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JAPAN GEOGRAPHICMonthly Web Magazine Feb. 2017
■発掘の話 田中康平
知り合いのやっている保育園で恐竜と鳥というお話をやってほしいと依頼があり、これは難しいと思いながらネタをいくつか掘り起こしていた。掘り起こすといえば発掘だが、恐竜の発掘は見たことがない。そういえば4年くらい前に鬼怒川の河原でクジラの骨を発掘しているところを観に行ったことを思い出した。
鬼怒川が大谷(ダイヤ)川と呼び名が変わる少し手前の宇都宮市北部の河原で、化石好きの中学生が何か生物のような化石があるのを見つけ栃木県博物館に持ち込んだことから本格的発掘が始まったということだったと思う。
1600万年前位の化石でその時代は今は標高130m位となっているこの辺りもクジラが泳ぎ回るような海だったようだ。人類が猿の仲間から枝分かれするずっと前のことだから”縄文海進”などよりはるか昔から水面はかなり高かったということになる。今、温暖化して海面が上がろうとしているのは実は普通の姿に地球が戻ろうとしているだけなのかもしれない、そんなことも思ってしまう。
ともかく、発掘しているという現場を見に行った。
発掘というと遺跡や土器の発掘は一応見たことがあるのでそんなものか、繊細に刷毛で土を払いながらの掘り出しか、と思っていたが全く違っていた。河原の人だかりのする方へ進むとけたたましい削岩機の音がする。近寄って眺めると石を砕いて化石と分離しているようだ。1600万年もたつと土ではなく周りが石にまで固化してしまう、そんなことになるのだ。確かに途方もない時間の経過だ。
見に来ている人も奇妙な人がいて、化石の発掘だというの石の間に生息する小さな川魚を走り回って夢中で追いかけたりする人(大人)がいたりする。やはり博物学の世界だろうか。
発掘されたクジラの化石は全身骨格で、全身が見つかることは珍しいのだと今調べて知った。こどもにでも話をすることは自分が学ぶことになる。それがいい。
添付図は当時のFNNニュースより
こんな話も混ぜてとにかく鳥と恐竜についての話をつくりあげて5歳の子供たちに話した。興味のある子はちゃんと聞いて色々質問するがそうでない子ははなから聞いていない。反応が一々面白い。
話し終えて振り返ると、この子たちから一人でも恐竜の発掘に進む子が出たら、とそんな気持ちを持たせて 教育の場はうらやましくもあった。