MONTHLY WEB MAGAZINE June 2012

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■■■■■ ヤマツツジ 田中康平

栃木県に住み始めてもう40年くらい経つが、春から夏にかけての山の花の移ろいの見事さはなかなか見ごたえがある。

それまで過ごしてきた福岡や関西や勿論東京とも随分違っていて、最初に感じた目を見張るような驚きがいまだに続いている気がしている。

5月の時期は新緑からヤマツツジ、シロヤシオへと移っていく、圧倒的だ。

赤いヤマツツジは標高1000m付近に群生しているところが何箇所もあり、例えば那須の八幡は溢れんばかりのヤマツツジに訪れる人も多い名所だが そのほかでもいいところは随所にみられる。

日光東照宮の裏山の女峰黒岩に至る尾根もいいといわれ、ツツジと 飛び交う野鳥を期待して毎年この時期日光滝尾神社から稚児ヶ墓へ至るこのルートを登っている。

花は時期をぴったり合わせるのが難しく微妙に外すことが多かったが、今年はうまく満開に行き当たることができた。やっと報われた思いがする。

行者堂から登っていくとミヤコザサに浮かぶ静かな広い日本庭園のような景観に至る。ヤマツツジに赤く染まる中にズミの白やウワミズザクラの白い穂のような花も混じり見飽きない。

笹は瀬が伸びて歩きにくい時もあるのだが、今年は丁度適度に鹿が食べてくれて歩きやすい。

根こそぎということはなく、植生は守られている。これくらいならシカとの共生もうまく出来るように感じる。

シロヤシオも花開く尾根で持参したおにぎりを食べていると、近くをキビタキが美しい鳴き声を響かせながら飛び廻る。食事が少しばかり気になるのだろうか、それにしても贅沢だ。

女峰山にかかる雷雲を気にしながら午後の光線に浮かぶヤマツツジの中を戻る。

今年はこのままいい花が続いていくのだろうか、先のことはどうあれ今流れて過ぎ行く時間がいとおしくもある。もう夏も間近い。

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