Monthly Web Magazine May. 2015

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■■■■■ 春は野鳥が 田中康平

春たけなわというより、過ぎ去っていく春を眺めているような気がしている。台風ももう7号まで発生した。

春は野鳥の世界がにぎやかとなる。去っていく冬鳥と南から北上してくる夏鳥が交錯して鳥を見るにも忙しい。

それにしても野鳥を見るのは、ただ見るだけ、というのが一番いい。珍しい鳥かどうか、初めて見る鳥かどうか、そんなことを気にしだしては追い求めることだけに心が行ってしまう。つまらなくなる。

去っていく冬鳥の代表はといえばマガモだ。福岡の自宅近くのため池のマガモは4月の上旬には殆ど北へ飛び去るが、中には諦めたように残ったつがいがいて、この時期あちこちでヒナが生まれる。

北関東にいた時は居残りマガモは日光戦場ヶ原の湯川で見かけるくらいだったが福岡では溜池ごとに一つがいくらいは居る。南のほうが暑さが直ぐ来るせいで諦めがよくなるのだろうか。カルガモのヒナの話はこの辺りではあまり聞かない、マガモが強い地域なのだろう。

ヒナは猫にやられやすい。一番近い溜池に5羽いたヒナが少し見ぬ間に皆とられてしまった。今はその先の溜池の一羽のみとなっている。都会にも都会なりの厳しい野性の世界があるのを思い知らされる。

4月の初めには近くの油山にコマドリがやってきた。姿を見るのは難しいが鳴き声は良く聞こえる。録音して聞き較べると以前行った礼文島で7月に聞いた声と同じようだ。繁殖はもっと北の地方となるので1-2週間でこの地からはいなくなる。礼文島まで行くコマドリもここらを通っているのだろう。遠くまで出かけなくとも日本に渡って来る野鳥が楽しめる福岡の位置がいい。

同じ頃、キビタキやオオルリがやってきて美しい声を聞かせるようになる。これも半月ほどで北の山地へ飛び去る。”焼酎一杯グイー”と聞きなしされるセンダイムシクイも鳴き始める。リュウキュウサンコウチョウも現れコサメビタキも近くの公園にでも現れる。追ってアカショウビンやサンコウチョウの声も聞かれるようになる。過ぎ行くばかりの鳥たちだが日本中に散っていくと思うとなんだかうれしい、がんばれと言いたくなる。

鳥といっても干潟の鳥を見るには少しは出かけねばならない。ここらで最も見ごたえのあるのが有明海の大授搦(だいじゅがらみ)だ。

有明海の大潮の時期は特に大きな干潟が広がり、渡りをするシギ・チドリに格好のエサ場と休み場所を与えてくれる。鳥が浜を埋める。気温が上がってくる5月初めになると羽は冬羽から夏羽に変わっていき浜がカラフルになってくる。オオソリハシシギは赤く染まりハマシギやダイゼンの腹が真っ黒に染まる。その代わり大型のホウロクシギやダイシャクシギは北へ去ってしまう。刻々と姿を変えていくこの時期の浜辺の風景は何度訪れても飽きない。

無理せず気ままに鳥を眺めながら時を過ごす、こんな生き方がこのところ気に入っている。

こんな無為なことがのんびりできるのはいい時代なのかもしれない。

添付は順に 1.マガモのヒナ、2.キビタキ、3/4.大授搦風景

音は コマドリキビタキオオルリの声

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