MONTHLY WEB MAGAZINE Nov. 2013

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■■■■■ 後生掛温泉地獄絵巻 瀧山幸伸

10月の中旬、東北の紅葉を楽しみに出かけた。

八幡平栗駒山蔵王など、自然は 確かに良かった。

文化面でも、松尾鉱山跡川渡温泉寒湯番所陸奥上街道など、勉強になる史跡は多い。

後生掛温泉の自然と温泉施設は素晴らしい。

今回はどこにも宿が無く、偶然キャン セルが出たのか、後生掛温泉のオンドル小屋が空いていたので、数十年の念願だっ たオンドルを体験宿泊することにした。

施設がボロイ?プライバシーゼロ? 野宿より良いからそんなの気にしない。だが、地獄の暑さには参った。

あてがわれた場所は、最も熱い源泉が地下に引かれた棟の、最も上流のスペース で、一応ゴザらしきものが引いてあるのだが、じっと立ていられないほど足の裏が熱い。

ここに毛布を敷いて一夜を過ごすのだ。

最初の数分で汗だらだらになるので窓を開ける。

まあこれなら何とか寝れるかな? と思ったのが間違いで、消灯時間以 後は窓を閉める規則だそうだ。

牢名主のような爺さんが見回りに来て、窓をぴしゃ んと閉める。

「ここのオンドルは効くよ」と、いかにも数十年湯守をやっているよ うな口ぶりに、新参者は逆らえない。

サウナの中で寝るような感じで、全身に汗が 吹き出し、うとうとしたと思ったら、のどの渇きと朦朧とした悪夢で眼が覚め る。

ペットボトルの水をがぶ汲みし、これが三十分おきに繰り返されて全く寝られ ない。

ようやく朝を迎えて窓を開けた時の解放感は、地獄の牢獄から出たようにすがすがしかった。

牢名主曰く「良かっただろう?」どうも地元風じゃないなあ、と隣の住民に聞いたら、棟の端っこ、最もぬるい場所に一週間近く滞在した我孫子の爺さんだった。

ちなみに、暑さに耐えられない人は涼しい談話室で寝られるとのことだったが、後の祭り。

荒療治が必要ない自分にはちょっとばかり厳しい、脳味噌が溶けるような湯治体験 だった。 元々溶けているから関係ないけど。

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