JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine August 2021

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■ 旧石器時代のハイテク素材 白滝遺跡と黒曜石の露頭 瀧山幸伸

旧跡時代や縄文時代を理解するには石器の知識が必須だ。日本の黒曜石の歴史は縄文以前の旧石器時代、2万年ほど前に遡る。国の天然記念物に指定されている大分県姫島が西の拠点、長野の星糞峠付近が中部の拠点、そして最大の拠点が北海道遠軽町の白滝だ。

白滝遺跡で発掘された黒曜石は10トン、460万点に及び、かなりの数が国の重要文化財に指定されてジオパークセンターに展示されている。ここで加工された石器は樺太やアムール川河口から新潟まで運ばれた。

  

肝心の工房群があった遺跡は国史跡に指定されてはいるが、当時の姿を想像できるような施設は整備されておらず、現地への立ち入りもかなり困難だ。

加工の原材料となる黒曜石は、遺跡から10キロ以上離れた赤石山周辺の露頭で採取され、一部は現場でも加工された。日本最大の埋蔵量と質を誇るという。これらは北海道の天然記念物と遠軽町の文化財に指定されている。やはり採掘の現地を見ないことには黒曜石文化の全体像がわからない。だが、原則入山禁止で、どの露頭へのゲートも常時閉まっている。今回その中の一つで代表的な八号沢露頭の現地調査を行った。単独では入山できないのでジオパークセンターの方に案内を乞うた。悪路に慣れてはいるが、かなり長距離かつ標高差がある林道を登ることとなった。

八号沢露頭の現地に到着したころには暗雲が立ち込めて雨が降ってきていた。8Kのカメラとレンズは少々の雨には耐える仕様だが、ジンバルや録音機は雨に弱い。何度もトライしてようやく現地に訪問できたのだから、ここまで来たら腹をくくって機材を犠牲にしてでも撮影するしかない。

   

時間の都合で他の露頭には行けなかったので、次回への宿題を残して山を下った。


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