鹿児島県霧島市 天降川
Amorigawa,Kirishima city, Kagoshima pref.
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天降川流域の火砕流堆積物 天然記念物
霧島市は鹿児島県中央部に位置し、北は霧島山系を介して宮崎県と接し、南は鹿児島湾に面している。天降川は、霧島山系の国見岳を水源として鹿児島湾に注ぐ延長42.5キロメートルの二級河川で、三国名勝図会によれば、天降川の名称はその水源が日本神話において天孫降臨の地とされる霧島山にあることに由来する。
鹿児島県の地表の半分以上は、シラスとよばれる火砕流堆積物に覆われた台地からなり、鹿児島の風土を語る上で欠かせない要素となっている。鹿児島県霧島市の天降川とその支流の久留味川(くるみがわ)流域では、このシラス台地の主要な構成要素である入戸(いと)火砕流が典型的に分布するだけでなく、加久藤(かくとう)火砕流、阿多(あた)火砕流、そしてシラス台地を覆う鬼界(きかい)カルデラからの火山灰など、南九州の主要なカルデラの堆積物全てが分布する。
以下、天降川と久留味川流域でみられる各地層を説明する。
1 加久藤火砕流
加久藤火砕流堆積物は、現在のえびの市付近にあった加久藤カルデラを起源とする約33万年前の大噴火で発生し、薩摩半島と大隅半島の中部以北と人吉市付近および宮崎平野にまで広がる。層厚は約60メートルである。天降川流域では、標高40メートルから130メートル付近まで分布する。
2 姶良(あいら)層
火砕流堆積物の間には、未固結の火山灰や砂、礫が数から数十メートルの厚さで堆積しており、火砕流堆積物の侵蝕期間に、河川や湖に堆積したものである。天降川流域では、加久藤火砕流堆積物と阿多火砕流堆積物の間に挟まれる砂礫層である。
3 阿多火砕流
阿多火砕流堆積物は、鹿児島湾の入口にある阿多カルデラを起源とし、鹿児島県内の広い範囲に分布する。噴出年代は、10万年前から11万年前と推定されている。天降川流域では、姶良層を覆うように黒褐色で未固結の火砕流堆積物が約2.5メートルの厚さで堆積している。
4 入戸火砕流
鹿児島湾奥部に相当する姶良カルデラ形成に伴って噴出したもので、年代は2.5万年前から2.2万年前とされている。入戸火砕流堆積物は山地を除く南九州ほぼ全域に分布しているが、霧島市においては、厚さは100メートル以上に達し、標高は約280メートル程度のシラス台地を形成する。堆積時の谷部で厚く河床では溶結凝灰岩となっている。
5 アカホヤ火山灰
アカホヤと呼ばれている火山灰は、鹿児島県本土全域と熊毛諸島に厚く堆積しており、薩摩半島南方海上約50キロメートルにある鬼界カルデラから、約6,300年前に噴出したものである。南九州では、縄文時代早期と前期の時代を分ける鍵層(かぎそう)として重要である。
この地域の火砕流堆積物の堆積の様式は、次のように推定されている。旧谷地形を加久藤火砕流が埋め、その加久藤火砕流の溶結凝灰岩の平坦な上面を阿多火砕流が埋めたが、溶結度が低い為に谷部を埋めた阿多火砕流は浸食され、その谷を入戸火砕流が埋めて溶結し、平坦面を形成したと考えられる。阿多火砕流直上の入戸火砕流は非溶結であるが、谷へ向かって境界部が下がるにつれ、溶結度を増し、天降川河床では強溶結になる。これは、火砕流堆積物の堆積様式を知る上で貴重である。
天降川流域では、火砕流堆積物の特徴を活かした歴史的遺産が見られる。入戸火砕流の崖面に彫られた鎌倉期の磨崖仏である「赤水の岩堂磨崖仏」(鹿児島県指定史跡)、シラス台地の尾根に築かれ、天降川を外堀とした中世城郭の「大隅踊城跡」や、著しく蛇行した天降川を断層の亀裂を拡大して短絡させた水路跡、川沿いに掘られた用水路など、幕末から明治維新にかけて西郷隆盛の奨めといわれ、新田開発のためにつくられた構造物もみられる。
鹿児島県の地表の大部分を覆い、風土を語る上で欠かせない要素となっているシラス台地。鹿児島県霧島市の天降川流域では、このシラス台地を構成する火砕流堆積物と火山灰など、南九州の主要なカルデラの堆積物の全てが分布する。よって、天然記念物に指定し保護を図ろうとするものである。
(文化財データベース)
馬込の甌穴群
踊城跡
馬込(真米・まごめ)の貫
「琉球征伐に功のあった樺山某が、牧園の地をもらい、西郷さんらとこの馬込に来て、八木家に泊まったときのことである。近くの岩山を掘り抜いて、金山川(天降川)の水路を変え、ぐっと曲がっている川床を拓(ひら)いたら十余町の田地ができると切望されて、最初に1000両、次に2000両出して、長い年月と多大の人力を使ってついにトンネルの開鑿(かい・さく)を成し遂げたのだという」
(横川町郷土史)
天降川の水を迂回させるには狭すぎて事業は失敗に終わった。付近ではカワゴケソウ(志布志で天然記念物指定)が生育する。
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