文京 菊坂
Bunkyo Kikuzaka

文京区本郷四丁目と五丁目の境にあり、菊坂下交差点から本郷通りまで東北向きに上る坂。

始点 北緯35度 42分 41秒、東経139度 45分 18秒 標高 約10m
終点 北緯35度 42分 29秒、東経139度 45分 38秒 標高 約20m
坂延長 約600 m

Category
評価とコメント
 General 総合評価
 
 Nature 自然環境(主に緑)とエコロジーへの配慮。
 
 Water 水への配慮

 Sound/Noise 音への配慮 良い音、騒音など
  菊坂下道は静かである
 Atmosphere 大気への配慮(風、香り、排気など)

 

 Flower 花への配慮

 Culture 文化環境への配慮(街並、文化財、文芸関連)
  旧伊勢屋質店の土蔵、菊坂下道の井戸なども残っており、時代を感じさせる街並である。樋口一葉、宮沢賢治など多くの文人ゆかりの坂。
 Facility 設備、情報、サービス
坂の景観を楽しむスポットはなく、無料休憩設備もない。
 Food 飲食


Feb.2014 瀧山幸伸

旧伊勢屋質店付近
                                 




Nov.2009 瀧山幸伸


現在の菊坂

  



菊坂下道
     

本妙寺阪
 

本郷5−2付近
 



国土地理院 1/25000地図 

 

江戸切絵図 (国土地理院所蔵)
 

菊坂の由来は、付近に菊の栽培農家が多かったからといわれている。「御府内備考」に「此辺一円に菊畑有之、菊花を作り候者多住居仕候に付、同所の坂を菊坂と唱、、、」とあるが、その真偽は不明である。

写真:現在の菊坂 俯瞰、仰角のテレショット数点
写真:明治後年の菊坂 


菊坂は漱石の「こころ」、田宮虎彦、二葉亭四迷、馬場古蝶などの作品に登場する。
やはり菊坂を代表する文学者は樋口一葉であろう。
山梨県甲州市、重要文化財高野家内に一葉の資料展示室がある。一葉の父は当地大藤の生まれ育ちであるが、安政4年4月、一葉の母と駆け落ちする。その後父親は鎌倉の真下晩菘を頼って江戸に出、武士に取り立ててもらい、維新後は警察官僚となる。
一葉は6人兄弟の5番目として明治5年に生まれる。両親の写真が残っているが、一葉(奈津)は母親似である。

樋口一葉 写真と肖像画
  

左から、一葉の父則義、母たき、妹くに
 


樋口一葉の家系図

 

明治9年から5年間居住した「桜木の宿」(本郷5-26-1)は一葉の幸せな時代だった。

明治19年一葉が入門した中島歌子の歌塾「萩の舎」(春日1-9-27)は安藤坂にあった。一葉は菊坂時代よく炭団坂上の右京山を散策していた。

一葉の短歌
「大空の つきよりほかの かけもなし のわけにありし 浅ちふの庭 夏子」
 

17歳で父を失うが、その後は母と兄の折り合いが悪く、母と妹と一緒に暮らし、一家の生活を支える。
明治23年(18歳)から21歳までの4年間、一葉が住んだ菊坂下道(本郷4-32)にある石段や井戸、一葉が通った質屋の旧伊勢屋など、今も一葉の生活や彼女の流れるような韻文調の文章を偲ばせる情緒が漂っている。


菊坂旧居と旧伊勢屋

樋口一葉旧居付近

                  



菊坂 旧伊勢屋付近

          




この頃半井桃水の弟子となる。半ば強引に弟子入りした一葉であるが、桃水に恋心を抱くこととなり、迂余曲折の末絶縁したが後に再度交流している。

写真 半井桃水
 

写真 一葉より半井桃水宛書簡 明治25年3月10日 日本近代文学館蔵
雑誌『武蔵野』に掲載すべき作品、後の『うもれ木』『たま襷』の構想を相談している。
 




明治26年、下谷竜泉寺町に転居し、明治27年丸山福山町(西片1-17-8)に移る。苦難の中、明治29年に24歳の若さでこの世を去る。
『たけくらべ』『にごりえ』など、ほとんどの作品は晩年の円山福山町時代、14か月という短期間に創作されたものである。

「たけくらべ」 真筆版 1918 (文京ふるさと歴史館)
一葉の自筆原稿をそのまま印刷した貴重なもの
 


宮沢賢治もわずか8か月だが菊坂(本郷4-35-4)稲垣家に下宿していた。『注文の多い料理店』に収録されている作品をはじめ童話の多くがここで執筆された。
オルガノ(本郷5-5)の場所には啄木が金田一京助を頼って上京し、一時居住した赤心館があった。
その南側には大正3年菊富士ホテルが建つ。文人の宿として有名で、宇野千代、坂口安吾、谷崎潤一郎、竹久夢二などが利用した。


宮沢賢治旧居跡
   


旧伊勢屋付近から北側へ上る坂が胸突坂。急坂を上ると古風な旅館が点在する。


胸突坂付近

        

参考文献 
「愛の手紙」 特別展図録 2002年10月 文京ふるさと歴史館