MONTHLY WEB MAGAZINE June 2013
■■■■■ オーギュスト・ペレの鉄筋コンクリート建築 野崎順次
鉄筋コンクリートの特性に注目し、初めて建築に活用したのは建築家オーギュスト・ペレ(1874 - 1954)である。ペレはベルギーで生まれ、20世紀前半のフランスで活躍した。鉄筋コンクリート(RC)造と云う新しい技術により芸術的建築を目指し、「コンクリートの父」と呼ばれる。
彼が設計した最初の本格的なRC建築は、1903年竣工のフランクリン街のアパート(パリ)である。建設業者はRC造によるラーメン構造を提唱したフランソワ・エヌビックで、その施工技術とペレの革新的な設計により、壁面の窓を広く取った近代建築の最初の規範が実現した。
2002年に撮った写真をスキャンしたものである。100年後の今でも立派な現役で、コンクリートの劣化(中性化)も僅かだと云う。壁の仕上げは花柄と平坦な陶磁器タイルで、コンクリート面は露出していない。
1階の内部に入って、腰壁の仕上げに見入った。
そして、1923年に竣工したのが、世界最初の本格的な打ち放しコンクリート作品と云われる「ル・ランシーの教会」である。それまでのゴシック聖堂は大きなステンドグラス窓で人々を圧倒したが、組積造であるため、壁全体を窓にすることはできない。ペレは柱と梁で構造体を組む鉄筋コンクリート造の特長を生かして、壁面を覆い尽くすステンドグラスを実現した。
パリ在住の知人が最近の写真データを送ってくれた。ステンドグラスからあふれる光がとても感動的だったそうだ。ステンドグラス以外の細い丸柱、ボールド天井、ステンドグラスの格子などすべてがコンクリートである。
しかし、この打放しコンクリートは教会の信者を始めほとんどの人々に好まれず、建築界でも不評であった。当時、ペレの弟子であったル・コルビュジエもこの時はまだ無関心であった。以後、ペレは打放しをやめてしまった。
ペレの打放しの試みを継いだのは日本にいたアントニン・レーモンドで東京に自邸を建てた(1925)。それに触発されてル・コルビュジエがスイス学生会館を作った(1930)。一方、レーモンドに学んだ前川國男、前川に学んだ丹下健三、丹下に学んだ磯崎新、と「打放し」の系譜は流れ、やがて安藤忠雄が現れることになる。
参考資料(ウェブサイト)
ウィキペディア「オーギュスト・ペレ」
サグラダ・ファミリア付属学校HP
建築マップ:ル・ランシーのノートルダム教会
ハナノモトニテ ル・ランシーのノートルダム教会
di yappy weblog: ル・ランシーの教会
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