Japan Geographic

看板考 柚原君子


「ラモナー化粧品」 

東京都墨田区東向島1丁目「鳩の街商店街」の中にある看板。

石田香粧(大正4年に石田佐一商店として創業)株式会社が1925年にラモナーブランドとして立ち上げたもの。

「ラモナー無鉛白粉」として発売。

桐箱を使用したパッケージは当時の化粧品には珍しく、これが若い女性から大変な支持を得た、とものの本にはあります。

鳩の街商店街は前身が赤線地帯でしたので、女性も多かったことを思えば、とぶように売れた化粧品だったかもしれませんが、この地域の経済水準を考えると桐箱入り白粉化粧品が一般女性に飛ぶように売れたとは想像しにくいです。

それゆえこの看板がこの地を物語っているようで感慨深く眺めました。

石田佐一商店はラモナー化粧品を発売するとともに「ネギシポマード」も発売していました。

ポマードは「柳家ポマード」が有名で私の父も使っていました。

ギトギトした油を頭に塗りつけているわけですから、今から思うとあまり清潔感がない状態ですが、シャンプーも良いものがない時代で男性は洗った髪がパサパサになり始末に困った人が多く、ポマードが重宝されたそうです。

現在ポマードは老齢の男性が使用しているくらい。

電車の中で稀ですがポマードの香りが流れることがあると、ついつい父の姿を重ねて探してしまいます。

 


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