JAPAN GEOGRAPHIC

群馬県みなかみ町 須川宿周辺

Sukawashuku,Minakami town,Gunma

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伝統工芸と野仏に支えられたホスピタリティの里
Nature
 
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野仏と宿場町と養蚕農家の街並
Facility
 
Food
地元産の新鮮な農産物と加工品


Apr.20,2014 瀧山幸伸 source movie

猿ヶ京温泉

猿ヶ京関所

旅籠しんでん

郵便局の桜

相俣のさかさ桜

須川宿

箕輪

薮原宿

布施から薮原、上津へ


Sep.2013 柚原君子

泰寧寺山門(群馬県指定重要文化財)

所在地:群馬県利根郡みなかみ町須川

須川宿を散策していたら、案内があり近所に重要文化財があるとでていました。使命に燃えた私は貸し自転車(500円なり、電動は800円なり)(電動にすれば良かった)(汗)、で行ってきました。田舎の近いは遠いの格言どおり(笑)、田んぼの続く先のなだらかな山肌にありました。

泰寧寺の創建は延慶2年(1309年)に真改が開山したのが始まりと伝えられています。

目指す山門は木が茂って全容が綺麗に撮れませんでした。でも綺麗な均衡の形の山門で、建築素人の私ですが思わず見とれて汗がスーと引きました。

山門は間口3間・奥行2間の楼門(ろうもん)で、入母屋造(いりもやづくり)(2層)の構造をとる禅宗様式の建築だそうです。元来は屋根は萱葺(かやぶき)だったそうですが、1967(昭和42)年に屋根替工事を実施し、現在のような銅板葺に改修されたそうです。円柱12本のうち11本は1本の大ケヤキから取材したとの伝承があり、上層正面中央には4枚の引違唐戸がついており、初層には扉がありません。上層と初層とでは組物・軒などの構造に大きな違いがみられ、特に軒の部分は上層が二軒繁垂木(しげだるき)であるのに対し、初層は一軒繁重木だそうです。上層内部には釈迦(しゃか)三尊像、迦葉・阿難の二大弟子、十六羅漢像(らかんぞう)が安置され、その天井は格天井で花鳥絵を描いてあるそうですが、残念ながら見られませんでした。

特徴は上層の柱全てがクサビを打っていないなど固定されていないことだそうで、強風時には上層のみが南北に揺れ動き、風が止むにしたがってもとの位置に戻るような構造になっているそうです。建立年代は寺伝では1633(寛永10)年とでていましたが、識者によると建築の諸特徴及びその他棟札(むなふだ)などの記録から1775(安永4)年とみるのが穏当と考えられるそうです。

旧大庄屋役宅書院


瀧山幸伸

Sep.2004  source movie

July 2004 source movie

群馬県新治村は新潟県に抜ける三国街道の最奥部に位置する。須川宿周辺の「たくみの里」をはじめ地元資源を活用した観光に熱心で、訪れるたびにその熱意が肌で感じられる。リピーターや口コミ客が多い理由は、例えば旅行ガイドに登場する猿ヶ京ホテルの女将が語る「民話の夕べ」や餅つきに覗える。鉄道も高速道路も無いこの村だが、旅行ガイドでは紹介されない地域活性化成功の鍵を探ってみたい。

資料:国土地理院

新治村全域図(新治村資料を基に作成)

新治村 たくみの里、須川宿

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伝統工芸と野仏に支えられたホスピタリティの里
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野仏と宿場町と養蚕農家の街並
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地元産の新鮮な農産物と加工品

たくみの里地図(資料:新治村)

須川宿は須川平と呼ばれる広大な河岸段丘に位置し、江戸時代より戸数五十軒ほどの小規模な宿場であった。宿場の道沿いに水路が流れており、生垣と庭園の緑が美しい。現在の建物は明治以降のものであるが、木造建築の意匠と土蔵が美しく、「たくみの里」と呼ばれる数多くの体験施設も、基本的に歴史的建造物を有効利用したり、それと調和するように新築されており、宿場町と農村を基調とした歴史的な街並景観が意図的に保たれている。

 明治初期の宿場には「かじや」「桶や」「くるまや」「いかけや」などの屋号が残っており、このような土地の記憶が今日のたくみの里の原点になっているのであろう。

 しかしながら、たくみの里は明治から存在したものではない。二十年ほど前、地域の野仏を巡るイベントがきっかけである。そのイベントが好評であり、定期的に野仏巡りが開催され、ツアーコースも作られた。都会からの訪問者との交流をきっかけに、地域住民も歴史遺産の価値を再評価するに至った。この地域には、旧大庄屋役宅をはじめ、多くの古民家が現存し、さらにそれらのほとんどは養蚕農家であったため、大型で美しい建築であり、均質な農村景観を醸成している。それらの既存農家や旧旅籠を活用して、体験型観光施設の「たくみの里」が形成された。20数件の家に伝統の技を持った匠がいて、赤ちゃんから老人までオムニバスに体験型のスローライフを楽しめる。地元のホスピタリティを体験できる、入場無料の自己実現型テーマパークだ。ここに愛着を覚えた人は、自分もここで一緒に生活する、あるいはさらに精進して匠になる道を選ぶこともできるわけだ。

