京都府京都市西京区 桂離宮
Katsura Rikyu(Imperial Villa), Nishikyoku, Kyoto city
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京都市西京区桂御園
ドイツの建築家ブルーノ・タウトが「 これ以上単純であり、しかも同時にこれ以上優雅であることは全く不可能である 」と評したとされる桂離宮は,1615(元和元)八条(桂)宮家初代智仁親王によって創立され、二代智忠親王によってほぼ現在の形に整えられた。
敷地は約6万9400㎡。中央に複雑な入江を持った池を配置し、大小の中島5つを並べる。この回遊式庭園池や中島に、雁行した並ぶ古書院・中書院・新御殿野他、緒茶屋群が目立つ。それらは同時に造営されたのでなく、順次建て継がれ、巧妙に一体化されたもので、庭と建築の構成、融合が見事で、離宮建築最高の技法と、日本庭園美の集大成といわれる。
1881(明治14年)、桂宮11代の淑子(すみこ)内親王が死去後桂宮家は絶え、宮家の桂山荘は明治16年に宮内省所管となり桂離宮と呼ばれるようになった。戦後は宮内庁が管理、1982(昭和57年)老朽化の激しい古書院などの殿舎群を全面解体修理した。
京都の西の郊外を流れる桂川の西岸、旧丹波街道に通じる桂川大橋を渡った北西に位置する。この地域は王朝時代から花月の名勝として宮廷貴族の別荘が営まれていた。
桂川と平行して笹垣がつらなる
笹垣は一帯に自生する竹藪の竹を利用して、一定の高さに編んだ素朴な意匠の生垣
表門(御成門)
もとの御成門。桂離宮の正門。左右に磨き竹の袖塀、日本の丸木の門柱、磨き竹の門扉と簡素な形式。
受付は「黒門 通用門」前 その周辺
全体図
「御庭口門」御幸門
案内に従って進む、進行方向右手にこれから訪れる美景が頭を出す。青黒い小石を敷き詰めた御幸路、前方に表門が見える。
御幸道
賀茂川の青黒い小石を敷き詰めて粘土で突き固め、やや中高に反りを付けてある。その先に御幸門が見える。表門から約50mの所。
御幸門
御水尾上皇の御幸にあたって設けられた。当時は寄棟屋根の棟門形式であったとか。
茅葺、皮つきのあべまき柱、割竹の格子扉。右手にある四角の大きな石は御輿石寄(みこしよせ・画像無し)
紅葉馬場と蘇鉄山
紅葉山と蘇鉄山の間を真直ぐに池に向かう道が紅葉馬場と呼ばれる。紅葉馬場の入口右側にある低い築山が紅葉山。
蘇鉄山〜外腰掛
蘇鉄山は外腰掛の前庭として作庭された。盛土の上に蘇鉄が群植されている。閑雅な外腰掛の佇まいと対照的な景観。飛石や延段の造作で非凡な調和を生み出しているとされる。
外腰掛
松琴亭の待合所。間口三間の茅葺寄棟造。皮つきの自然木と曲木の梁と束で竹垂木の化粧屋根を支え、前面と両側面を吹き放しとしている。
外腰掛延段
外腰掛の前面に幅1m、長さ17mもの長い延段が直線状に伸びている。長さ2m以上もある切石と自然石の組合せで構成されている。
二重桝形手水鉢
延段の終点近くにある。方形の蹲踞。外枠に対し45度ずらして方形の水穴が穿たれている。晩秋に収穫を計る桝になぞらえたものとされる。
飛び石道を進むと視界が開け、眼下に池庭が広がり美景の連続となる。
庭を回遊する敷石道、畳石、延段、飛び石、土道などが景観を鑑賞するようにしつらえてある。300余年の風雪に耐えて優雅な佇まいを見せる。
大堰川と鼓の滝
桂川上流の大堰川の風景に因み、桂川の流水が池に注ぐところが鼓の滝と呼ばれ、その滝口が見える。
池庭の広がり
美しい州浜、石橋でつながった小島、天の橋立と呼ばれる中島、そして燈籠。庭には燈籠が24基ある、その内の7基が織部型。
岬燈籠と呼ばれる毬方の石灯籠(一名夜雨の燈籠)
天橋立は智仁親王の夫人が宮津藩主の娘であったことから、天の橋立に因み桂の庭に海景が取り入れられた。
卍(まんじ)亭
茅葺宝形造の四阿(あずまや)2.83m四方の小亭。四隅においた腰掛の配置が「卍」字に似ていることから名がついた。1805(文化2年)再建
石橋(白川橋)を渡り、流れ手水を経ると松琴亭
松琴亭 外観
桂離宮で唯一の草庵茶室。築山を背景にして東北南は池に面している。茅葺入母屋造の母屋は簡素な風情で、自然木の中柱、炉、八つの窓をあけて採光をよくしている。二の間、一の間が並び、二の間の背後に茶室を配す。
一の間・二の間
一の間はL字形に曲がった11畳敷の座敷。正面奥が床の間、その脇に厨子棚を付した袋棚、一畳大の石炉、その上に天袋を設ける。
二の間
一の間と二の間の境は襖障子と欄間で仕切られている。床の間の貼付壁と襖障子に貼り付けた加賀奉書の藍と白の大柄な市松模様が一際目立つ。
茶室・竃
三畳台目の本格的な侘びの囲いで、八つの窓がある。「八ツ窓囲ト云、遠州好第一ノ所也」ともと記されている通り、ここに遠州らしさが認められるとされる。
一の間からの景観
