Japan Geographic

看板考 柚原君子


 

「ダイヤモンド脱穀機」 

 


所在地:長野県小県郡の和田宿

看板は文字のみですが、実際の脱穀機は↓このようなものです。

 

光り輝く第一級の宝石“ダイヤモンド”を冠にいただいて、商標の様なものは、“たわわに実った稲穂”と“豊年”。
号名は“太陽号”。
大豊作間違いなし!の祈りをこめた脱殻機です。

庭に放し飼いのニワトリ。遠くからは牛小屋の臭い。豚の鳴き声。
家の中では、丸いちゃぶ台にじいちゃんばあちゃん、父ちゃん母ちゃん。
丸坊主刈りや前髪を勝手に不揃いに切りそろえられた子どもたち。
おかずは少ないけれども白米がぴかぴか光って置かれている。
そんな、昭和のよき時代も浮かんできます。
(ほぼ、かつての我が家のことです)(笑)。

脱殻とは稲の実から籾(もみ)を落とすことで、江戸時代には主に“千歯抜き”(センバコキ)といって1枚の板に一列に打ち付けた釘状のものに稲束を振りがぶって叩きつけ引き抜いて脱穀していたそうです。
大正期になって足踏み脱殻機(人力脱穀機)になっています。開発したのは明治43年に創業された養蚕具の製造・販売をしていた「共栄社」。

ダイヤモンド脱殻機はドラムの形をしたものに金具が出ていて足で踏んで回転させるもので(イネコキ)、昭和34年頃まで活躍しています。

これ以後は現在でもなじみのある“コンバイン”という稲の刈取りと脱殻が一度にできる機械へと変化していきます。さらに昨今のコンバインの発達はめざましく、GPSを活用した自動運転技術が取りいれられて、自動稲刈りしつつタンクが満杯になったら、籾を運搬する車まで移動。タンク内の籾を出したら、稲刈りの途中であった所まで戻れるとか。まるでロボットの様なコンバインですが、価格は一千万円以上するそうです。もちろん田植えもコンバインで行いますから、早乙女の紅い蹴出しの風物詩もあまり見られなくなっています。

先日、新型コロナの影響で、外国人の実習生という名を借りた外国人の農業助っ人さんたちが来日できなくなって、収穫ができずにほうれん草や水菜を捨てざるをえないという農家のニュースがでていました。

脱殻機からコンバインに進化したとはいえ、稲作以外の農業はまだまだ人の動作に頼らなければならない部分が多いです。しかも近未来においては水と食料が奪い合いになるであろう予測も出ています。自給自足率が低い危険性を認識していない、人柄の良い日本人は、あれよあれよという間に国内の水資源も海域の漁業もどこかの国にさらわれてしまうような懸念を覚えます。
稲作は国の根幹です。農業をファーム・株式会社にしてコンバインを個人の借金ではなくして、と農業からほど遠いところで暮らしていますが、自国の白米を愛する一国民としての願いです。

はてさて誰にお願いしていったらいいのやら……。

 


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