Monthly Web Magazine Mar. 2014

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■■■■■ 桜前線 大野木康夫

この写真は昭和55(1980)年4月3日、和歌山県新宮市の丹鶴城跡で撮影したものです。

当時私は中学から高校に上がったばかり、両親と一緒にほぼ日帰りの(行きが夜行の普通列車の寝台)旅行に行ったときの写真でした。

桜の枝が見えていますが、花はまだ咲き始めたばかりの状態です。

ちらほら咲きだった記憶があるのですが、本稿を書くにあたって確かめると、どの写真もこれくらいしか咲いていませんでした。

母は私が中学2年生のころに罹病し、この旅行の後すぐに行動半径が自宅の敷地内になってしまったので、結果的には最後の家族旅行となりましたが、その時はそんなことは思いもしませんでしたので、写真も風景写真しか残っておらず、今になって思うと少しさびしい気がします。

新宮から観光タクシーで那智を回って勝浦へ行ったのですが、そのタクシーの中でラジオから流れた曲は鮮明に覚えています。

その4年前、昭和51(1976)年に流行した小柳ルミ子さんの「桜前線」という曲でした。

好きな人と別れた女の人が、早春の日本列島を信州〜瀬戸内〜鹿児島へと旅するうちに、別れた人への思いが募り、その人のところに帰る決心をしたといった歌詞で、快晴の日差しの中、南紀の海辺を進む車中に丁度マッチしていたので記憶に残ったのだと思います。

移動方向が桜前線とは逆で、当時は違和感があったのですが、今になって考えると、南に移動する間に心の春を迎えた鹿児島から、実際の桜前線と一緒に相手のもと(おそらく東京)に帰るということだったのかと思います。

人間は、体温が低下すると心の活発さが失われがちということです。

私も寒さに負けて引っ込み思案になりがちだった訳ですが、桜前線の北上とともに心の積極性を取り戻したいと思います。

近年、デジタル一眼レフで撮影した桜から

山科盆地内の桜(大石神社、毘沙門堂、疏水、醍醐寺)

京都盆地の桜(東寺、背割堤、勝持寺、善峯寺)

こうやって見ると、桜に関してはほぼ京都市内のものしか撮影していませんので、今年は他府県にも積極的に足を伸ばしていきたいと思います。

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