MONTHLY WEB MAGAZINE Nov. 2012

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■■■■■ 欧州鉄道の旅、デュッセルドルフ・ルクセンブルグ・パリ その一 野崎順次

10月24日の午後、ドイツのデュッセルドルフで仕事先を離れ自由の身となった。

とはいえ、28kgのトランクを引きずり、背中には8㎏余のリュックサックである。

また、これから鉄道で行くルートは英語が通じにくく、英語の表示も少ない。

デュッセルドルフから直行列車(1日に3本くらいしかない)でルクセンブルグに行き、2泊してから、メッス経由でパリに行く(ここらも1日に3本くらい)。

チケットは日本でユーロレールから購入済みである。

まず、デュッセルドルフでは欧州最大規模の国際展示場から鉄道本駅まで路面電車に乗る。

以前に乗ったことがあるが、切符売り場や改札が無く、ホームの乗車券自動発売機(昔はドイツ語だけ、今は英語もOK)で購入しないと駄目だが、その操作をよく覚えていない。

過去10年間に数回利用したことがあるが、その都度、取引先の外人や偶然出会った日本人が買ってくれた。

考えてみたら、日本を出る時からこの瞬間を心の奥底で心配していたような気もする。

でも、これまで何とかなったので何とかなるだろうと電車のホームに来ると、偶然、日本人の3人連れがいて、ガイド役らしき女性が4人券(1枚で4人分)を購入してくれた。

ホームにいたのはこの三人だけで、しかも、今回は日本人の来場者が極端に少なかったことを考えると、きわめてラッキーだった。こうして、今回も何とかなった。

ドイツ鉄道(DB)デュッセルドルフ駅で昼食を取る。

仕事が終わってホッとしたのか、どっと疲れが出たようだ。

食欲がない。ビールを飲んで、マッシュポテトと酢キャベツ付きソーセージを頼んだが、半分残した。

私の乗車券と予約券の明細は、

15H49 Train 132 IC COARCH 8 SEAT NUMBER 25

つまり、15時49分発 列車番号 IC 132 8号車 25番席

改札はないので、直接列車に乗り込み、指定の席に座ればよい。ただし、プラットフォームが分からない。地上階中央コンコースに時刻表を見ると、列車番号IC 132はあるが、ルクセンブルグの名前が無いし、時刻も15:46と微妙に違う。違う色の時刻表を見ると、15:49で最終駅はルクセンブルグである。共にプラットフォーム(Gleis)は16番である。となると、最初に見たのは到着時刻表とこれまでの停車駅で、後から見たのが出発時刻表とこれからの停車駅であろう。そこで、早めに16番プラットフォーム(2階)に上がって、どのあたりに8号車が止まるのか確かめることにした。と、各列車の停車配置図が見つかった。IC 132は8両編成で、8号車はD位置とC位置の間のDよりに停まる。ドイツ語だが、めちゃくちゃよく理解できる。楽勝である。そういえば各プラットフォームにB〜Fの大きな表示が30メートルおきにある。

列車は30分遅れて到着した。英語で遅延の放送があったが、既に他のプラットフォームから発車してしまったのではないかという不安は皆無ではなかった。

車の床は高いので、4〜5段階段を上らねばならないが、トランクの重さがこたえた。8号車を確認するために見まわしたが、それらしき表示が無い。車内の通路を少し後方に向かうと車掌さんがいたので、「Coach eight!」と叫ぶと私のチケットを見て、3両さらに後方だと云う。疑いつつ、トランクを引きずりながら歩き続けると、別の車掌さんがいたので聞くと反対の前方だと云う。既に汗だくである。元の位置に戻るとまた違う車掌がいたので聞くとまたもや後方を指すので、もう私もキレた。「Different conductors show different directions. Tell me exactly where my seat is!」とわめいた。その間に空恐ろしい大阪弁の悪口雑言も挿入する。そこでやっと相手も何とかする気になったようである。私の切符は普通乗車券(セカンドクラス)だが、前方のファーストクラスの車両に導き、空いている所ならどこでも座れと言った。これは映画でよく見た車両で、3人掛けが向かいあう6人室に分かれていて、片側の窓際に通路がある。よく空いていた。誰もいない部屋にトランクを寝かして、上着と靴を脱いだら、やっと快適な旅が始まった。

ケルンを経由してコブレンツまではライン川の本流を遡る。

コブレンツから本流を離れ支流沿いに進んだ。途中の駅名にMoselleがあり、黄色に紅葉した低灌木が整然と並んだ畑が至る所にあった。そこで、やっとこの支流はモーゼル川で、モーゼルワインの産地だと気付いた。暮れかけの車窓から、蛇行するモーゼル川の渓谷美をぼんやり見ていた。

やがてすっかり暗くなり、終点のルクセンブルグ駅に着いた。ホームは地面と同じ高さである。エレベーターで地階に降り、地下コンコースを通り、再びエレベーターで地上に出て、ホテルに向かった。グーグルの地図によれば駅から数百メートルだから歩いて行こう。

以下2012年12月に続く…… 予定。

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