Monthly Web Magazine (Mar. 2010)
■■■ 「東海道新幹線から見える古墳」 野崎順次
何度となく新幹線で大阪・東京を往復してきた。
活字中毒気味なので、仕事の書類や何か文庫本でも読もうと用意するのだが、結局、景色を見ながら、つらつら、あれこれ考えていることが多い。
そんな時に古墳らしき高まりを見つけことが多く。
そのような主な古墳(群)を三つばかり紹介する。
いずれも機会があって、後日、現地を訪問できた。
京都を出て、琵琶湖沿いに北上すると、まず端正な霊山、三上山が見えてくる。
三上山を過ぎて直ぐに左手の畑の中、総合福祉センターの手前に周濠跡がくっきりとした円墳が見える。
大塚山古墳で直径55mであるが、新幹線とは反対の北側に小さな前方部を持つ帆立貝式古墳らしい。
大塚山古墳は、大岩山古墳群に属しており、新幹線は大岩山古墳群を分断している。
この時、(新幹線から両方を一度に見るのは100%不可能であるが)事前に右側を注意深く見ていると、直ぐ南の丘陵上に、まず、前方後円墳の天王山古墳(全長50m、高さ8m)がある。
その直後に(100m離れて)よく注意していると動体視力がよければ横穴式石室の入り口が見える。甲山古墳である。
直径30m、高さ約8mの円墳で、内部主体は西を入口とする横穴式石室である。
新幹線の速度を180km/時とすれば、1分に3kmで、1秒に50m進む。
とすると、天王山古墳を見てから2秒後に甲山古墳を見ることができる。
実際には天王山古墳を数百m手前から識別してなかったら、無理である。
この後、米原駅から関ヶ原までには両側の田畑の中にポコポコとした小山が見られるが、古墳ではない。東北の象潟のように、隆起した多島海らしい。
愛知県に入り、名古屋駅に続いて三河安城駅を過ぎると観覧車が見える。
弁当を食べたり、本を読んでる場合ではない。
またもや動体視力を発揮しなければならない。
新幹線は名鉄三河線の上を横切るのだが、その直後に右側を振り返ると横長の古墳がある。
安城市桜井古墳群の盟主、二子古墳(国史跡)である。
全長81mの前方後方墳、この地方では大型の前期古墳である。
静岡県に入り、富士山を見たついでに左側の風景を見ていると、小さな谷や大木のある神社などがあり、台地状の地形になってきたなあという辺りに露出した横穴式石室が見えた。
新幹線とJR御殿場線が交わる地点の北東側である。
現在、少し移動して整備された原分古墳である。
静岡県長泉町にある直径12〜16mの後期楕円墳、石室は全長10m、玄室長7.6m、幅1.7m、高さ2mである。
石室規模が静岡県東部では最大級であること、大刀と銀象眼の鍔など優れた金工製品が出土したことで名高い。
参考資料
奈良県立琵琶湖博物館HP
大和國古墳墓取調室HP(原分古墳の写真3枚)
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