JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine May 2017

Back number


■どんたくパレード 田中康平

博多どんたくは昔からイメージが今ひとつピンとこなかったところがある。どんたくとはオランダ語のzontag(休日)がなまったものといわれるが響きがどこかいなか臭いなあと思っていたこともある。

祭りは舞台とパレードからなる。市内各所の舞台の多くはよく知らない人が芸を披露していていてしばらく見るともういいかという気がしていた。パレードもただ見るだけでそのうち飽きていた。他所から大勢の見物客が訪れる催しだがどんたくとはどこか自分には合わないような気がしていた。

50年ぶりに故郷に戻って暮らし始めてどんたくを見直すと昔より面白くもあるような気がして少しは見方も変わったが、どこかに昔の心象が拭えないところがあった。

これはどんたくに参加してみるか、パレードに参加してみるのがいいかもしれないと思っていたところへだれでも参加できるパレード隊募集が博多町屋ふるさと館という博多の昔を展示している展示館から出されているのを「市政だより」の隅に見つけてこれだとばかりに応募した。参加費2000円で法被はレンタル、しゃもじとタオルはもらえて踊りは教えてくれる、ということで当日の5月4日に櫛田神社の近くにあるふるさと館を訪れた。結構大勢集まっている、百人近いくらいの数だ、市民以外に観光客にも呼び掛けているようだ。外国人もいる。受け付けも法被を着た留学生らしい若者がたどたどしい日本語で応じてくれて、ちょっと面白い。

  

受付が終わり、まずは揃って櫛田神社へ出向きお祓いを受ける。博多の祭りといえば櫛田神社だ、博多山笠もここだ、いかにも雰囲気が出てくる。その後1時間半くらい踊りの練習を近くの中学校の体育館で行う。校庭では別のパレード隊のバトントワラーズも練習したりしてそれらしい祭りのざわめきがある。踊りはとにかく2曲覚える。1km位踊りながらパレードすることになっていて一応踊れないとさまにならない。

集合場所の冷泉公園に各パレート隊が集結して順に出発地点へ向かう。

   

動き出したかと思うとみるみるスタートラインが近づく。どこか雰囲気が昨年参加した福岡市民マラソンのスタートに似ている。踊りながらスタートラインを超えて真っすぐ天神へ向かう。沿道にはたくさんの人の顔があって皆こちらを向いている、その中をゆっくりと踊りながら進むというのはなかなか悪くない。パレード中に写真位写せるだろうと思ってデジカメを首から下げていたがとても写す余裕はないし写さなくとも誰か写してくれるだろう位の気になって 音楽に合わせてにこやかに手を動かし体を振り続ける。本当に思ったよりいい気分だ、この祭りは参加してこそ面白い祭りの様だ。曲に合わせ体が自動的に動くようになった頃はもうゴールまじかだ。

    

無事市役所前のゴールに至って解散となる。

余韻がしばらく残る。来年も参加するか、そんなことも考えながら祭りの賑わいが続く天神の街に浸っていた。