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奈良県曽爾村 

Soni village, Nara

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Dec.2012 中山辰夫

曽爾村

奈良県宇陀郡曽爾村

『小さな山里に300年間獅子が舞う』

曽爾村は奈良県の東北部に位置し、三重県名張市、津市、奈良県御杖村、宇陀市及び東吉野村に接し、室生火山群に属する1000m級の

山々に囲まれた美しい火山地形から成立っている谷間盆地である。総面積約48?でそのうち86%が森林地帯である。

村の中央を青蓮寺川が流れ、川に沿って九つの集落が形成され、総人口は約1800人、世帯主700強の小村である。

平均気温13℃と高原冷涼多雨地帯。村の産業は。農林業と観光が主で、特に、夏でも寒暖差が激しいことからトマトやホウレンソなどの高原野菜

が生産され、「食)と「自然美」で観光客を迎えている。

村の西側に立つ柱状節理の岩壁があらわな屏風岩、兜岳及び鎧岳は国の天然記念に指定されている。集落からはどこからでも見える。

曽爾の名は、古事記・日本書紀にも記される。村中には伊勢本街道が通じ、自慢の獅子舞も伊勢で習ってきたと言われる。

伊勢本街道は、大坂・京都から奈良を経て伊勢に向かう本通り。江戸になると庶民の伊勢参りが盛んとなった。曽爾村山粕は大坂方面から

二日目の宿泊地であったので宿屋が賑わった。

伊勢本街道道標(伊勢街道旧宿問屋敷の跡)

曽爾高原

また東側にはススキの大海原で有名な曽爾高原があり、村の大半が室生赤目青山国定公園に指定されも風光明媚な村である。

高原はススキで一面覆われた草原で、3月中頃山焼が行われ、春から夏にかけては一面に絨毯が敷かれたようなあ爽快な姿を見せる。秋には

ススキの穂が陽射しを浴びて金色・銀色に輝く。草原中腹には「お亀伝説」が残るお亀池があり、湿原特有の希少な植物が育つ。

山焼〜夏の風景〜秋の風景 満点の星空〜全景≪配布資料より≫

曽爾村は、NPO『日本で最も美しい村』連合に加盟し、未来に残したい村の特徴として「曽爾高原」と「曽爾の獅子舞」を注力している。

連合は、小さくても素晴らしい地域資源を持つ村の存続を手助けしながら、美しい農山村の景観や文化を守る活動を行う特定非営利活動法人。

近畿では、伊根町(京都府)、十津川村(奈良県)が加入している。

曽爾の獅子舞

奈良県無形民俗文化財

門僕神社(かどふさ)は村の中央のやや高台にあって、自然の清らかな空気に包まれている。雄略天皇の御代からこの場に鎮座されているという。

延喜式神名帖(10世紀)に大和国宇陀郡17座のうちの一つと記載されている由緒ある古社で、曽爾村九集落の氏神として崇敬されている。

曽爾の獅子舞は、門僕神社の秋祭りに舞われる獅子舞で、300余年継続されている。

享保3年(1718)から始まったと書かれた貴重な文書が残っており、全国的にも珍しいこと。歴史を秘めた「曽爾の獅子舞」は10月に奉納される。

八つの集落より「スコ」と呼ばれる独特の神饌が奉納される。「スコ」は餅と柿を里芋の茎に交互に刺して頂上にケイトウの花を飾り、乙女をかたどったものと

され、人身のお供えの名残といわれる。

頂点のケイトウは、6月ごろから種をまいて立派に育てるのも重要な役割のようだ。

準備完了

「神前の舞」「悪魔払い」、「参神楽」、「獅子踊り」、「接ぎ獅子」など一連の獅子舞は、三集落(長野・今井・伊賀見)の青年の手で、第二次大戦中と

いえども絶えることなく、今日まで連綿と継承されてきた。

多くの見物人が取囲む円の中心で演じられる様子は一種独特の雰囲気がある。

参神楽(今井集落−奉舞会)

太鼓の囃子によって舞い、白足袋には袴、神戸下駄をはくのが特徴。

接ぎ獅子(伊賀見集落−奉舞会)

振り出しの獅子が荒舞で場所を清め、その後、青年の肩の上に立つ獅子が神前の舞、悪魔払い、更に櫛、手鏡、傘を持って女形の道中を演じる。

青年の上に立つのは6年生の小学生。4年生の時に人選を行い決めて、2年間練習を積んで本番を迎える。

獅子踊り(長野集落−奉舞会)

獅子、天狗、ひょっとこ、おかめが登場する。天狗は赤ずくめで、天狗の持つ竹刀は獅子が奪い取るという風流な面がみられる。

獅子舞は、その種類の豊富さと芸能の質の高さが評価され、昭和54年に「奈良県無形民俗文化財」に指定された。

今後の課題は継承にある。過疎が進み、人口減が続く。今後を担う子供たちは、3集落で、男女合わせ中学生24名、小学生42名。

中学校の学習課程に“獅子舞練習”を組み込んでいるが、村からの流出が多い。女子生徒にも枠を広げて対応している。

写真≪伊賀見奉舞会 松井進氏より頂きました≫ 資料≪配布パンフレット、他≫

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