三重県大台町 大杉谷
Osugidani, Odai town, Mie pref.
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June 24-25,2018 大野木康夫
所在地 三重県多気郡大台町大杉
国指定天然記念物
伊勢平野南部を流れる宮川の最上流部である大杉谷峡谷のうち、上は粟谷川との合流点から下は水越谷川との合流点の間の両岸流域564.78ヘクタールの国有林である。
標高約400〜1,300メートル区域にあり、上部はブナを主とする冷温帯性落葉広葉樹林、下部は暖温帯性常緑広葉樹林であって、本州南部における代表的原始林として、きわめて貴重である。
(国指定文化財等データベースより)
滝と渓谷の風景を求め、梅雨の晴れ間に大杉谷を訪問しました。
大杉谷へは、定期運航する公共交通機関がなく、道の駅奥伊勢おおだい(JR紀勢線三瀬谷駅の近く)から運行する大杉峡谷登山バスは予約制で最少催行人員4名であるため、車で登山口の駐車場まで行きました。
大杉谷の一般的なコースは、途中1泊して大台ケ原に抜けるコースもしくはその逆(下りの方が難度が高いようです。)ですが、車なので、アップダウンの多い登山道を途中の目的地まで往復することになります。
目的地はその日の体調によって決めることとしましたが、最低でも日本の滝百選の七ツ釜滝までは行きたかったので、日帰りではなく、桃ノ木山の家で1泊することとしました。
6月24日の日曜日、4時前に京都を出発し、名神、新名神、伊勢道、紀勢道を通って大宮大台インターチェンジに着いたのが6時前、その時点ではまだ小雨が残っていましたが、県道31号、国道422号、県道53号を通って宮川貯水池に着くころには雨は上がっていました。
大杉谷登山センターで登山届を出してしばらく進むと、県道53号新大杉橋を渡ります。
宮川貯水池を右岸側から左岸側に渡る吊り橋に揺られながら車を進めると、秘境感が高まるように感じます。
登山口駐車場
県道の終点は宮川第三発電所で、その手前にバス停もありますが、駐車場はもう少し手前に30台ほどの規模のものがあります。
日曜日でしたが、先着の車はありませんでした。
駐車場(6時50分出発)から登山口(7時到着)までの風景
川の水の色が透き通るような緑になっています。
宮川第三発電所の谷側を通って少し階段を上ると登山口で、ゲートの向こうにいきなり大日グラ(グラは山かんむりに品)の岩場が見えます。
大日グラの岩場
濡れていて滑りやすいので、鎖を持って慎重に通過しました。
大日グラの標柱まで登山口から230mですが、到着は7時12分、10分ほどかかりました。
大日グラから渓谷や山並み、滝を見ながら進むと能谷川原に着きます。
登山口から890m、到着は7時36分でした。
この区間はあまりアップダウンがなく、足慣らしといった感じです。
能谷川原から地獄谷吊り橋を通って比較的平坦な登山道を進むと京良谷出合に着きます。
登山口から2.1kmで到着は8時5分、約1時間かけてゆっくり登っています。
京良谷出合から少しアップダウンがきつくなり、小さいガレ場などもあって登山道らしくなってきます。
水越谷出合から少し進むと大杉谷の7つの滝の一つで落差が最大の段瀑、千尋滝が見えます。
千尋滝は総落差150m以上といわれる豪快な滝ですが、上段のあたりと最下段のあたりしか見えないので少し物足りません。
木々の間から覗く千尋滝を所々で撮影しながら滝見台に到着しました。
滝見台は登山口から3.5kmで到着は9時頃でした。
このあたり、梅雨時とあってヤマビルが発生しており、立ち止まって撮影していると足元に寄ってきますが、靴、靴下、ズボンのすそに忌避剤を散布していたため、咬まれずに済みました。
1匹のヤマビルが右足の登山靴にとりつきましたが、忌避剤(ヒル下がりのジョニーという商品です。)の影響でそのまま死んで丸まっていたのを千尋滝の滝見台で見つけました。
梅雨時の大杉谷の訪問者が少ないのは、岩場が滑りやすいのとヤマビルが原因のようですが、対策をきっちりとすれば大丈夫だと思います。
