京都府京都市上京区 平安女学院
Heian Jogakuin (St Agnes' school) Kamigyoku,Kyoto city,Kyoto
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June 2010 撮影/文 柴田 由紀江
京都市上京区下立売通烏丸西入五町目町172−2
平安女学院明治館
国指定登録有形文化財
竣工:明治28年(1895年)
設計:A.N.ハンセル
施工:不明
構造:組積煉瓦造(イギリス積)2階建
平安女学院昭和館
竣工:昭和4年(1929年)
設計:J.V.バーガミニー
施工:清水組
構造:RC造 地上3階地下1階
明治28年に京都に移転し開校以来、生徒数の増加につれ明治館・大正館・昭和館と校舎を建設されたそうですが、現在では真ん中に位置していた大正館が取り壊され現代的な5階建ての校舎に建て替えられています。
今回は、歴史的価値の高い明治館を中心に、建物内部の詳細と展示された貴重な資料、そして修復工事の様子などを詳しくご案内頂きました。
昭和館の外観は簡素でありながら素材の違いによる上品な色合いが印象的な建物でした。
百合にパッションフラワー、楯に記されたキリストの十字架と、斜めに配されダビデの星が刻印された聖アンデレの十字架、この4つのレリーフが昭和館の壁面を飾っています。風雨に曝されながらも細かな輪郭が美しいまま残っており、とても印象的でした。
通りを挟んだ資料館にも、電灯の無かった時代の燭台付きオルガンや、アンティークなカップボードなどが展示されていました。
昭和館の講堂は、鉄製の梁を木材で覆いシックで高級感溢れる空間が造られていました。
中庭や2階への階段室は、石の階段の手摺りに並べられたタイルのグレーが控えめで、窓からの光線も柔らかで雰囲気の良い場所でした。
人工芝の敷かれたきれいな中庭を抜けると、そこに明治館が佇んでいました。
●この「明治館」も建設以来100余年を経て老朽化による傷みが激しくなり、1995年の阪神淡路大震災を契機として、立入禁止とせざるを得なくなりましたが、「明治館」の復興と永久保存を願う多くの人々の声を背景に、2003年には「保存委員会」が設立。2004年には国の登録有形文化財として登録されました。
●多くの卒業生、同窓会、建築関係者の方々のご支援を受け、2005年度から本格的な保存改修工事が進められました。工事は、設計管理をNPO「文化財修復構造技術支援機構」に委託。約3億5千万円の工費と3年間の工期をかけて、2008年8月に工事が完了。ふたたびその美しい容姿を復活させました。
(平安女学院公式サイトより)
明治館の内部は、古い建材で使えるものは出来る限り残し、傷みのひどい部分を新建材で補修するという方法がとられ、そこここに古い板張りの懐かしい姿が見受けられます。
すみずみまで清掃の行き届いた館内は実に清潔で、木材の艶も照明器具の輝きも手入れを怠らない方々の気持ちが込められたような美しさでした。
明治館の中には、珍しい物や記念の品々など多数展示されていました。朝顔が箱の中に内蔵された蓄音機も鳴らして頂き、懐かしいモノラルの音声を楽しませて頂きました。
展示室の一部は、壁の漆喰塗りを施さず、補強工事の詳細が分かるよう杭や鉄板が見える状態にされています。
古く価値の高い建物の補修・保存の必要性が高まる昨今、このような展示は今後のこうした改修工事への参考として、意義の高いものだと思いました。
中庭に面した屋根付きの運動スペースには、アーチ状に積まれた煉瓦の補強としてアーチ状の鉄骨が打ちつけられていました。
案内して下さった職員の方は、美観を損ねるが…と仰っていましたが、家庭からお預かりした大切なお嬢様方が過ごされる場所ですから、安全性は最も重視されるべきところなのでしょう。
中庭から望む昭和館は実に気品溢れる建築です。中庭に面した2階部分の鉄柵も、百合の紋章が付けられた凝ったつくりでしたが、戦時中に供出させられたため、現在は一部分しか残っていません。
中庭から見下ろした昭和館の木製扉が、シンプルなのに美しく印象的なのは、昭和館の階段手すりや事務室などのドアの色と統一されているせいでした。
この先もずっとこの明治館・昭和館が、聖アグネス教会、また旧有栖川宮家と共に、伝統ある美しい姿を今日同様の美しさで維持して行かれることを願っております。
この度は大変貴重なお時間をありがとうございました。
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