Monthly Web Magazine Nov. 2016
10月、近江八幡市では二種類の美術展が開催されました。近江八幡でしかできない趣向が窺えます。
一つは、国内外のアーテイスト約60組の作品が並ぶ「BIWAKOビエンナーレ(BIWAKO Biennale)2016」で、2年おきに開催されている 現代美術 の国際芸術祭です。今年で7回目となります。「見果てぬ夢」をテーマにフランスやイタリアなど海外7カ国の芸術家も参加しました。
他の国際芸術祭とは、行政や民間企業主導によるイベントではないこと、ビエンナーレの総合ディレクターである 中田洋子 の熱意から発した点で一線を画しています。
もう一つは、ボーダレスアート展です。
アール・ブリュット アウトサイダー・アート の一部をなす障害者による美術作品の展示です。
障害のある人の表現活動の紹介に核をおくに留まらず、一般のアーテイストの作品と共に並列して見せています。
いずれも展示会場は、江戸時代から残る近江商人の空き町家や酒蔵、倉庫などが使われました。
ポスター
全国で一番初に伝統的建造物群保存地区の指定をうけた近江八幡市は、城下町と近江商人在郷地の両面を備えた町並みの景観が特長で、広く知られています。
町中には、八幡商人の居宅や旧宅など洗練された意匠からなる町家が一部公開されていますが、今年会場となった古民家、他は普段未公開です。
ビエンナーレのメイン会場である「まちや倶楽部・総合案内所」は、有名なヴォーリズ設計の一つ、「旧八幡郵便局」とは筋向いです。
まちや倶楽部は、2008(平成20)年に惜しまれつつ操業を中止した、1717(享保2)年創業の西勝酒造の旧工場跡で、近江八幡市では唯一の酒蔵でした。
奥には、入り口正面からは想像もつかない、いくつもの室(むろ)や蔵がひろがり、迷路のような空間に、29作品が展示されていました。
カネ吉別邸は、江戸期に繁栄を極めた元材木商の町家です。外観は今にも崩れそうな感じです。が、入口を一歩潜ると大変大きなスペース。
各部屋・土蔵・中庭には伸び伸びとした作品が並びました。古民家の意匠も魅力一杯です。
二会場とも広いスペースを有効に使った大作ばかりです。ここでは町家や蔵内部の様子が分かる作品を選びました。
ボーダレスアートの会場は、昭和初期の野間邸の町屋・倉庫を改修して平成14(2004)年にオープンした「ボーダレス・アートミュージアムNO−MA」美術館です。
日本初の、数少ない施設です。
美術館と作品例。(作品は撮影禁止ですので引用しました)
ビエンナーレもアール・ブリュットも滋賀がさきがけの活動と聞いております。他府県でも似た活動が起こりつつあるようです。
永年の地道なワークと、ボランテイアや市民の協力でやっと定着の段階に届いたようです。
近江八幡市の新しい顔としてさらに大きく育つように願っております。
八幡堀は後わずかで秋色に染まります。来訪者に素晴らしい景観を提供することでしょう。