MONTHLY WEB MAGAZINE May 2013

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■■■■■ 糸島にて 田中康平

福岡市の西隣の糸島というところが魏志倭人伝にも登場していることもあり多少気になっていて折を見て出かけねばと思っていた。

たまたま近所の親切な方から糸島に行ってきたお土産においしいおさかなを頂いて家内が糸島に遊びに行くのに随分と乗り気なったこともあって、出かけた。

自宅から直線距離では20km程で旅行というほど大げさなものではない。

まずは歴史資料館にいかねばと糸島の平野に入ると ぐるりを高くも無い山に囲まれている。

奈良盆地の雰囲気がある。生活にも防衛にも交易にも便利な地形のようだ。

神武東征は歴史そのものではなくとも歴史のある真実を伝えているのだろう。

1-3世紀頃に倭の主要な都市であった伊都国で育まれていた文化は人とともに東へと波及していき、拠点とする場所も似た雰囲気のところを選んでいったのだろう、そんな風にも思ってしまう。

歴史資料館には糸島で50年近く前に農作業中に発見された平原遺跡の出土品として多数の銅鏡をはじめとする副葬品が展示されていた。

全てが国宝となっていて圧倒的だ。

伊都国には王がいたと魏志倭人伝にも記されており王家の墓だったのだろう。

次第に伊都国の重さを感じてくる、予想以上だ。

資料館を出て近くにあるその平原遺跡に行ってみる。

思いの外小さい遺跡で王家の墓に似つかわしくない気もするが古墳時代の前はこんなものだったのだろう。

糸島では旧石器遺跡も発見されておりこの地域には非常に古くから人が住み続けている。

こじんまりとした平野だがそれが生活を営むのにちょうど良いサイズだったのかもしれない。

ついでに近くの神功皇后を祭る高祖(たかす)神社にも訪れてみる。

怡土城(奈良時代、吉備真備が築城したという山城)を13世紀に再利用した高祖城建造とともに設置されたともみられ、17世紀に修理された社殿が残っている。

いずれにせよ古い神社だ。しかしあたりの遺跡に比べれば新しいように思えてしまう。

ドルメン遺跡などまだまだ興味深い遺跡は他にもあってとても回りきれない。

糸島の地は歴史を辿って遊ぶのに事欠かないように思えて、しばらくは楽しめそうだ。

さかなの調達も大事だと、走り回ってさかなを求めて戻る。今の時期特にイカがいいようだ。

食べるものも含めて糸島は随分と手ごたえのある場所だった。

糸島の直ぐ向こうには唐津の美しい浜もある、名護屋城の歴史もある、その先には平戸もあるし五島もある、尽きない。

仕事を終えて福岡の地に移り住んで2ヶ月と少しが過ぎた。

この先楽しくも忙しい日々が広がっているような気がしている。

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