千尋滝からアップダウンが続く登山道を登り続けること約1時間で、ようやく大杉谷下部のハイライトであるシシ淵に到着しました。
登山口からは4.7km、到着は10時頃で、休み休み3時間かけて登っています。
シシ淵は、両岸にそびえる高い岸壁に挟まれた緑の淵の向こうに豪快なニコニコ滝が覗いている景勝地で、淵の近くまで容易に近づくことができます。
ここで少し休憩し、早めの昼食を摂りながら景色をボーっと眺めました。
ここで日帰りのピストン登山の若い2人連れに抜かれています。
30分ほど休憩してから出発しましたが、シシ淵から少し急登区間があり、アップダウンも続きます。
ほどなくシシ淵で覗いていたニコニコ滝を正面から見ることができるところにたどり着きました。
落差150mほどの豪快な段瀑で、大杉谷の7滝の一つです。
東屋の手前の方が全体を見ることができます。
ニコニコ滝を過ぎると登山道は少し下り気味になり、ほどなく平等グラ(グラは山かんむりに品)の吊り橋に到着しました。
平等グラは吊り橋の上流左岸にある大きな一枚岩で、その質感に圧倒されながら吊り橋を慎重に渡って眺めました。
平等グラまでは登山口から5.3km、11時20分に到着したので、休憩しながら4時間20分かかっています。
平等グラから少し急登区間があり、越えてから少し下れば桃ノ木山の家に到着します。
登山口から6.2km、到着は12時10分で5時間10分かかりました。
コースタイムは4時間30分ですが、途中の休憩を考えればこんなものかと思います。
山の家の方に到着を告げたら、この日は私しか宿泊者がいない貸し切り状態だということでした。
部屋(中部屋の隅の布団を使いますがスペースとしては使い放題)に荷物を置き、少し休憩させてもらいました。
昼からは、必要な機材と飲料水、非常食を持って上流の行けるところ(16時までに小屋に帰れるところ)まで登ることにしました。
出発は13時、当初はアップダウンも大したことはなく、登山道からエメラルドグリーンの渓谷を眺めながら登っていきました。
途中の岩場ではイワサツキの花も見ることができ、30分ほどで、七ツ釜滝の休憩小屋に到着しました。
七ツ釜滝は、総落差100mの七段の段瀑で、大杉谷を代表する滝として、日本の滝百選に選ばれています。
滝見台からは下段の三段が見えるだけですが、梅雨時で水量もあり、エメラルドグリーンの釜も見えており、優美さと迫力を兼ね備えた滝になっていました。
しばらく取りつかれたように時間を忘れて撮影したり眺めたりしました。
気が付いたら40分ほど過ごしてしまっており、次の光滝に行くのは無理だったので、小屋に帰ることにしました。
帰り道、美しい渓谷を眺めたり撮影したりしながらゆっくり帰りました。
小屋に帰ったのは15時過ぎでした。
桃ノ木山の家の部屋など
山の家のお風呂は17時、夕食は17時30分でした。
山小屋の御主人が、「大杉谷のハイライトは七ツ釜から上、堂倉滝まで。七ツ釜から大崩壊地、光滝の先までは急坂もあるがそこから先はだらだら上り。」とおっしゃっていたので、翌日はなんとか堂倉滝までよじのぼり、登山口まで日暮れまでに帰ることに決心しました。
携帯電話も通じないので、明日の強行軍に供えて19時に寝たら、翌日4時30分に目が覚めました。
涼しいのですが、湿気が多くてタオルが乾きませんでした。
山小屋周辺の早朝風景
朝食は6時で、頼んであったお弁当(中華粽)を持って、7時前に山小屋を出発しました。
重い三脚と衣類は山小屋前の簀の子に置かせてもらいました。
七ツ釜滝までのおさらい
七ツ釜滝
2度見ても見事な滝で、やっぱり一定量撮影してしまいました。
7時30分に出発です。
少し急坂が続きますが、注意していれば危ないところはありません。
七ツ釜滝吊橋からは渓流の右岸を進みます。
イワサツキやエメラルドの淵の連続
途中から、狭い岩場の鎖を持ちながら登ります。
美しい淵がよく見えます。
いよいよ平成16年の台風21号豪雨による大崩壊の跡が近づいてきました。
大崩壊後、大杉谷の登山道は復旧に10年ほどかかりました。
