愛媛県松山市 葉佐池古墳
Hasaike kofun,Matsuyama city,Ehime
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Jan.19,2016 瀧山幸伸 source movie
国史跡
葉佐池古墳は、道後平野の北東部、石手川水系の小野川左岸の標高113から121メートルの丘陵上に位置する。この古墳は、平成4年、開墾中に横穴式石室が偶然に発見されたことにより存在が確認された。発見直後に松山市教育委員会が、石室内部の写真撮影を行ったところ、玄室奥壁に子持高杯などの須恵器が整然と配されていることや、2基の木棺と考えられる木材が良好な状態で遺存しているなど、未盗掘である可能性が高いことが確認された。松山市教育委員会は平成5年度から平成20年度にかけて、5次にわたって発掘調査を実施した。
その結果、墳丘は長径約41メートル、最大幅約23メートルの楕円形を呈し、墳丘には3基の横穴式石室(1号・2号・4号石室)と、2基の小竪穴式石室(3号・5号石室)が存在することが判明した。このうち、4号石室は1号石室を築造する際に破壊されている。
1号石室は本古墳の発見の契機となった石室で、全長4メートル、玄室長2.8メートル、幅1.4メートル、高さ1.8メートルを測る西側に開口する両袖式の横穴式石室である。玄室内からはヒノキを素材とする組合せ式箱形木棺1基とそれに伴う人骨1体分、ヒノキ板1枚のみからなる木棺とそれに伴う人骨1体分、追葬の際に玄室隅に集められた人骨1体分、そして須恵器や馬具などの副葬品が、閉塞直前の状況を保ったまま出土した。このうちヒノキ板に伴う人骨には多量のハエのサナギの殻が付着した状態で検出された。ハエの種類と習性から、この遺体は死後、1週間から十数日間、一定の光量のある場所に安置され、その後に埋葬されたことが判明した。なお、出土した須恵器から初葬は6世紀後半、追葬が7世紀初頭と考えられる。
2号石室は全長7.1メートル、玄室長3.7メートル、幅2.3メートル、高さ2.4メートルを測る西側に開口する両袖式の横穴式石室である。玄室内からは、砕片となったコウヤマキの木棺と、人骨3体分、須恵器、土師器、馬具、工具などが散乱した状態で出土した。副葬品は、完形に復元できないものも多く、追葬時に何らかの理由で、その一部を持ち出すとともに、木棺や副葬品の破砕が行われたと考えられる。なお、出土した須恵器から初葬は6世紀中頃、追葬が7世紀初頭と考えられる。
この2基の横穴式石室については、保存状態が極めて良好であり、かつ、その築造過程を明確に復元することができる。また、未盗掘であったことから、最終埋葬時の状況をそのまま留めているだけでなく、初葬から最終追葬に至るまでの間に行われた、数回の副葬や儀礼行為が明らかになるとともに、人骨に付着したハエのサナギの殻から、被葬者の死から埋葬までの期間や、その間遺体が置かれていた環境が判明した。
このように、葉佐池古墳は未盗掘の横穴式石室を有し、古墳時代後期の葬送儀礼を知ることができる希有な事例として重要である。よって、史跡に指定し、保護を図ろうとするものである。
(文化庁データベース)
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