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北海道白老町 ウポポイ

Upopoy,Shiraoi Town,Hokkaido

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July 14, 2020 瀧山幸伸 

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営業開始2日目の訪問

7月12日の日曜日、北海道白老町に「ウポポイ」がオープンした。ウポポイは、北海道白老郡白老町にある「民族共生象徴空間」の愛称で、国立アイヌ民族博物館、国立民族共生公園、慰霊施設などからなるアイヌ文化の復興・発展のためのナショナルセンターだという。「ウポポイ」とはアイヌ語で「(おおぜいで)歌うこと」を意味している。

初日は入場予約できなかったが、月曜休館日の翌日の14日に運よく予約できて入場が叶った。想像以上に立派な施設と展示で、スタッフも出演者もホスピタリティにあふれ目が輝いている。一日居ても飽きない。だが、某遊園地のように一日では足りないとか、年に数回は必ず訪問したいかというとそうでもなく、もう少し知的好奇心を刺激するような奥の深さが欲しいように思えた。

ウポポイの素晴らしい点は多くの人が言っているのでこの場で繰り返す必要もない。今後のさらなる充実を期待して自分の希望を以下に述べてみたい。要するに統合学習機能(視聴覚を含めた自習可能なライブラリ、国内外から専門家を招いた講座など)をさらに充実してほしい。

いわゆる和人や内地人がどれほどひどいことをして来たかは、アイヌや沖縄などの歴史と文化を知る人は知っているが、ほとんどの日本人は知らない。かと言ってウポポイに来ればそれが統合的に理解できるかと言えばそうとも言えない。修学旅行の児童生徒や団体観光客を主なターゲットとしているように思え、全く知識も興味も持っていなかった人にアイヌを知るきっかけ作りの拠点であり、そのための一日完結型の体験施設となっているようで、自分には少し物足りなかった。

リピーターが多いかどうかは成功の重要な要素だ。数日かけてあるいは毎年のように訪問してより深く学ぶための自習型のライブラリー機能や他施設との連携機能が不足しているように思えた。ナショナルセンターであるならば、東京国立博物館科学博物館北海道博物館旭川博物館などのアイヌ関連施設と研究や展示をさらに統合してもらいたい。ここに来れば、縄文から続く北方文化圏(世界遺産候補)とアイヌの歴史と文化との相関について、あるいは国内と世界の少数民族の文化や歴史など、ありとあらゆる関連情報を統合的に理解できる場となればありがたい。大手広告代理店がコンセプトの企画と運営に関与しているそうで、集客数優先で人目を引くが中身が浅いコンセプトに基づいて生まれた施設だとすると、ナレッジセンターとしての深堀りはあまり期待できないのかもしれない。営利目的の遊園地ではないので、訪問者の量よりも質を重視すべきだろうが、アンケートなどのフィードバックツールは見当たらなかった。

福井県の恐竜博物館は国際的な研究拠点となっていて世界中から研究者が集まってコンテンツが日々拡充しており、世代を超えてリピーターが多いのとは違うようだ。例を挙げれば、教科書に登場するレベルの蝦夷・アイヌの情報はあるのだが、史跡などの情報がかなり不足している。北海道各地に分布するチャシ、アイヌが崇めた名勝ピリカノカ、和人が築いた館や藩が築いた陣屋での和人とアイヌの関わりの解説も少ない。シャクシャインがなぜ和人と戦ったのかは、同じく虐待を受けたアメリカインディアンの歴史と共通するものがあり、ぜひ人々に知ってもらいたい情報だ

国交省(観光庁)型の観光集客施設を主力にして展開すれば、知的興味を持つリピーターは生まれず、やがて衰退するか、てこ入れのために新規のアトラクションやショーに無駄な税金を使うか、いずれにせよ悲しい未来が待っているように思える。そうではなく、アイヌ総合研究の講座や語り部の充実など、知的なコンテンツのさらなる充実が必要だろう。

世界遺産となった岩手釜石の橋野高炉跡では多くのアイヌを雇っていたと地元の案内人が解説していた。柳田邦夫が研究した九州椎葉村の焼き畑文化や、マタギ文化などとアイヌ文化との関連はあるのかないのか。秋田の鵜養など、国内のアイヌ語と思われる地名はアイヌと関係があるのかないのか、その地に痕跡はあるのか。そのようなことも究明する、アイヌに関する地理と歴史と文化の統合拠点となってもらいたい。

明治初期に東京から北海道まで訪問したイザベラ・バードは、締めくくりにアイヌの酋長の家に滞在して文化に感銘を受けたり樽前山に登ったりした。その情報も少なかったが、洞察力鋭い彼女だったらこの施設をどう評価するだろうか。

ウポポイから出発したアイヌを学ぶ旅の次の目的地はどこだろう。ここを訪問した人々の興味に応じて次はどこを訪問すべきかのおすすめコースガイドがあればうれしい。チャシを巡る人、聖地と景勝のピリカノカを巡る人、全国の縄文遺跡とアイヌ遺跡を巡り比較文化を行う人、極東やイヌイットなどアイヌと類似した文化を巡る上級者など、ここが次の旅の出発点となれば理想的だ。

 

 

     

 

                    

 

  

 

            

  

 

              

 

           

 

        

 

B camera

             

 

  

 

 

国立アイヌ民俗博物館

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       

 

体験交流ホール

              

 

チセ

                                          

 

チセの組み立て実演

  

 

      

      

 

   

体験学習館

  

 

工房

アイヌ刺繍とアイヌ木彫り実演

                                      

丸木舟

          

語りと舞踊

    

     

                                

   

エントランス棟

    

周辺の施設

   


May 2007 撮影:高橋久美子

ポロトコタン アイヌ民俗博物館

Poroto kotan

イヨマンテは迫力があります。熊の精霊送りと知っていましたが、しんみりしたものと考えていたので驚きました。

アイヌの文様や手仕事は素晴らしいです。冬は熊の毛皮や鮭の皮の靴な どを履いていたようです。

しかしながらこの素材の衣服とこの簡素な家屋で、北海道の冬の寒さをどれ程凌げたのか、想像つきません。

                                            

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