JAPAN GEOGRAPHIC

京都府京都市右京区 片波川源流域
The headwaters area of the Katanami river, Ukyo-ku, Kyoto city
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September 26,2020 大野木康夫 source movie

所在地 京都府京都市右京区京北片波町

「京都の文化財」第17集(H11.12)の石田裕二氏の解説文から引用

 京都府中部の丹波山地には、ひとつの根株から複数の幹が立ち上がった特有の樹形を持つ「伏条台杉」と呼ばれるスギの地方変種が分布している。「伏条」とは地に伏す枝(条)の意味であり、積雪などのため押し下げられた枝が地面と接触した部分から根を出し、新たな独立した幹へと分離成長していく増殖の形態を「伏条更新」と呼ぶ。日本海側の多雪地帯では、この形態の自然増殖を行うスギの地方変種がしばしばみられる。
 北桑田郡京北町北東部の片波川源流地域では、急峻なため大規模な林業活動の及ばなかった尾根部を主体に伏条台杉が広い範囲に残されている。この地域のうち京都市左京区と境を接する稜線部に位置する鍋谷山山頂(標高859m)の南方約1km、標高685mのピークから東へ下る延長約800mの尾根部の森林には、他に類を見ない多数の大径木が群生する伏条台杉の群落が成立している。
 この群落は次のような階層構造を持つ。樹林の最上部を形成する高木層は13~20mで、伏条台杉の大径木が優占するなかにイヌブナ、ミズナラ、モミ、ツガなどが混生している。次の階層である亜高木層は6~14mで、コハウチワカエデ、イヌブナ、リョウブなどの樹種により構成されている。低木層は1.5~6mで、クロモジ、マンサク及びスギの若木などが見られる。草本層は0.5~1.5mで、チシマザサ、チマキザサなどが地表を覆っている。スギの周囲の林床では、直径数cmの枝が地を這いながら根を伸ばし、先端部で立上り、徐々に新しい幹へと分離しつつある伏条更新初期の様相を処々に見ることができる。また、この群落にはスギだけではなく、ヒノキ、モミ、ツガ、ミズナラなどそれぞれの樹種の大径木が存在し、クリ(胸高幹径130cm)、ソヨゴ(胸高幹径45cm)、アセビ(胸高幹径25cm)といった中低木樹種にもまれな大きさの古木が見られる。
 標高500~685mにわたる尾根筋を主体とする13haの天然記念物指定地域には胸高幹径が1mを越える台杉が90数本あり、そのうち胸高幹径3m以上の巨樹といえるものは14本を数える。これら巨樹のうちで最大級のものは胸高幹径4m、樹高18mにおよぶ。大径木のなかには垂直方向に幹から板を削ぎ取ったり、株立ちした複数の幹の一部を伐採するなど、自動車用林道の敷設を伴う大規模な林業経営以前の森林利用の様子を物語る痕跡も見て取れるが、立地の悪い尾根沿いに位置することから、自生の樹木が永年にわたり一斉植林による伐採をまぬがれ存続してきたものと考えられる。
 一名「アシウスギ」とも称される多雪地帯に特有の伏条台杉が、少なくとも200年以上の長期にわたり、ほぼ天然生に近い状態で存立してきた稀有な林相を残す樹林として学術的に価値が高い。
 また、今回指定した天然記念物の地域と北方尾根部のホンシャクナゲ・ヒメコマツ群落の発達した地域を含む片波川源流域108haの範囲が、平成11年3月に京都府自然環境保全地域の第一号として指定された。

右京区京北町東部の片波川流域から左京区花脊の井ノ口山一帯の尾根沿いには、巨大な伏条台杉が群生しています。
片波川流域の106.63haは京都府自然環境保全地域に指定されており、そのうち府天然記念物指定地域(「下黒田の伏条台杉群」)の13.08haの観察路沿いのみ、地元ガイドの随伴を条件に入山することができます。
今回は、地元黒田地区の地域おこしを行う「おーらい黒田屋」さんにお願いして、ガイドウォークに行きました。

おーらい黒田屋付近

片波川源流ガイドウォークの案内板もあります。
            


ガイドさんの軽トラックで観察路入口まで行きました。
下の国道沿いで標高300mくらい、観察路は700mくらいで比高は400mくらいだそうです。
  


観察路入口

施錠されています。
    


入口から周回路へ

雨で煙る中、アシウスギもちらほら見えます。
       


迎えの大栗(幹周4m)
     


宿杉(幹周5m)

周回路の入口に立っています。
スギとしては枯死していますが、いろいろな種類の木が宿っています。
    


一ノ峰(標高678m)の案内図
 


尾根沿いに伏条台杉が並んでいるのが見えます。
 


観察路沿いの風景

窓杉(幹周4.6m)、大櫓杉(幹周10.6m)、舟形杉(幹周8.5m)などが並んでいます。
                 


大主杉(幹周10.8m)
    


さらに下ります。
          


イヌブナ
  


盤取杉

柾目板を取った跡が見えます。
       


巨樹が密集しているポイントへ
             


二ノ峰(標高685m)
 


三本杉(幹周11.1m)
  


大主杉と幹周7m級の杉が密集するポイント
                   


三本杉
   


巨樹を眺めながら観察路を下りていきます。
              


注意看板
 


「カエデの谷」に下りながら振り返って巨樹を撮影
                          


ツキノワグマに壊された道標
  


カエデの谷の主、谷守杉(幹周10.5m)
       


周辺風景

オオタカの巣の跡もありました。
                


谷守杉を見下ろす
  


巨樹を眺めながら尾根まで登ります。
          


東尾根を進みます。
 


人の顔のように見える部分がある杉(幹周6.8m)
      


平安杉(幹周15.2m)

樹形の成り立ちが違いますが、幹周でいえば屋久杉級の巨樹です。
周辺の2本も幹周6.3m、9.7mの巨樹です。
                                                   


東尾根を進みます。
      


二股杉(幹周9.7m)
    


栗の木にヒノキなどの木が宿って巨木になっています。
  


さらに東へ
                    

Yの字杉(幹周4.9m)
  


さらに進む
  


がま口杉(幹周4.9m)
   


御杣坂を下る
              


北斜面の巨木は近年の台風で折損したそうです。
    


さらに進む
  


昇龍の栗(幹周2.5m)
   


いよいよ最終地点へ
    


大宿杉(幹周7.8m)
    


留杉(幹周7.6m)とその付近

ガイドウォークの最終地点です。
          


東尾根を引き返します。
                                


昔、盤取をして運び出せずに残った板が苔むしていました。
  


帰路
                           


平安杉まで帰ってきました。
       


雨の中を戻っていきます。
                              


一ノ峰に戻る寸前、大櫓杉
         


一ノ峰
 


入口へ
  


入口付近
   


今回は、一人でガイドさんをお願いしましたので、ゆっくり自分のペースで撮影することができました。
観察路に入っていたのは約2時間で、出発地点(おーらい黒田屋)からの時間は3時間弱でした。
京都府の規定で、ガイドウォークでないと入れませんが、4月から11月までならおーらい黒田屋さんに連絡して調整すればガイドさんを紹介していただけます。
ガイドウォークは10名くらいまででガイドさん1人5,500円(税込、2020年9月現在)です。人数が増えると1人あたりは割安になります。

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