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近江八幡 篠田のひまつり(花火)
Omihachiman Shinoda Himatsuri (fireworks)


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May 2010 撮影/文: 中山辰夫

近江八幡市上田町1615

国選択無形民俗文化財

JR近江八幡駅の東約1.7kmにある篠田神社の例祭。
毎年5月4日の夜に行われる仕掛け花火の祭行事で、国選択の無形民俗文化財となっている。

その起源は、江戸時代に雨乞いをしたときの返礼として花火を奉納したことといわれている。
毎年、違った絵柄の仕掛け花火が夜空に描かれることで知られる。今年は前座として約40発の打上げ花火が夜空を彩った。

神社としての例祭は5月3日から5日の3日間に渡って行なわれる。3日が若宮祭、4日が宵宮、5日が例祭である。
花火は4日夜の行事で、祭りを最高に盛り上げる。

その花火は「和火「わび」という日本古式花火で、全国各地の伝統花火の中でも稀有なものである。
硫黄に食品添加物、染色助剤の明礬を加えた明礬硫黄混合薬に米粉糊を加えた粘練物を杉板に糊付けした仕掛け花火である。

花火はすべて篠田神社の氏子総出による手作り100%の作で、1.8m四方の杉板20枚を組み合わせたもの。
今年はテロ対策など県の取り締まりが強化されたことにより、保存会としては火薬取り扱いの厳格化と観客の安全確保のため、例年の40枚から20枚に縮小した。

花火の画題は、その年に話題を呼んだものなどを取り上げ、下絵を杉板の画面に描いておく。
和火の今年のテーマは「風神 雷神」。
五穀豊穣を祈願する祭礼の原点に立ち返り、農業とは切っても切れない自然(天気)をつかさどる神の姿を花火(和火)で表現する。
下絵を市内在住の画家、山田水雲氏に依頼し、三月末から準備が進められてきた。

19時ごろから太鼓や大松明の宮入が始まる。
21時ごろから仕掛け花火に点火、「ドラゴンボール」の吊りランス(洋式)や「 ナイアガラ」が鮮やかに・まぶしく登場し度肝を抜く。
次いで、約40発の打上げ花火となり、夜空が百花繚乱の世界に化ける。見物客はこれだけでも大満足である。

22時ごろ、いよいよ網火「点火ロケット」で和火に点火される。
もうもうたる煙の中から硫黄の薄青紫色の炎で花火絵が浮き上がり、幽玄の美しさを目の前にして、感動のクライマックスを迎える。

行事日程

日時:5月4日 19:00 太鼓・松明宮入、松明奉火 21:00 花火奉火 22:00 和火奉火

花火の行事を待つ篠田神社境内と馬場

馬場と境内で準備が進む。

早朝から、馬場で大松明−笠松明が結われる。
新幹線にも近く、花火の煙具合のチェックにJR担当者も待機して監視する。

ドラゴンボールとナイアガラの仕掛け

神社境内の入口付近に設置される。表側は新幹線側で、境内側からは裏面しかみえない。

奉火用松明

馬場に設置される。造り物も併せ設置される。最初に点火される。

宮入する笠松明

境内には1本の大きな笠松明が立つ。渡御でさらに一本の大きな笠松明が宮入りし、境内に立てられる。

点火前の立板

太鼓の宮入り

19時、打上げ花火を合図に、各地区から馬提灯を先頭に、松明が続き、太鼓や鉦を鳴らして渡御して宮入りする。

大笠松明の宮入り

境内に打ち立てる大松明が宮入する。もみにもみ合って宮入に時間が掛かる。境内には大松明が2本立つ。

松明の奉火

馬場の松明が点火される。造り物も続いて点火される。いよいよその時が来たと緊張が走る。

ドラゴン・ナイアガラに点火

裏側しか見えないのが残念! 祭りのすべてを見るには最低2〜3年掛かる。1スポット/回・年である。
ナイアガラの滝は随分と長い距離セットされた。

打上げ花火

先刻の有力花火玉業者による競演となった。7〜10玉号がバンバン打ち上げられた。見事な出来栄えだった。

和火の点火
10時過ぎ、点火の時がきた。これまでに打上げられた豪華な花火で十分満足しているが“和火”への期待がより高まる。
ロケット花火による点火(綱火)である。頭上をロケットが走るので、残骸の落下物に要注意であるが気にもとめない。

乱玉の爆音と共に、板全体が花火に包まれ、幾つもの舞火が激しく回転し、何が起こったのかととまどう。
爆音がおさまると同時に、青い火があともって「風神・雷神」の絵が浮きあがって見えた。
爆音とは対照的に静寂の世界となった。
思わず感動の叫び声を挙げた。闇の中に青い光の線のみが輝いていた。
(風神・雷神の写真は篠田花火の保存会提供による)

カメラのフラッシュは使用禁止である。結果は問わない。夢中でシャッター押しの繰り返しだ。
硫黄の青い火はゆっくり燃えるためか、結構長い時間、絵を見ることが出来た。

花火に引き続いて、境内の大松明が奉火される。

篠田の花火について

「和火」による壮大な仕掛け花火である。
大きな立板に、青い火の大きく美しい絵が浮き上がる。よく見かける洋火の花火とは違った見応えや趣がある。

これまでの画題

この古式花火は、昔、地元の上田町内で「仕附花火(しつけ)」と呼ばれていたという。
第二次世界大戦中に一時途絶えていたが昭和28年(1953)に復活された。

かつて町内には花火の名人が何人もいて、祭りになると競って色とりどりの花火を打ち上げたという。
このような花火の奉納がいつ始まったかは定かでなく、記録もない。
ただ、八幡市に残されている慶応元年(1865)の「御用硝石家別御調帳」には、御用の硝石を取り扱っていたもの35名の名前が記されている。
当地域が近世から火薬の製造にかかわっていたことを示す資料とされる。
花火が今日まで続いているのは、何らかの形でその技術が連綿と伝えられてきた背景によるともいえる。

現在、花火製作に携わる「篠田の花火保存会」は、篠田神社の氏子で構成される。
つまり、専門の花火師のみでなく、氏子全員が技術伝承、制作に関っている。
火薬の薬剤作りから始まる一連の工程は、すべてが地元の人々の手作りによるものである。

花火の原料は、硝石、硫黄、ミョウバン、桐灰などで、火力の強い黒色火薬を用いることに特色がある。

製造工程

時代と共にその製作技法も少しずつ変化、改良してきている。
しかし、町内には古式による火薬製造の道具が伝えられており一連の基本的技術が地元の中で長年伝承されてきた。

日本独自の技法で生み出された「和火」の花火、それは余興の域を越えて、地元の手作りによる祭りの重要な要素の一つとして行なわれている。
今後も数々の仕掛けがなされ、数多くの観客を魅了してやまない存在であることを願うのみである。
《近江八幡市の歴史より引用》

打上げ花火一覧(5月4日)





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