Monthly Web Magazine Jan. 2017

Top page Back number


■ 今年の正月  田中康平 

今年の正月を迎えて最も驚いたことは、古希を迎えたことになると初めて友人からの賀状で知らされたことだった。

古希は70歳のことだが定めによれば数え年でみた70で、改めて落ち着いて数えて見ると今年の正月で確かに数え70だ。エッと思ってしまう。

祝うべきなのかもしれないが、正直なところピンとこない。

同期ではもちろん生き残っている人がまだまだ多数を占めていて、杜甫のいうように「古来稀なり」とはとても思えない。

年末に患ったタチの悪い風邪がやっと治りかけてはいるが、何故か心臓に負担をかけているようで、アルコールは一切飲む気がしない、お屠蘇も今年はなしとする、こんな風に体が劣化していくのを感じるのが古希らしいといえばそうだ。

いつものように初詣と、孫達と連れ立って近くの御子神社(安徳天皇ゆかりの神社)に歩いていく。

初詣しても神に誓う言葉などとんと浮かんでこない。

初日の出も建物に囲まれた街中では見える場所が少なくてうまく見えない、何だか有難くない。

  

いつもの正月が少しずつ色褪せてきたような感じがしている。確かに古希なのだろう。

正月だからいいこともある。

1月も3日に月のそばに火星が見えるというので日没後南の空を見上げると、上弦の月の下に確かに火星らしい惑星が見える、福岡に来て初めて火星を見た気がする、街中では見えにくいし土台福岡の冬の空はカラカラの関東と違って湿っていて星は見える気がしない。この日は正月らしく星が見やすい空になっていた。なんだかいい。

4日夕方の空には久しぶりに彩雲も見た。

  

8日には近くの公園の藪で初めてのヒクイナをじっくり見ることができた、これは珍しい。すぐ南の油山ではかわいいルリビタキも見たし鳥見の滑り出しも上々だ。

空を眺めても、鳥を見ても、いい正月といえばそうだ。

  

今年はどんな年になるのだろうか、世の中は何やら波乱の多い年になりそうで、それを鳥でも見るようにのんびり眺めて過ごせばいい年になるやもしれない。