神奈川県横浜市西区 神奈川県庁ビル
Kanagawa prefecture office,Nishiku,Yokohama,Kanagawa
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Oct.2014 松田浩志
神奈川県庁本庁舎
「横浜三塔のひとつ「キングの塔」として親しまれて いる神奈川県庁本庁舎は、関東大震災で焼失した先代庁舎の跡地に1928(昭和3)年10 月に竣工した四代目の神奈川県庁舎で、今年秋に創建85 年を迎える神奈川県を代表する近代化遺産(近代建築)のひとつです。
タイル張りの壁面と独自の幾何学模様の装飾が施された外観はアール・デコ様式を基調としたもので、最新の研究ではフランク・ロイド・ライトの影響を強調する見解も示されています。また、正面に立ち上がっている建物のシンボル「キングの塔」は、和風の塔や屋根を持つ「帝冠様式」建築の先駆的事例とも言われています。
建設にあたっては設計案を広く一般に公募する設計競技(コンペ)が実施され、一等当選した東京市技手小尾嘉郎の案をもとに、神奈川県の建築技師ら(内務部神奈川県庁舎建築事務所)が実施設計を行いました。 鉄骨鉄筋コンクリート造地上5 階地下1 階建てで、その中央部に建物全体で9 階建てに相当する48.6 メートルの高さの「キングの塔」が立ち上がっています。建築様式は「日本趣味ヲ基調トシタル近世式」とされ、
議場や貴賓室などの主要な部屋は天井が社寺建築などでよく見られる、格子状に仕切られた格ごうてんじょう天井造りであったり、建物内部の装飾として、極楽に咲く花とされる「宝相華」の文様が多用されていたり、各所に和風要素があふれています。現存する建物は、内外装とも創建当時の姿をよくとどめており、国の登録有形文化財にもなっています。
「神奈川県立博物館だより(平成25年6月20日発行 通巻193号)」より転載
神奈川県庁本庁舎
「四代目神奈川県庁舎の貴賓室についてまず、四代目神奈川県庁舎貴賓室の概要を確認しておきましょう。貴賓室は、知事室や議場も置かれた建物のメイン・フロアである3 階の南隅に位置していました。天皇の行幸があった時には、その御座所としても使用された非常に格式の高い部屋です。実際に、昭和天皇は建物竣工翌年の1929(昭和4)年4 月に、関東大震災からの復興状況を視察するため横浜に行幸した際に、この部屋に入っています。
「神奈川県庁新築工事概要」(神奈川県立公文書館所蔵、以下「新築工事概要」)によると、その室内装飾は「日本趣味ヲ基調トシタル近世式」であった建物の中でも、4 階の正庁という部屋とならんで特に「日本固有ノ様式ヲ強調」した部屋とされています。この部屋の竣工写真(図1-1)で確認してみると、まず天井は先にも述べたように、格天井造りとなっていました。「新築工事概要」で「其ノ模様等モ古代ノ建築ニ範ヲ採リ」と表
現されているように、室内には「宝相華」の文様があふれています。格天井から吊るされたシャンデリアに、ドアに貼りつけられた菱形の銅版飾り(図2)、机とその背後の家具にまで「宝相華」がちりばめられています。
また、この写真のアングルではわかりませんが、部屋の電気時計の文字盤上部にも小さな「宝相華」を発見することができます。
これらの竣工写真(図1-1)で見た部屋の様子を現況写真(図3)と比較してみると、格天井にシャンデリア、ドアの菱形の銅版飾りや家具が竣工当時のままで現存していることがわかります。さらに細かく見ていくと、
家具におさめられた眞葛焼の香炉まで当時のままで残されているのです。ちなみに、四代目県庁舎の設計図面には照明器具の図面もあり(図4-1)、「宝相華」入りのシャンデリアをはじめとする貴賓室の照明器具は、 当時の県の建築技師たちがデザインして発注した特注品であったことがわかります(図4-2)。家具に関する図面はその所在が確認されていませんが、「宝相華」があしらわれていることから、シャンデリアと同様県の 技師がデザインしたいわゆる「横浜家具」の特注品であると考えられています。以上見てきたことで、県庁本庁舎の旧貴賓室は竣工当時の内装と調度品がほとんど手つかずのままで残されている貴重な部屋だという ことがおわかりいただけたと思います。」
「神奈川県立博物館だより(平成25年6月20日発行 通巻193号)」より転載
『歴史的建造物を120パーセント活かしきろうという意気込みを感じる事の出来る「三塔の日」
というイベントでした。特にこの本庁公開の説明は興味深く熱のこもったものでした。」
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