JAPAN GEOGRAPHIC

愛媛県内子町 内子

Uchiko ,Uchiko town,Ehime


Dec.2003 瀧山幸伸

  

愛媛県の内子は松山から南へ40キロ、高知との県境近くに位置する。司馬遼太郎ファンならば、高知から「竜馬脱藩の道」を辿り内子に入ると興味深いだろう。城下町の大洲に抜ける手前に広がる、小さな盆地に発達した物資の集散町、いわゆる在郷町だ。

内子は、江戸時代後期から明治にかけて、木蝋(晒蝋)と和紙の生産で栄えた。

和紙はここの商家から阪神に出荷され、大洲藩の財政に貢献した。

一方、この地方のハゼの実から抽出した木蝋を晒し、精製した晒蝋は、パラフィンが登場するまでは大変需要が大きく、海外に輸出するほどであり、内子の繁栄はかなりのものであった。

 町の高台に位置する八日市・護国地区には、当時の面影を残す商家群が約600mにわたって残っており、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。

八日市地区は蝋の商家で栄え、北側の護国地区は高昌寺の門前として、金毘羅詣でや四国遍路の旅人で賑わった。

 町では、町並保存運動に続く村並保存運動を展開し、21世紀に向けての新しい「エコロジータウン」を目指している。石畳村の屋根のついた橋、棚田など、日本の原風景が見られる。

 

内子の街並

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内子の街並 

 建物は江戸末期から明治のもので、和ろうそくの繁栄を今に残す。建物は平入り、2階建、本瓦葺で、黄色を混ぜた漆喰の外装に虫籠窓である。2階部分は、蝋を保存する倉庫として利用されていた。

大村家(重文)

  

  

  

 

大村家(手前)と本芳我邸(後方) (国重文)

 大村家は寛政年間(1789-1801)に建築された、この地区では最も古い商家の一つ。土台には栗の木が使われている。

  

本芳我邸は木蝋集荷の元締め商家。明治17年の建築。

なまこ壁の意匠、漆喰壁の色使い、こて絵の棟飾り懸魚(げぎょ)が美しい。漆喰やなまこ壁の重厚感、防火のまじないとして取り付ける懸魚のデザインについて、ここまでこだわる理由は、蝋を扱う商人にとっては火が一番の大敵だからだろうか。

黄色が混じった漆喰壁が作る日差しの陰影は、朝昼夕と微妙に変化する。ぜひとも朝夕に歩いてみたい。

    

上芳我邸(国重文)

本芳我邸の分家。明治27年の建築。こちらは館内を公開している。

  

  

 

上芳我邸内 

製蝋用具の展示、蝋の生産方法の解説が行われている。製蝋用具は国の有形民俗文化財に指定されている。

  

  

  

 

鏝(こて)絵師の家

内子の街並形成に貢献した、芸術的なこて絵師の世界が垣間見られる。

  

高昌寺付近のみやげ物店 

 町でただ一人となった和傘職人、泉正氏の芸術作品も売る。もみじを散らした和傘は、骨一本ずつ丁寧に編まれており、この上なく美しい。このようにおしゃれな傘が良く似合う街並だ。

  

 

和ろうそく職人 大森さん

 内子の伝統工芸を守る職人の一人。200年続く蝋燭屋の六代目。

店の奥でご主人が一本一本手作りする。芯の周りが薄緑色のバウムクーヘンのようになって、眺めているだけでも美しい。奥さんが帳場で灯す蝋燭は、炎が大きく長持ちし、すすがほとんど出ないのが特徴。このように心を込めて作られた蝋燭は、大切な場で使いたいものだ。例えば、誕生日や結婚記念日、部屋の明かりを全て消して、大きく暖かい灯火のもと、おいしい食事と地酒で幸せな時間を過ごそう。日本人はとかく明るい灯火を好むが、西欧ではムードを演出するため、ろうそく一本で食事を提供するレストランをよく見かける。内子にそのような「蝋燭のある生活」を体感できる施設や飲食店があれば素晴らしいだろう。

      

内子座 

 大正5年(1916)創建された本格的な歌舞伎劇場。栄華の記憶を保つような、また内子のホスピタリティを活かすような積極的な利用方法を検討してほしい。例えば、訪問客用のカルチャーセンターのようなものはいかがだろうか。

     

商いと暮らし博物館

 薬剤商家を保存する町立の資料館。

  

*取材メモ

2003年12月

内子には高知からの細い峠道を越えて朝9時ごろ到着した。背後の山が近く、水清く鳥の声がさわやかだ。

内子は、団体観光客が訪問する人気コースになりつつある。団体向けの店や商品も増えてきて、街並風情が無くなるのを危惧する。

それはある程度止むを得ない事とは言え、町が「エコロジータウン」を目指しているのであれば、エコロジカルな観光交流スタイルを提唱していく必要があるだろう。

例えば、町の景観条例がハードを守り、町の観光交流条例、迷惑防止条例、エチケット条例などがソフトを守り、訪問客と地域住民との良い関係を構築することが必要だろう。

コア地区内では、歩きタバコは禁止。団体の旗やメガホンを持って行動しないで、個人行動を原則とする。バスや車は遠隔地に駐車し、バスの冷房用エンジンは必ず切る。個人向けの無料ガイドボランティアを増やす。滞在型交流型のイベントや施設(民宿など)を増やす。等々、街を五感で楽しむための細かい配慮がほしい。




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