美しい淵と豪快な崩壊地が目に入って感動的な風景ですが、右岸の岸壁に刻まれた登山道を慎重に進みます。
山小屋から入口まで1.2km、到着は8時30分です。
大崩壊地に付けられた登山道(岩を砕き、頭ほどにして大岩の隙間に詰めてルートを作っています。)をよじ登ります。
途方もない大岩がゴロゴロしていて、少し恐ろしさが湧き上がってきます。
崩壊地の一番高いところまで登ったら、上流の渓谷が見えますが、しばらく崩壊した岩の間を進みます。
河原に出たところに、シンボルツリーのサワグルミの大木が立っています。
朝日に光る美しい淵や振り返ってみる大崩壊地など、絶景に囲まれた空間だと思いました。
ここからまた右岸の岩壁に沿って登って行き、少し行くと光滝がみえました。
落差40mですが、岩壁に沿って裾が広がっており、優美な滝です。
光滝から急坂を少し上り、光滝の落ち口の上流に出ます。
登り口で山小屋から1.9km、到着時間は9時25分でした。
光滝の落ち口には隠れ滝吊り橋がかかっており、吊り橋に隠れるように隠れ滝があります。
大杉谷の七つの滝のうち最も小さな滝で、落差25mです。
隠れ滝から少し上れば、与八郎滝が対岸に見えます。
落差70mの段瀑で、水量が少し少なかったです。
山小屋から2.5kmで、到着時間は9時50分、休憩を兼ねた撮影を繰り返して3時間かかりました。
与八郎滝からしばらくは、深い渓谷沿いの登山道をゆっくり登って行きます。
堂倉滝までは670mで、アップダウンも少ないので比較的楽に行くことができました。
最終目的地である堂倉滝の手前の堰堤が見え、ほどなく堂倉滝吊橋から堂倉滝が見えます。
この日は堂倉滝の水量が多く、迫力のある滝から響く豪快な滝の音が伝わってきます。
堂倉滝到着は10時20分、山小屋から3.2kmを撮影しながら3時間30分ほどかけてゆっくり登りました。
堂倉滝は落差は20mとそれほどありませんが、水量が多く豪快な滝で、大きなエメラルド色の滝壺を持っています。
個人的には七ツ釜滝よりも感動したのは、滝の音や振動、滝壺の近さなどが影響しているのかもしれません。
ここで昼食を摂り、撮影を続けていたらいつの間にか撮影枚数が100枚に近付いていました。
堂倉滝出発は11時前と遅くなったので、ビデオカメラと交換レンズをザックにしまって、カメラだけを首にかけて帰路につきました。
登山口までは10km弱ですが、下るだけではなくアップダウンがあるので頑張っても到着は17時を過ぎそうです。
帰路、気まぐれに撮影した風景
桃ノ木山の家には13時前、コースタイム通り2時間で到着しましたが、ここから三脚と衣類も担いで6.2kmのアップダウンを帰らなければなりません。
ここからはカメラもザックにしまい、帰ることだけを考えて登山道を注意しながら下りていきました。
予想外に気温が上がったので、登山道わきの小さな滝ではかならず頭を冷やしたりしながらゆっくり下りました。
10分寝転んだシシ淵で少しカメラを出して撮影しました。
ここで14時30分、ほぼコースタイムどおりで、おそらく登山口には17時30分に到着できる見込みが立ち、ほっとしました。
最後の難所、大日グラの岩場の手前でカメラを出し、撮影しながら注意して通りました。
登山口到着は18時、途中に少しばてて、コースタイムより30分遅れる結果となりました。
駐車場まで10分歩き、着替えて帰路につきました。
途中の六十尋滝、落差90mを見に行きましたが、足があまり動かなくなっていたので、一番上まで上がることができませんでした。
六十尋滝だけでも訪問の価値がある滝だと思います。
大杉谷の訪問は、本格的な登山となるので、無理な行程は禁物で、場合によっては山小屋に泊まる(当日行っても素泊まりなら宿泊可能です。)などの柔軟な対応が必要だと思います。
ヒルと濡れた岩場の対策さえしていれば、人が少なく水量が豊富な梅雨の晴れ間はお勧めだと思います。
なお、大杉谷は登山センターを過ぎれば携帯電話が通じませんので、それも考慮に入れる必要があります。
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