MONTHLY WEB MAGAZINE Dec. 2012
今年の11月中頃からは天候が定まらず、紅葉狩に適した日が少なかったようです。鳥取・島根・京都・滋賀で各々2〜3ケ所ずつ観て廻りましたが陽射しがなく残念でした。
その中の1ケ所、大津坂本の西教寺(明智一族を菩提する天台真盛宗派の総本山)、陽射しはダメでしたが、紅葉の最盛時期に恵まれました。
この寺院の桜と紅葉は見事とかねがね聞いておりましたが、なかなかタイミングが合わず今回初めての紅葉見物でした。
参道
境内アチコチ
今回の西教寺訪問には別の目的、有名な「西教寺の菊御膳」を味わうことでした。
菊御膳
お料理全部に菊をあしらった精進料理です。
坂本では、『菊を食べないと秋を迎えた気にならない』と言われるほど「菊」が松茸や栗より身近な秋の味覚の一つとされています。
西教寺では、40〜50年前から鮮やかな色目と香り・シャキとした触感の(坂本菊)を使った菊御膳をこの時節のみ提供してきました。
この時期この地でしか味わえない菊料理のフルコース。食前酒からデザートまですべてに菊が顔を出します。
お料理全部に菊をあしらった精進料理です。
境内の紅葉をめでた後に戴くのも洒落たもの、紅葉狩と併せた秋の行楽を満喫できると宣伝し、集める客人は毎年4000人程にもなるという。
比叡山延暦寺の門前町として栄え多くの寺院をかかえる坂本では、古くから各家の庭や畑の片隅に食用菊を栽培していたようで、芭蕉の句には堅田で「菊なます」を食した際に詠まれた句もあるようで、江戸時代にはすでに栽培されていたことが伺われます。
食用菊で有名な東北地方とは違い、関西では食用菊といえば普通刺身のつまなどに一輪添えるぐらいですが、坂本では東北地方と同じように小菊や中輪の菊をおひたしや酢の物にして食べます。
坂本の食用菊は、東北地方で栽培されている「阿房宮」や「もってのほか」のように品種の名前はありませんが、いくつかの品種があるそうです。今では栽培している農家が少なくなりましたが、9月下旬より花が咲く早生から11月下旬に花が咲く晩生まで、また、花の形も小菊から中輪まで地域によって多々あるようです。
食用菊は主に畑で作るため病気が出やすく、連作を嫌い、最低4〜5年間はあけないと出荷できる花には育たないようです。
坂本の食用菊は、鮮やかな色、味、季節感、そして花を食べるという華やかさなど、現代にも受け入れられる多くの良い点もあり、歴史ある坂本の町が育て守らなければならない滋賀の貴重な伝統野菜といえます。
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