北海道占冠村 トマム
Tomamu,Shimukappu Village,Hokkaido
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Aug.2009 撮影/文 瀧山幸伸 source movie
動物たちのつぶやき物語
エゾシカのケン
エゾリスのキー
キタキツネのゴン
(これらの動物は物語に登場する架空のもので、現地で身近に見られるわけではありません。念のため)
ケン: トマムって、アイヌ語で、湿地・泥炭地という意味なんだってね。
キー: ふーん。じゃ、シムカップっていうのは?
ケン: やはりアイヌ語で、静かで平和な川の上流という意味らしいよ。
ゴン: えーーー?ちっとも静かでも平和でもないよ。大きな建物に人や車があふれて騒々しいし、夜は気持悪い色のライトアップや熱気球の轟音で眠れないし。僕はあの近くに住めない。エサもないし。昔は静かで平和だったのかなあ?
ケン: アイヌの時代はもちろんそうだよ。アイヌの人たちは僕ら動物や植物など、自然を尊敬し、共に生きることをとても大切にしていたからね。現代人はそれをエコとか環境共生とか言ってるけど、言ってることとやってることが食い違っているようだよ。
キー: いつから住みにくい場所に変わってきたの?
ケン: 明治になってアイヌの世から和人の世に変わり、西洋文明とともに北海道の開拓が始まると、森の木が切り倒されたり焼き払われたりして畑や牧場に変わって行ったんだ。占冠村が誕生したのが1905年。およそ100年前だね。
ゴン: でも、最近までのどかな村で、動物たちも住みやすかったって、ぼくのおじいさんが言ってたけど。
ケン: そう。それが変わってきたのは、1983年からかな。アルファリゾート・トマムという大きなリゾート開発で、巨大な建物が建ち、ゴルフ場とかができちゃったんだよ。
キー: なんであんなに高い建物や信仰と関係ない教会なんかを建てる必要があるの?村の人たちが住んでいるような平屋じゃだめなの?
ケン: 現代人には、いろんな価値観の人がいるからね。もしトマムのような開発を尾瀬や上高地や日光戦場ヶ原で計画したらほとんど全員反対するんだけど。当時はトマムの自然の素晴らしさは誰も知らなかったし、こんな開発がカッコイイと思ったんだろうね。19世紀の北米ロッキー山脈のリゾート開発、例えばバンフのホテルなんかもこういう大型建築だったけど、今はさすがにこういう自然破壊の開発はなく、自然にやさしい、森に隠れるようなリゾート開発があたりまえになっているよ。
ゴン: そうだよね。アメリカでは国立公園に限らず、郊外の住宅地でも君たちの仲間のシカやリスが目の前で見られるくらい自然と人が仲良しだね。
キー: じゃ、トマムのホテルを建て替える時には平屋か二階建てにしてほしいな。
ゴン: 照明や騒音にも気を配ってほしいな。車に轢かれそうで怖いから、うーんと遠いところに停めてもらって、電気のバスで送迎だとありがたいな。ゴルフ場をワイルドライフサンクチュアリに変えて僕たちの住みかを作ってほしいな。
ケン: ただ単に低層の建物にするんじゃなくて、来てくれる人達がアイヌや開拓の歴史を体験学習できるような建物もあったらいいね。例えば、屯田兵村の住宅とか、炭鉱労働者の住宅とか。映画とかで観ても今一つピンとこないからね。
キー: うん、それなら修学旅行の人たちとも仲良しになれるね。
ケン: おっと、大事なことを忘れていたよ。静かな環境を取り戻すには高速道路が問題だね。2011年に全線開通すれば騒音がこの盆地全体をとりまくようになるから、全体をトンネルで覆うなどの工夫が必要だよ。
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