Monthly Web Magazine May 2017
ナラノヤエザクラ(奈良の八重桜)という八重桜のあることを知った。ほとんどの桜の花が散ってから、最後に小ぶりの可愛い花をつける。その繁殖力は脆弱で、樹勢は弱く、短命である。奈良以外の場所に移植するとほとんど育たない。ところが、なんと、奈良を代表する花として、奈良県花、奈良市章・市花になっている。歴史は古く、天平時代に遡るようだし、平安中期には、伊勢大輔(いせのたいふ、女流歌人)が「いにしへの奈良のみやこの八重ざくらけふ九重ににほひぬるかな」と詠んでいる。そう、小倉百人一首に選ばれている。
大正10年頃に東大寺知足院裏山で再発見された樹が天然記念物に指定されたが、既に枯れてしまった。実に頼りない八重桜であるが、今年も奈良公園のあちらこちらで咲いているという。
あまり調べもせずに、4月30日に奈良県庁の東側とか、興福寺国宝館の裏(北側)や北円堂と南円堂の間に行ったが、目についたのは(後で調べると)普賢象桜だった。ぽったりとした八重桜で、花ごと落ちて、鹿が食べていた。
今度は下調べをしてから、連休の5月4日に奈良を再訪した。まず、転害門と正倉院の間である。全部が全部ではないが、ナラノヤエザクラの幹には、「八」という札がつけられているという。あった!ソメイヨシノを見慣れた眼には貧相な樹である。が、花は可憐で清楚で品がある。
正倉院の裏の塀沿いに2本、転害門からのT字路の南西角に数本ある。
戒壇院の東にも数本まとまっている。
花のクローズアップ。小ぶりで真っ白から淡いピンクに移ろう様子が実にいい。繰り返すが、可憐で清楚で品がある。
参考資料
ウィキペディア「ナラノヤエザクラ」
ウィキペディア「伊勢大輔」