年がその年に当る。

従い、平成23年11月3日〜11日迄の9日間開扉が行われる。拝観には絶好の機会である。

参考資料≪千手院HP 秘仏開帳講演テキスト、東浅井郡志、みーなー、他≫

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