「仏像撮影の思い出、その1」June 2009 野崎順次
32歳の時にそれまで1日に80本吸っていたタバコをやめたら、1ヶ月に2万円位小遣いが浮いた。
それで買ったのが初めての一眼レフ、キャノンFTbである。15年以上前のお話。
自動車免許を持たず、ゴルフもしないし、土日に予定ができるのを嫌がるので、休みの日はたいてい暇だった。
カメラを持って、奈良方面のお寺をよく訪れた。
その頃、レンズは50mmが1本だけだから建物全体を撮るのが苦しい。仏像が手ごろな被写体だった。
町中の有名寺は、今と同じく、撮影禁止だったので、仏様を(あまり)撮れなかった。
ただし、京都のある寺の宝物館は釈迦十大弟子や六菩薩(いずれも重文)で有名だが、観光集中地区から離れているので、特に雨の日などは観光客がおらず、三脚を立ててゆっくり撮れたことがあった。
監視カメラは作動していた。チクリのない優しい世の中だった。
京都と奈良の間の山間に味のある小さな寺がいくつかあるが、その頃は未だ拝観料も決まっていなかったので、庫裡に声をかけて許可を得る。
「こんにちは。本堂の仏像を見せて下さい。」というと、和尚さんに「うちの仏さんは見世物やない!」と怒られたことがある。
それから、必ず「拝ませて下さい。」とお願いするようになった。また、お供えとして500円程度お渡しする。そうすると、引き換えに本堂のカギを渡してくれる。
本堂に入ると仏像独り占めで、拝んだり、撮ったり、横目で見ながら昼寝までできる。
きちんとした博物館では、個人的に写真を所有したいだけだからと正式に頼むと撮影許可が得られ、そのことを証する腕章を貸してくれる。
ただし、原則的に当館蔵に限られ、フラッシュや三脚使用は駄目。開放の露出でバチバチ撮りまくっていると、だんだん、当館蔵とそうでないのの区別が難しくなり、好ましい作品は撮影してしまった。
監視員の方は全面的に信頼してくれているのか、知らん顔をされていた。
今でも、奈良国立博物館の通常展示品(当館蔵)は個人目的での撮影はOKである。
展示の入れ替えがあるので、いつもは見られないが、ユーモラスな十二神将がなかなかである。
その2は仏像「無断」撮影高度テクニック編ですが、これは酒席ででも………
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