MONTHLY WEB MAGAZINE Nov.2010
■■■ 経済の中心地の散歩 川村由幸
やっと涼しくなった10月上旬に日本の経済の中心である東京・大手町から日本橋界隈を散歩しました。このあたりにも結構古い建物が残っています。
今回、訪ねたのは 1.東京銀行協会ビル 2.日本工業倶楽部 3.大手町野村ビル 4.日本銀行 5.三井本館の5カ所です。
これ以外にも鉄鋼ビルや三越本店などの古い建物がありますが、今ひとつシャッターを切る気になりませんでした。
1. 東京銀行協会ビル
残念ながら、建て替えられています。しかも高層ビルの下方の壁だけがこのように意匠されています。もちろんオリジナルの部材も多く再利用されていると思いますが、張りぼてです。
2. 日本工業倶楽部
実は、私ここのオリジナルを記憶しています。レンガはもう少し赤が強かったと記憶しています。
玄関や屋根の意匠はオリジナルのものが使用されているようです。本当に哀しいですがこれも張りぼて。オリジナルでは、中で会合に出席したこともあり、独特の香りのする素敵な建物でした。
3. 大手町野村ビル
細かい意匠にずいぶんの財をつぎ込んだ建物であったことがよく偲ばれます。
ヨーロッパの国々であったら、オリジナルで残ったでしょうか?
それとも同じような張りぼてになってしまっていたのか?
東京は文化を蹴散らすほどに地価が高いのでしょうか?
日本人であることに誇りが持てないものを続けて観てしまいました。
4. 日本銀行
さすがにnational bank、風格が違います。本物はやはり人を感動させます。
補修費用がいくらかかっても、エネルギー効率がいくら悪くても残すべきものは残すべきです。
もちろん建物の機能としては最低でしょう。しかし、文化的な価値はそれをはるかに上回ります。
是非、内部も撮影したいいう衝動に駆られました。
5. 三井本館
古いまま大切に使う。文化的価値を可能な限り長く保つ努力をする。
新しく機能的なものばかりに高い価値があるわけではありません。
よい企業業績を残すよりも、この建物を将来とも残す努力をすることのほうが、未来に「さすが三井」といわれる源泉となるのではないでしょうか。
二時間程度の散歩でしたが、いろいろなことを考えさせられました。日本の美しいものを画像に残そうと考えなかったら、今回の思いもなかったでしょう。
楽しく、そして少し哀しい二時間でした。
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