JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine July 2018

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■ 絶景とジオパーク 何が違う? 瀧山幸伸

絶景、秘境、パワースポットという言葉が独り歩きしている。いずれもジオと関連が深い言葉だ。

定義も評価基準もはっきりしていない非科学的な言葉だから使うのは極力自制している。

観光地には様々な権威付けがある。某タイヤメーカーの「星」に認定されたとか、某ネットサイトで何位に入ったとか、外国人が選ぶベスト10とか、テレビや雑誌で紹介された、などなど、首をかしげる事例もあるが、評価基準が違うのだから外野がとやかく言うことではない。

権威付けの極みの一つはユネスコ世界遺産だ。同じユネスコの管轄で世界ジオパークというものがある。

現在、日本には43のジオパークがあり、そのうち9がユネスコ世界ジオパークに認定されている。

 日本ジオパークネットワーク http://www.geopark.jp/ 

国内のユネスコ世界ジオパークの例

 北海道 様似町 アポイ岳 

Mt.Apoi,Samani town,Hokkaido  

 
 
 北海道 洞爺湖町/壮瞥町 洞爺湖 

Touyako,Touyako town/Sobetsu town,Hokkaido

 
 
 

  新潟県糸魚川市 小滝川硬玉産地、高浪池

Kotakigawa jade,Takanamiike,Itoigawa city,Niigata

 
 
  新潟県糸魚川市 蓮華温泉 

Renge onsen,Itoigawa City,Niigata

 
 
 
 
  島根県 西ノ島町 摩天崖、国賀浜

Matengai/Kunigahama,Nishinoshima town,Shimane

 
 
 
 鳥取県岩美町 山陰海岸

Sanin coast,Iwami town,Tottori

 
 

 高知県室戸市 室戸岬

Muroto misaki,Muroto City,Kochi

 
 

 長崎県 雲仙

Unzen,Nagasaki

 
 

  熊本県小国町 鍋ケ滝

Nabegataki,Oguni town,Kumamoto

 
 

  静岡県下田市 田牛

Toji,Shimoda city,Shizuoka

 
 

選ばれた地は、よく言えば通好み、どちらかと言えば一般観光客受けしない場所を多く含む。

地元自治体は観光産業に期待しているのだろうが、現地の整備や地域博物館などと連携した情報発信やプログラム作りは遅れている。

通常の観光旅行では飽き足りない人には興味深いかもしれないが、お気軽団体旅行で行こうものならブーイングと事故が心配だ。

だが最近では有名タレントを起用したジオ関連TV番組が人気を呼び、地域おこしの機運が盛り上がっている地元もある。

ジオパークは自然地理だけを連想するが、人文地理も含まれるので、文系の人も楽しめるはずだ。

ジオパークはもちろんのこと、日本のジオ関連サイトには絶大なポテンシャルがあるのに、もったいないことだ。

Japan Geographicはその名が示すようにジオとは関係が深い。

森羅万象を扱う地理学的見地で、各地の価値を豊富な写真や動画を駆使し総合的に紹介するのがJapan Geographicのミッションの一つだ。

Japan Geographicでは、ジオ関連地については、文化庁の「国指定文化財等データベース」を選定基準の一つに据えている。

 国指定文化財等データベース https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/ 

具体的にはデータベースにあるジオ関連の天然記念物、名勝、文化的景観、重要文化財、民俗文化財などを対象地の選定基準として現地調査を行ってきた。

文化財は地元教育委員会所管の調査報告書を基に選定されるので、学術的には最も権威があるはずだから、学術的価値のブレが少ないだろうと。

ところが、予算がないのだろうか、データベースには情報が少ない。明治のカナによる数行の文章が記載されていたりなど、調査報告書のごく一部の抜粋であり、画像はないかあっても貧弱で、動画はない。

国指定文化財等データベースを一般向けにわかりやすくしたサイトが、同じ文化庁の「文化遺産オンライン」だ。

 文化遺産オンライン http://bunka.nii.ac.jp/

だが、予算を使っているだろうことは想像が付くが、使いにくいことと、画像や動画の資料が貧弱なことに変わりはない。地方の文化財情報も閲覧できるようにはなっているが入力は進んでいない。

ネットでは調査書など参考資料を閲覧できる機会に恵まれないことが多く、地方の文献は都会の図書館でも見つからない。国会図書館でも手に入らない場合がある。

最後の手段は現地の博物館や資料館などで学芸員とコンタクトするしかなく、とにかく現地調査の前提となる関連資料を入手するのは苦労する。

Japan Geographicは社会教育的見地で、どのデータベースよりも詳しくわかりやすく、長期安定的に情報提供を継続したいと願って15年ほど活動してきた。

天然記念物に指定されたジオ関連サイトのカバー率も100%に近づいたが、完了かというとそうではなく、最初の下見が終わったようなもので、内容を進化洗練させるにはあと百年程度かかるだろう。

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