JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine Aug. 2017

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信楽焼雑報 中山辰夫

狸の里・信楽への最寄駅は信楽高原鉄道信楽駅。信楽高原鐵道は、信楽・貴生川間14.7kmを結ぶ地域に密着したローカル鉄道です。

   

信楽駅前には高さ5.3mの大タヌキが浴衣姿で観光客を出迎えます。今も信楽はタヌキ抜きでは語れません。

  

信楽焼=タヌキの置物とされますが、その歴史は古くありません。昭和の初めに窯元「狸庵(りあん)」の初代、藤原鉄造さんが夢の中で「タヌキを造れ」と告げられ、昭和の初めに制作したのが始まりとされます。全国的に広く知らるようになったのは、1951(昭和26)年の昭和天皇行幸の際に、日の丸を持ったタヌキを並べて歓迎したことからです。

信楽焼のルーツは鎌倉時代に常滑地区から移ってきたとされ、14世紀に入ると信楽独自の技術が開けたようです。

江戸時代は京焼の一大生産地となり、明治以降は製紙用の糸取鍋や耐酸陶器、外装タイルなど、時流に応じたものを造って今に至っています。

  

現在では傘立て・衛生陶器・建築用タイル・日用用品など、生活に根ざした陶器も造っています。タヌキの生産は勿論継続されています。

信楽焼と岡本太郎との関りは古く、大阪万博のシンボル「太陽の塔」の背面に描かれた「黒い塔」は信楽で焼かれた陶板、国会議事堂の中央塔屋(1993平成5年)のテラコッタなどは信楽のメーカーによる陶板で出来上がっています。最近では2004(平成16)年9月にオープンした奈良県明日香村のキトラ古墳壁画体験館「四神の館」の古墳壁画も信楽のメーカーによる陶板で出来上がっています。これらの実績で、陶板は多くの建造物に採用されています。

  

形になるものであれば何でも作るという信楽焼魂がこの地域には有るようです。

今年の4月に「日本六古窯」として瀬戸焼、常滑焼、信楽焼、丹波焼、備前焼、越前焼の六古窯の産地が日本遺産として認定されました。

ピーク時の五分の一に生産額が減少した地元では、これを契機に信楽焼の魅力を再認識し、世界に向かって発信したいと燃えています。

  

電気の要らない加湿器を開発したメーカー、3m90cmという世界最大級の陶板製造技術を確立したメーカー、信楽焼陶器浴槽を開発したメーカー、県立高校で始めたアート留学制度などの新しい動きが目を出しています。産地・窯元・企業が一体となって新たな製品や用途に挑み続けるたくましさに期待します。

最後に、新しい動きの一例として、信楽のメーカーと東京のデザイン会社が共同開発した「KIKOF・キコフ」を紹介します。

感性を持った人と組んだ新たな挑戦として、今後の動向が注目を浴びています。

特長は八角形をベースに直線のみで構成されたデザインが特徴のカップや水差し−直線が持つ「硬さ」と陶器の持つ「軟らかさ」が融合した、独特の味わいを醸し出した製品です。

       

KIKOFのHPより引用 http://kikof.jp/

 

紙のように薄くてごく軽い陶器

湖面の色ヲイメージした4色、琵琶湖の朝・昼・夕べ・月夜に映える湖面の色、をイメージした配色

淡く刻まれた刻印—「670.25」は琵琶湖の表面積、底面仕上げは落ち着いたマットブラック

信楽のある甲賀市は、忍者と信楽焼が日本遺産にダブル認定されました。

忍びの里 伊賀・甲賀〜リアル忍者を求めて〜

きっと恋する六古窯〜日本生まれ日本育ちのやきもの産地〜

 

信楽高原鉄道はPRに一役協力しています。