たくみの里、須川宿

旧本陣、旧旅籠 水車が街並にライブ感を与える

藍染の家 藍の蒼とコチニールの赤を染めに活かす

木織の家 象嵌切り絵の世界

くるみの家 くるみに凝縮された芸術の小宇宙

急須の家

手作り郷土の香りの家

おめんの家

 都会からの訪問者はおじいさんと小さな孫。おじいさん活躍の場。楽しそうに孫を指導している。

お面の家の母屋と土蔵 

 老主人が見知らぬ訪問者を暖かく迎える。「まあ上がれ」「お茶を飲め」「アンズを食べろ」と。そして昔話が盛り上がる。土蔵の中に入ることさえ、都会人にはわくわくする体験だ。 たくみの里は計画的に作られたテーマパークではないし、各施設の従業員も雇われたスタッフではない。ホスピタリティの原点は、目先の金儲け主義に走らない「住民のゆとり」であった。山形県の金山と同様に目先の金儲けに執着しない街はホスピタリティが高く、このような街にはリピーターが多い。

立派な土蔵が並ぶお面の家付近の農村景観

花が溢れる中心施設「豊楽館」

地元の主婦が指導する蕎麦打ち体験

地元牛乳の加工工場で作りたてのアイスクリームとヨーグルト。見かけだけの名物商品とは違い、かなりおいしい。

福寿茶屋 地元の主婦手づくりの店 自分たちがおいしいと思う品を提供している。確かにおいしい。桑の葉を使った「絹饅頭」を食べると「絹の肌」になるのだろうか。

揚げたての手作り豆腐をいただく 

農産物即売所 七色唐辛子が美しい

旧大庄屋役宅

村内郊外の情景

泰寧寺 鄙びた寺の山門と庭園が美しい

泰寧寺 蛍の夕べ 

 ホスピタリティ溢れる村の観光イベント。横笛の演奏と抹茶和菓子の接待は全て無料。村の生徒もボランティアで参加し社会体験。住民皆で訪問者を歓迎している。住民も家族ぐるみでイベントを楽しんでおり、主客混交和気あいあいとした雰囲気が感じられる。普段の境内は非常に静かな癒しの空間。京都のように団体で騒々しいが一級の寺院を訪ねるのも良いが、このような静かな村の三流の寺院で花鳥風月をめでるのも悪くは無い。

奥平温泉 村営の日帰り温泉。一日のんびり静養できる。

大影 奥平温泉付近の養蚕農村
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養蚕農村
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養蚕で繁栄した当時そのままの農家は大規模で壮観。屋根の息抜きはカイコの換気目的。この家にはおじいさんが一人で住んでいる。来訪者と地元の人が心打ちとけて話ができるのも、この家の風格と歴史のなせる業であろう。スローライフが見直されている今日、ゆっくりと過ぎていく時間を大切にする人の心が豊かな里だ。

新治村、月夜野町

June 2004 HD(1280x720)

SOUND SCAPE mp3

法師温泉

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山奥の秘湯
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上原謙と高峰三枝子がモデルとなり、温泉ブームの契機となった「フルムーン」のポスター写真が撮影された温泉。山奥の一軒宿で清流の音と鳥の声と森林に癒される。

永井宿 三国街道最奥の宿場町 三国峠を越えて越後湯沢に至る

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三国街道最奥の宿場
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箕輪

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典型的な養蚕農村
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村役場沿いに谷間の道を遡ると突然眼下に典型的な養蚕農村の景観が広がる。柱と梁をあらわした豪壮な建築。往時の繁栄の面影が色濃く残る。大影や箕輪などの養蚕農家はガイドには全く取り上げられてないが、近い将来農家巡りや農家宿泊体験ツアーがブームとなるであろう。

薮原宿

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坂道に沿った小さな宿場
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【まとめと提言】

 新治村には京都や草津と違って特別有名な観光名所があるわけでもなく、有名な温泉地があるわけでもない。何も無い村だけれど、今ある資源を使って村ができること、都会人から求められたことを素直に実現してきた結果成功につながった。団体客に他所で大規模に製造したみやげ物を売りつけることではなく、訪問客一人一人と長時間ふれあいコミュニケーションを大切にすることでクチコミ的に訪問者が増えていったのであろう。

 たくみの里の近辺にはフルーツ村もできた。このような、五感を刺激する時間消費型、文化型の「スローフード・スローライフ」なまちおこしは、今後の少子高齢化社会に向けた良い例と言える。新治村には、有名な法師温泉をはじめ、猿ヶ京・湯宿など低価格で良心的な保養型の温泉もあり、バリアフリーの滞在型需要も喚起している。団体向け観光地が沈下する中、新治村の将来は楽しみだ。今の方向を進化させて、たとえば食については、無農薬米の委託生産と「マイ日本酒」造り、味噌作り、梅干やこんにゃく作り、りんご酒(サイダー)作りなど、都会人の食料庫としての役割を担っていくのではなかろうか。都会人は信頼できる人が作った信頼できる食材を真剣に求めているのだから。

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