MONTHLY WEB MAGAZINE Jan. 2013

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■■■■■ アナログの時代を感じる 田中康平

デジカメで時代を捉え時を捉えて遊ぶ、なかなか楽しいが大量の画像データに次第に圧迫されるような気がし始めている。

便利で手軽だがアナログの時代で感じていた何かを失ってき始めているのではないかと時々不安にもなっている。

去年の秋にやっと仕事からも解放され、故郷の福岡市に戻ることにした。

福岡で古くなった家の遺品を大量に処分したり 傷んだ部分に少しは手を入れたりして引越しに備えているが、遺品を整理していくと捨てられなかった贈答品が数多く出てくる。

竣工したビルの置物であったり、湯飲みであったり、お盆であったり、干支の置物であったり、灰皿であったり、ともかく今となってはガラクタでしかない、しかし贈られたものだけに捨てにくかったのだろう。

着物も大量に出てくる。古着屋に見させても殆ど値がつかない。元は高価でも古くなってしまうとどうしようもない。持っていた人以外には価値が分からない。

物は思い入れをこめて使ってこそなのだろう。思い出というアナログな世界は他人には伝わらない。

漆器のお膳や重箱や食器も沢山出てくるがさすがにこれは捨てられない。漆塗りをやってみたいと以前調べた時説明を受けた漆器の目くるめく手の込んだ製造行程が思い起こされて、他人がどう値つけようと手放す気になれない。

プラスチックが幅をきかせるようになる前は軽くて丈夫な漆器の世界があたり一面に広がっていた。弁当箱でも漆器だ。

眺めているとそんな時代が蘇るように感じられてくる。普遍的なアナログの世界ともいえるのだろうか、ここには強さがある。

ともあれ便利なものが世界を覆い手の込んだ工芸品のアナログな世界は次第に駆逐されていく。少し寂しくなる。

デフレということかもしれない。しかしそこに切り捨てられたえもいわれぬ感触が再び見直される時代が廻ってくるように思えている。

最近レコード盤の売り上げが底を打って上がり始めたと伝えられる。デジタルな香りのする文明に人は疲れを覚え始めたのかもしれない。

またアナログの世界に回帰していくような気がしている。贅沢なアナログとも言える時代に。カメラもまたそんな贅沢なフィルムの時代に戻るようになるのだろうか。

これからまだまだ先が長い人類の歴史にはそんなうねりが来ることは当然のような気さえしている。 

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