松琴亭から池畔に沿って飛石の苑路が蛍谷へと続く。蛍橋と呼ばれる土橋が架かる。東裾の水辺に蛍が飛び交うので命名された。
ここから先は峠の上りとなり一人がやっと歩ける巾の道である。
水蛍燈籠
水蛍の名を持つ石灯籠。丸い棹石、三角の窓を二つ重ねた四角い火袋。その上に風化が激しい笠を乗せ、地中深くに埋め込んである。 池を隔てて遠くから眺めると、水面に映る灯りが蛍のようであるところから名前がつけられたという。
賞花亭
茅葺切妻屋根に皮付きの柱を用いた、間口二間、奥行き一間半の横長の小亭。竹の連子窓、下地窓を設け、内部に竃瀞を築く。
正面からは眼下に書院、亭前にある鉄鉢型の手水鉢は五輪塔の水環の転用である。
峠の茶屋の趣向でつくられたとされる。一段と高いことからここから俯瞰する書院が優美である桜、ツツジ、モミジの頃が美しいとか。
園林堂
賞花亭を下り、土橋を渡らないで池畔の路地を渡る。
本瓦葺宝形造の方三間の持仏堂。正面に唐破風の向拝を有し、四方に擬宝珠高欄をめぐらす。正面「園林堂」の額は後水尾上皇宸筆。
笑意軒全景
高く盛土をした上に建つ茅葺寄棟造の母屋にこけら葺の土廂を設け、東端に一の間・納戸・東司のつくりだしがある農家風の茶屋建物。
軒と呼ばれるのは母屋の主な部分が桂の茶屋の中で一番大きいためとされる。池より小舟でアプローチできる舟着場がある。
入江の汀は切石を長く連ねた舟着。
正面入り口にある笑意軒の扁額の下には六つの下地丸窓がある。「四季の窓」ともいわれ特に変わった意匠の窓で目を惹く。
腰壁
肘掛窓の中敷居下の腰壁には、市松模様の部分に臙脂(えんじ)色のビロード、その他の部分には金箔を貼り付けた斬新な意匠が見える。
デザインの妙、引戸や襖の「櫂」の形の意匠
窓の向こうは水田と他
笑意軒から書院に向かう
書院遠景
全景
書院群は東から古書院、中書院、楽器の間、新御殿が雁行形に並んで建っている。次々に増築されたことによる。
四つの書院はいずれも?葺入母屋造で起破風(むくりはふう)を持った緩やかな屋根曲線で覆われている。
古書院
古書院は盛土の上に建つ。大きな切妻が目立つ古書院の広縁に、竹簀子でつくられた月見台が池に突き出ている。荘苑に写る観月用である。
桂の里は、平安朝以来宮廷人の逍遥の地であり、月の名所として知られている。
解説—「引用:桂離宮 (伝統文化保存協会)」鑓(やり)の間、古書院囲炉裏の間、一の間、二の間より見た一の間など
中書院と新御殿は高床構造とし、床下部分を白壁と竹透戸で覆っている。
中書院
中書院の床は古書院より一段高い。
解説—「引用:桂離宮 (伝統文化保存協会)」二の間より位置の間を見る、一の間違棚の飾り金具、三の間など
中書院の一の間・二の間・三の間では狩野探幽・尚信・安信の狩野三兄弟が襖絵を描いている。
楽器の間
楽器の間の床は中書院寄り市田下がっている。
解説—「引用:桂離宮 (伝統文化保存協会)」
中書院や楽器の間の廻りに設けられた雨落溝
新御殿
古書院・中書院よりも新しい1662(寛文2年)ごろ、後水尾上皇の御幸を迎えるために造営された。
新御殿は中書院より一段下がった楽器の間広縁に接続している。意匠などに新しい手法が採用されている。
解説−「引用:桂離宮 (伝統文化保存協会)」
一の間には桂棚と呼ばれる棚を備えた上段があり、半丸太の長押(なげし)が付き、引手や釘隠、手摺の飾り金具に意匠が凝らしてある。
月波楼
古書院の右隣から行く。古書院と並んで池に面して建つ。観月用の茶室。北向きの破風に月破楼の額が掛かる。
軽く務繰をつけた?葺の寄棟屋根に、切妻の口の間が出張った茶室。
土間の正面に掛かる絵馬 下桂御霊社にあった「渡海朱印船」 おぼろげに読める
建具・意匠
もじぎぬの透かし古障子
月波楼中の間の窓からの眺め
正面に見えるのは紅葉山 池の水は目に入らない
解説−「引用:桂離宮 (伝統文化保存協会)」
衝立松
両側の生垣と共に池の眺めを遮る衝立の役目を果たす。
中門と御輿寄(おこおしよせ)
黒文字垣に沿ってやや奥まった所にある茅葺切妻屋根の簡素な棟門形式の門。中門を経ると、御輿寄せ前庭、御輿寄となる。
解説
桂離宮の用材はほとんどが近隣の山から切り出した杉トマツ。市街の北方に連なる山地からは北山杉が、また丹波高原からは松が、それぞれ桂川(保津川)の水運を利用して運ばれてきたとされる。身近な素材に精緻な技術を注入し、洗練された造形として結実しているのが桂離宮の建築であり、「かろき茶屋」と呼ばれる所以でもある。
見ることの出来ない意匠
中書院一の間違棚の飾り金具
松葉形引手 (中書院の杉戸)
市女笠型引手 (中書院の引手)
水仙釘隠し (新御殿の長押)
月の字形引手 (新御殿)
四季花手桶形引手 (新御殿の杉戸 複製)
古書院いろりの間の杉戸絵
参考資料 ≪桂離宮(伝統文化保存協会発行)、パンフレット、洛、桂離宮 ほか≫
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