Monthly Web Magazine May 2014

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■■■■■ 有田の陶器市 田中康平

今年もゴールデンウイークの季節となった。焼き物の里と呼ばれているところはどこも5月の連休には焼き物市を開くような気がしていている。去年の初めまで住んでいた宇都宮では近くの益子でもこの季節きまって陶器市が開かれていた。

転居してきた九州では有田の陶器市が昔から有名のようだ。有田焼は磁器なのに陶器市とはいささか妙だが磁器市では語呂が良くないのだろう。ずっと以前に九州にいた時も訪れたことがなかったのもあって平日を選んで様子を見に行った。家には陶磁器には事欠かないというより溢れている状態ではあるのでなるべく買わないようにとは決意を固めて出向く。

福岡市の自宅からの道順は九州道ー長崎道経由有田というのがナビですぐに出てきて標準的の様だが、今回は距離的にやや短い唐津回りで出かけてみた。走ってみるとこちらの道のほうが気楽で高速区間は短いものの時間もそれほど変わらないような気がする。勿論道路代も安い。消費税アップで節約の気持ちがこんなところにも出てくるのかもしれない。

懸念した渋滞もなく有田駅前の駐車場に到達し難なく停められる。駅前からすぐに有田焼の店の列が始まる。価格は高いものも勿論あるが店先の安いものが面白い、100円、300円などという特価品が目を引く。取りあえずは抹茶茶器として使えそうな茶碗を探す。

磁器の抹茶茶碗というのは一般にはない、日本の茶道が確立した時代では日本では陶器しか作れなかったことと関係しているらしい。それなら磁器で飲むとどうなるのか、やってみたくなる。

店ごとにというか窯ごとに違う趣向の陶磁器が次々と並ぶ。益子の陶器よりは随分とバラエティに富んでいてゆっくり見ていると果てしない。

驚くほど軽い薄いコップなどと言う物があってつい買ってしまう。使ってみると中の液面が外から透けてわかるほどに薄くて面白い、また増えてしまう。

コーヒーを飲もうとすると器込みで300円という店がいくつもある、これはいいとつい飲んで器を持っていくはめになる。2km位の店の列を往復するとその他にも茶碗やガラクタを含めて何だかんだと買ってしまう。店の列はもっと長いが2kmくらいが限界だ。

茶碗で音階が出るように並べてシロホンのように普通の茶碗をたたいて演奏しているところもあったりしてこれもなかなか面白い。

思いの外楽しい陶器市だ、価格にとらわれず焼き物を見るのに自由な気持ちになれるのがいい。買出しに行くというより遊びながら買ってしまう、それができるということのようだ。

日本の磁器はこの地で始まったという歴史がそうさせてしまうのだろうか。五月の風が心地よい。

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