JAPAN GEOGRAPHIC
Monthly Web Magazine Aug. 2017
■ 欧州出張で食べたもの、飲んだもの 野崎順次
5年ぶりにロンドンに出張した。7月22日(土)に関空発、パリで身内に会って、24日(月)にユーロスターでロンドンへ移動、仕事が終わった週末29日(土)にベルファストに行って、31日(月)ロンドンに戻り、8月1日ヒースロー発スキポール(アムステルダム)経由で2日(水)に関空に帰ってきた。いろいろな事情や思わぬ不都合があって、ストレスの多い旅ではあったが、よく歩き、よく飲んで、よく食べた。
かつてのカメラ小僧時代には、食べたものを克明に撮影したが、己が高齢者になると、食事の相手によっては撮影を控えなければならない。だいたい、疲れがたまっているので、邪魔くさくなる。それでも、いくつか撮影したので、記録しておきたい。
関空からパリ(CDG)の機内食。昔ほどうまいと思わないが、妙に楽しみである。アペリティフにブラディーメリー、食事中には赤と白ワイン2本を飲んだ。
パリに着いた直後の夕食には評判のカニ飯を食べに行った。Le Grand Bol という店の黒糯米炒蟹(Crabe Saote Auriz Gwant)、ついでに小籠包も。とても美味しかったが、カニの肉をせせりだす「かにフォーク」があればなと思った。老人の差し歯と部分入れ歯では、ワイルドに殻が噛み割れない。
翌日は歩きくたびれたので、ホテルの隣のレストランに行った。北駅の真ん前で Cafe du Nord である。ここらは海鮮料理を出す店が多く、代表的な名物は生ガキである。だが、私はカキが嫌いで、生でも、揚げても、燻製にしても受けつけない。そこで、私としては定番のシュリンプカクテルとムール貝にした。まあまあだが、ムール貝は季節外れなのか身が小さい。
7月24日(月)ユーロスターでロンドンへ移動した。車内軽食である。
その夜、ホテルの近くの中華料理店 Green Cottage でソフトクラブのサラダと海鮮蒸し焼きそばを食べた。カニが大好きだが、ソフトクラブは初めてだ。殻ごと食べられる。
26日(水)のホテルの朝食、フルイングリッシュブレックファストである。これが食べきれるときは、時差ボケや疲れが治まり、体調が回復基調を示す兆候である。この日は半分食べ残した。
英国のビールはいろいろなタイプがあるが、ロンドンでよく飲んだのは English Beer で銘柄は London Pride である。価格は1パイント(568ml)グラスで£4.50くらい。日本の単純苦みでキンキンに冷やしたラーガービールに比べて、味にまろやかさと深みがある。
28日(金)昔馴染みの伝統的英国人に会いにロンドン郊外、Surrey のパブに行った。しっかりものの奥さんが最近急死されたので、そのことに触れないとしたが、向こうから奥さんの思い出話ばかりするので、あいづちしかできない。私が注文したのはbeef 何とかで、出てきたのはハンバーガー風だった。後で聞くと、そのままかぶりついてもかまわないそうなのだが、上のパンをはずし、肉を下のパンごと切って食べた。柔らかい赤肉で分かりやすい味だった。
28日(金)の夕食はロンドンの中心部Green Park駅近くのイタリアレストラン Al Duca である。お世話になった英国人夫妻を招待してロンドン最後の晩餐である。といっても、むこうにレストランの選定と予約をお願いして、支払いはこちらということ。私が食べたのは、日本語で簡略化すると、生ハムとメロン、ビーフリブステーキ、メロンタルト。選んで貰った赤ワインも非常に良かった。3人で£129.49(約2万円)だったから、ロンドンではとても安くすんだといえる。
29日(土)、ガトウィック空港から北アイルランドのベルファストに飛んだ。ホテルの地図はあるもののベルファスト市内交通についてはほとんど調べていなかったので、行き当たりばったりである。大きなトランクはロンドンのホテルに預けてきたから、荷物はカメラ、三脚の入ったリュックサックひとつ。とにかく、アイルランドといえばギネス(黒ビール)である。市街地中心部で降りて、少し歩くと、市庁舎があり、その裏の小さなホテル(ten sq hotel)のバーに入って、1パイントグラスを二つ注文した。10分くらいで飲み干すとバーテンが驚いていた。向こうのひとはちびちびと時間をかけて飲み、バーやパブでの会話や瞑想を楽しむのであるが、旅人の私にそんな余裕がない。バーの奥の席で数人の若い女性が騒いているので、写真を撮らせてもらった。顔だけじゃなく、body も見せてよと頼むと、立ち上がって腰をくねらせてくれた。
その夜、ホテルの近くのFrench Village で、スープ、黒パン、フィッシュアンドチップスを食べた。魚はタラではなく、Haddock だった。薄味の白身の魚をパリっと揚げてタルタルソースをつけるのだが、組み合わせがだるい。ネギ入りポン酢が合うのでは?ちなみにこのレストランでは酒類を提供しない。その代わり、持ち込み自由である。隣のおばさんグループは袋の中から取り出したシャンパン、ワインを飲みまくっていた。
翌日、ベルファスト中心部を歩き回った。スマホの万歩計は2万歩を越えた。途中でギネスを飲みに入ったパブは、極彩色の女性下着が満艦飾だった。決して変態バーではなく、ちょっとしたおふざけなのである。スタッフの派手な女の子に洗濯屋みたいねというとニコッとしてた。
ベルファスト最後の夜はあっさりとしたものが食べたくなった。ホテルの近くに桜という日本料理屋があるが、海外で独りの時は日本料理を食べないことにしている。その隣の隣に Lee Garden という中華料理店があるので、ワンタンメンを食べた。薄味で何の工夫もないが、予想通りの味でホッとする。ちなみにこの店では英語のない漢字だけのメニューを持ってきた。中国人と思われたのだろうか。
最後に、ベルファストで飲んだギネスは、やはり違う。味わいと深みがある。それに予想していたよりもよく冷えている。パブでもホテルのバーでも1パイントが£4.20だった。ロンドンに戻って、パブでギネスを飲んだが、一味まずかった。
それから、英国人から聞いた話、スイカに(レモンではなく)ライムを絞ってかけると味が広がって(develop)とても美味しくなるそうだ。